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狐の里の命運を握る者たち

なんか、予約うっかりしまくりですが……申し訳ない通常運転です!?

 人が暮らすための家具は無く、広さばかり印象に残るこの場所は見たことがある。


 両親が生きていた頃の、街の近くの集会場として使われていた場所だ。


 大人たちが集まるこの場所には、決して子どもは入れなかった。


 けれど父を迎えに行って、玄関から覗ける景色、ここだけは鮮明に思い出せた。

 


 その時、玄関からすぐの囲炉裏の前に座っている私の前に、今や明確に両親の敵となった白煙が現れた。彼は一人で、さっきの邪魔な男はいない。


 なら、する事は決まっていた。今の私なら、この人が逃げる前に、この人を殺せる。


 そう思った時、ツタの蕀は彼をもてあそぶ様に動いている最中で、なのに目の前の老人は人形のように手応えがない。抗う力がないのか、敵意がない事を示しているのか?


「両親をいえ、何故、先代当主を殺したのですか? これは現状当主不在のため、一時的に私が当主を代行し貴方に問います。答えてください」


「はぁ……フィーナ様……、こんな状態では……話す事は出来ませんよ」


 そう白煙は、唇から赤黒い血を流しながら言う。何かが、おかしいのかもしれない。


 ハヤトが居てくれたらわかるのに、今の私にはわからない。


 彼をおろすとゲフォゴホォと老人は苦しそうに咳き込む。


 「これは、失礼」


 そう言って目の前の老人は、着物の袖から手拭いを出して、口を拭く。


 手拭いはすぐに赤黒く染まった。思わず目を背けた。この人は、たぶんもう……。


「厚かましくもすみませんが、座らせて貰いますね」


 そう言って囲炉裏の座布団へと、白煙は座った。そして右手で顔を隠し、顔を左右へとふった。


「また、貴方ですか幸子、貴方は私に何の恨みが……。おっとこれは失礼、愚問でしたね。私は当主殺しです。いいでしょう、その罰を受けましょう。湊、こっちへおいで一緒に話しをしましょう」


 白煙の言うの通り、幸子と湊は姿を表した。彼らの姿を見た時、脳裏に過去、両親を亡くした日の朝の様子が蘇る。


 湊と幸子はあの時の様に、私の側に立ってくれるだろうか? それはハヤトと魔王様達と過ごした私にとって不安でなくて、確認だった。敵と味方に分かれたなら、出来るだけ思考を巡らせて、多くの者を救わなければならない。


 湊はどうだろう? 彼はハヤト違う意味で特別だった。きっと兄がいたら彼みたいな人かもしれない。彼は、一人で黙ってやって来て、私の横に座る。私はすこし安堵し、幸子はそれを見届け姿を消してしまった。


 形だけ、父、母が生きていた頃の様に、私と湊の座り位置になっていた。しかし私は彼の祖父の命を狙っている。


 広い集会場で、静かに時は進む。湊はその事をどう考えているのか、怖くて彼の顔が見られない。


「お察しの通り、私が先代当主である、フィーナ様の御両親を殺しました」


「何故ですか!? 何故、そんな事を」


 思わず、腰を受けせ飛び掛からないまでも、あと一歩の姿で、怒りの矛先にツタを飛ばす。しかし思いも……、そう2つの力に潰されてしまった……。


 ――1つは、目の前の老人。もう1人は……。


「何故ですか? 湊、貴方の祖父でも罪は裁かなくてはいけません。なのに、何故!?」


「フィーナ落ち着いて、祖父の話を聞かなくては、君も僕も先に進めないとは言わないけれど、進む時間はおそらく聞いた時よりかかるだろう。僕らは聞かなくては、ハヤトと……たぶん向日葵のためにも」


 彼はゆっくり、私に座る様にいざなう。


「まだ、そんな事を言ってる。私たちは間違えません。それは絶対です!」


 何故か、私の癇癪はそちらの方へ行ってしまった。


「けれど、それはある程度操れるんですよ、フィーナ様。それを操って来たのは本家であり、貴方の祖先の皆々様です」


 白煙の顔を見ると、彼はとても悲しげだった。こんな不安な時、必ず私の手をとってくれるハヤトはいない。魔王様の部下としてあろうとした私は、なんて弱々しかったんだろう。


 積み重ねて来たものがあっただけに、自分に腹が立った。


               ★☆☆

 

 子どもの頃、正月やお盆など多くの親戚が集まった。みんなが集まる囲炉裏の前で、老人たちが語る昔話にはとても怖く眠れなくなるものもあった。きっと今日の話は、いままで以上に悪趣味で、眠れない話になるだろう。


「白銀の狐、有能な指導者であり、個々の能力が高い。しかしどんなに優秀であっても、恋と言う不確かなもので生命を失う。それは本望な事であったが、当主としては宜しくないそう考えた、貴方の先祖が我らの得意な呪術と、その時代の勇者が持ち込んだ東洋薬学を使い恋を操る事に成功しました」


