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勇者捕まる!?

 座敷牢の中の明かりはなく、外の座敷の蝋燭の明かりだけが僕に与えられた光だった。


 その光さえ消えてしまう事を考えると、僕はずっとする。今までこの世界へ来て万能に近かった自分は、とても小さく、儚いものだっように思える。たぶんそれはお香から、うっすらと立ち昇る煙のせい。そのせいで自分の中に確かにあった魔力の光が見えない、魔力の通り道をスムージーかシェークで塞がれてしまった気分、確かに僕の世界がそれが普通だった。それが凄く怖い。それが普通だよとあのお香が感覚を来るさせてくる……。

 

 だからこの目の前の、明らかな僕の敵の男にでも、長く居て貰いたい。それと共にこの男を外に出す事で、フィーナに危険が迫るなら、ここで……出来る力の全てを使ってでも足止めしてもいい。そんな怒りも確かに僕の内にある。


 フィーナやルイスの事について、何か聞き出せるなら……。いや、ルイスが静かに腹を立てて、こちらに来るように仕向ける方が早いはず。


 しかしそんな怖い事は思い浮かばず――。


「なんでそんな馬鹿げた事を、あの人のしたいままにさせておくんですか、哀れさをそのままにして、楽にさせてあげればいいじゃないですか?」


「真相についての質問は、終わったみたいだな、じゃーな」


 そう言って彼は、頭の上で手を振りながら、振り返えりもせず行ってしまう。


「あー本当に馬鹿らしい」


 そういって顔を洗うようにごしごしするが、体調不良はとれない。本当に忌々しいお香だ。


 檻に向かって魔法を使おうとするが、全然駄目だ。頭がぼっとするのと、同時に魔力の流れが切断されている。手に彩りが起きない。


 手をとじたり、ひらいたりする。体力面でも今のところは大きな支障がないが、少々ながら障りを感じていた。


 これは呪術的何かなのか? 経験か乏しいだけに確信は持てないが、十中八九そうだろう。夢も、それに関係性があるように思えた。


 僕は座敷牢のど真ん中に座り込み、頭を抱えた。


 悪人もそれぞれの正統性を持っている。彼らの理想を打ち砕く事になっても僕のはその手を緩めては駄目だ。打ち砕け、打ち砕け。


 その時、僕しかいない座敷牢の中で見知った声がする。


「私が助けてやろうか? 異世界のくそったれよ」


 毛が一斉に逆立つのを感じた。

「なんで?……」


 その男が立っているのは、座敷牢でも光の当たらない部分。簡易的なかわやの前で、とても悪臭漂う場所。穢れが集まる場所。


 シャーマン、呪術師、オリエラの父のアニス王を死の淵まで追いつめた彼は、彼の持ち物である短剣を、僕が破壊し打ち砕いたはず。


「貴方は……」


「貴方は? アハァハハハハハ、お前は本当にくそったれだ。我々は生死をわけて戦ったはずなのに、お前になら殺されてもいいと思うものが微塵もない」


 遠くからでもわかる、彼の血走った目を、何かを射貫くために力強さ。彼はこっちへやって来ている、ただし足を引きづって。足を掴む無数手の、きっとそんなものはありはしない。彼が作り出しているだけのまやかし、糧、力の源。


「だが、お前には呪術の素質もあるようだ。私の精神のかけらがあるお前か、アニスなら、くそったれながら我々の知識の器としてお前の方がまだましだ。お前には出来るか? お前の理想とする使い方が、私は『お前は厄災だ』『薄汚い呪術師だ』、と罵られているところがみたい……」


 そう言って彼は、彼の顔を覆う布の向こうから、座っている僕の目を覗き込んだ。


「えっ? 呪術の可能性がみたいのですか? もしかしたらあったかも知れない未来。呪術よって、敵とも手をたずさえた未来をですか?」


 こっちは可愛い彼女と、こんな時どうやってるのか不明だが、可愛い女の子に助けられる、ちゃっかり執事の挙動が、いろいろな意味で心配なので煽るだけあおって目の前をチカチカさせていた。


 ハッカの匂いに包まれて、吐き気までしてくる。


「ふふふ、では、見せて見るがいい」


 そう言うと彼は僕のまわりの空を蹴った。リーン、リーンと赤と白の紐が現れ破壊される。次々蹴られて破壊されていく中。


「子狐たちは!?」

 僕は男に食い入るように聞いた。


「子狐?」そう言った後、「あぁ……、こんな初歩的な呪術、跳ね返る力も弱いだろう。呪術はこうやるんだ!」


 彼は僕の心臓を掴む。幽霊は限度を知らないらしい。


 ヴゥゥ……。

 心臓に重い熱さが伝わって、来たがすぐに消えた。


「呪術の素質あってもすぐに使えるものではない、しかし1度だけ撃てる様にはしてやった。お前の能力も合わさり、酷い姿を相手はさらすはずだ」


「ありがとう。たぶん使わないけど、実際はわからない。君の望む未来を作るよう頑張るよ」


「そうだ。死屍累々と死体の山を作っていけ」

 そうシャーマンは言い、そのまま消えていった。


「死ねばみんな仏様か……」

 僕に宿る、仏様は過激思考らしい。僕はふたたび目をつぶり夜に備える様にする。一撃であのお香を、うち壊すために。


 

 そこは、ある日本家屋の広い座敷の部屋。多くの子どもたちが、さまざまに座っている。皆、大人達の空気を感じとり一様に押し黙っている。


 中央に座敷机が置かれ、お茶がいくつもいくつもまばらに置かれていた。


「いつまでここに、居ればいいんですか?」

 

「白煙様の言いつけなので、聞いていただかなければ困ります」


 静まりかえったその部屋で、向日葵だけが大きな声で抗議し、自分たちが不当性に閉じ込められている事を障子の向こうの人物たちに対し伝えている。


 そして中央の机の前で、正座で座っている湊は、目をつぶりただ黙っていた。


               ☆


 狐の里の旅館の客室に、魔王は突然現れた。


 黒いローブを身に付け、その金色の髪がローブの黒さに際立て、美しく輝いている。


 魔王は下へ向いていたが、空虚な目だけを動かし俺をみた。


「フィーナとハヤト、ルイスが捕まったらしい。白煙が狐の里の内政のため三人を確保していると、告げてきた。魔物ないの内政には関わらない、それが数少ない私の少ないルールであるが、どうしたものか……」


 ヤーグは、くそ真面目な顔をしてそんな事を言い出す。


「そんなくそみたいな誓いは破れ、フィーナの事だぞ! 魔王に約束もルールもいらねえ破っちまえよ」


 俺をは奴の肩を掴んで、魔王としての生きざまを教えてやる。本当に仕方ない奴だ。


「お前を、勇者として送り出した奴の気がしれん」


 そうさも呆れたよう、ヤーグは言った。その時、スパーーンと小気味良く障子が開いた。


 ハヤトの小判鮫の精霊が、今にも部屋から出ていこうとしていた。


「待て、待て!お前は、どこへ行こうとしている!?」


「主様の所へ、匂いを辿ればたどり着く。そしたら主様と、フィーナと、しもべ1号のルイスを助けだす」


「どうやってだ!」


「悪い奴は、みんな水牢に沈めます」精霊は両手をげんこつにし、それに力を込めて言った。


 ったく、この精霊はこんなにべっぴんさんなのに……、でも、嫌いじゃないぜ!


「行くか! 本丸!」


 しかし俺の肩に、魔王の手が置かれて、精霊は消え去り俺は鳥となっていた。


「ウンディーネはともかく、お前は第三者でしかない。それをわきまえなさい」


 なんて事を、師範代の様に言う。そして俺はヤーグに、連れられ次の場所へ。

 



 次に俺たちが現れた場所は、白煙の経営する別館。ぬいぬい達の部屋だ。


「魔王さん、どうして……。三人に何かあったのですか!?」


「三人は、捕まった様だ。詳しくは、魔王城で話そう。お前たちまで勇み足で、白煙を追いかけられてもたまらん」


 そして俺たちはふたたび、移動する事になり、そのせいで俺の自慢の羽毛の艶が少し衰えた気がする……。


 たどり着いた我が家には、仏頂面だったり、不安そうだったり様々な顔が俺たちを出迎えた。


       続く



見ていただきありがとうございました。


またどこかで!

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