 白煙の声に抑揚は少なく、もう長くない事がわかる。それが私を何故か苛立させる。


「そんな事許されません! 私たちにとって絶対的な裏切り行為です」


「なら貴方は戦いの最中(さなか)に恋人を殺した相手と、貴方を慕う者たちを置いて逝けますか?」


「彼が、先に死ぬなんてありえません」

 

 自分でも、それは正しくない受け答えであり、感情的であるって事はわかっていた。


 しかし今、すべての事実が覆ろうとしている。そんな時に、ハヤトの死について考えるなんて事は、怖くて私には出来なかった。

 

 白煙は私の顔を覗きみる。そしてどうやって話せば私が感情的にならずに、聞いてくれるかを測りかねているようだ。


 しかし白銀狐に限らず、連れ合いのまだない死について語るのはよっぽどの時だろう。でも、ここで子どもの様に癇癪を起している場合ではない。そう冷静に考える自分にも悲しくなった。

 

「『それでも生きていけだなんて、ひど過ぎる』そう言って終わらせられない事が、私にもあります。そしてそういう事柄は、これからもっと増えていくでしょう。そう、貴方にお答えします」

 

「今の質問は狐、特に貴方がたのような若い狐たちへする質問にしては、酷な質問だと承知してます。フィーナ様にそう言って貰えて、話が進めやすくあります。だから恋を知らない子どもの内に、ある漢方薬を飲ませるのです。そして思春期が来れば本家に、白銀狐の子どもたちだけ集めさえすれば事は済みます。幾ら愛に生きる狐でも、会った事のないものとの間には花は生まれませんからね。そして(しゅ)を、継続するために愛は妥協をし、別の愛を育みそれが本物へと変わるのです」


「では……」

 

 湊は、そう言ったので私たちは見つめ合う形になった。しかし彼はバツが悪そうに、目をそらした。


 私と湊が運命の相手になれば、穏やかな生活であるが、私が彼の手を取って強く引っ張る事はなく、彼もまた同じだろう。

 

 その生活や愛も間違いではないが、ただ幼い狐が雪深い森の中で、足跡を重ねながらピョーンピョーンと飛び跳ねながら、時に鼻をお互いつけ合うようなハヤトとの恋を私は愛している。


 でも、叔父のように体の弱い男性と命をわける事になるという場合もある。

 

 叔父……。私は驚きとともに、湊を見る。今度はそれに気づいた湊の視線に、私が目をそらす。

 

「フィーナ様それはありません。白雪はそれこそ、男顔負けの仕事を当時からしていたので、そんなに器用に物事は運びません。そして本家の薬学と呪術の技術は、思わぬ産物を生みました。一部の血筋の者に、今度は逆の効果の薬を与えるのです。効果は少し変えてです。貴方もご存じでしょう? 白銀狐の血筋に忠誠を誓うもの達を。しかし私たちは2つに分かれてしまった。白銀狐の御当主に忠誠を誓うものと、白銀狐という人々という存在を守る事に忠誠を誓う者とに、私たちは御当主に歯向かう事で命を落とす事は同じですが……、その在り方は違ってしまったのです」


「でも、両親が当主であっても、このような場所で考え、話は済むはずです。狐が狐を殺すなんて事許されていいはずありません。導くものとして間違っています」


「物事を話し合って決める。とても素晴らしいお考えです。しかしここは魔界です。理由はそれだけで十分でしょ?」


「けれど、命は重いはずです」


「足りないならつけくわえましょう。私たちは魔王様ほど強くない。だから、強くなるべきです。形はどんな形でも構いません。本家が綺麗でいられたのは、今も私たちが居たからです。これは老婆心で言っているのではなく、現実を言っている。もう大きくなられた貴方たちならわかるでしょう?」


 老人は挑戦的にこちらを見た。老人はこの事伝える為に、こんな事態を引き起こしたのかもしれない。正直忌々しい。魔王様の元でこの世界を変えられると、それこそ自分なりやって来た。その無力さを、傲慢さを突き付けてくるが、両親を殺した、この老人だなんて、私はもっと故郷に目を向けるべきだったのだ。


 ――そうしたら私に何か変えられた……? こんなに彼の事が好きなのに湊の手なんて、とれない! でも、今だから(ハヤト)の手を取って変えたい。


「フィーナ様が当主の名代(みょうだい)を名乗って、私を死に至らせようとした。そして私は先々代の名代を意向をついで、行動しなければいけませんでした。貴方のご両親のような改革は、私のような老人が消え去った後にやるべきでした。そして私は生きている限り、先々代の意向を受けついでいくつもりです。だから邪魔なのです。貴方の恋人が、せめて私の生きている間には現れて欲しくありませんでした」


「それでハヤトを、どうしたのでしたのですか?!」


 私になんの影響もないという事は、まだハヤトは生きているって事だ。この老人が何かする前に、聞き出さなければ、もうあんな悲しい思いはもう嫌だ。


      続く






見ていただきありがとうございます。


ありがとうございます~。

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