現れた者たち
発熱で、しばらく休みます〜。
今、魔王の私室に、魔王を入れて4人の男たちが揃っている!! バーン!
魔王に膝をおり、最敬礼した勇者側の執事ルイス! 魔王の義理の娘さんと結婚を前提に交際中の僕と、魔王と共にある元勇者では今は……、魔王が一番、手を焼いているだろう青い鳥、その実態は元勇者のよしのさん! そして何故、こんな暮らしをしちゃっているのか疑問でしかない、魔王ヤーグ。
「俺が?! 人間界に行くのか? 今さら!?」と、困惑する彼と、決まった事だ彼を言い含める魔王。
しかし抗議の終わらないよしのさんに対し、魔王は「うんうんうん」と、言いだす。そしてその後は……、魔王はただよしのさんを見つめた。
そういう感じに無視を決めこむ魔王と、見守る僕らの前に5分くらいの時間が流れる。
そして少しの時間が流れ、そろそろ僕の世界なら『皆さんが静かになるのに5分の時間が掛かりましたね』と、教師が言いだす頃「まだ、決める事はございますが、そろそろ昼食時ですね。後、少し大まかに決めましたら昼食の準備にいたしましょうか?」と、よしのさんを眼中にないルイスが口を開いた。
だが今回の魔王への質問はそろそろ終わりにした方がいいだろ。幼い子供もいる事だし、彼がお腹を空かしては可哀相だ。
最後に「僕らのもって来た話について、貴方はどう動き、今のところの魔王的なタブーを知りたい」そう尋ねた。
「我に歯向かう者には相応の報復をする。ただそれだけの事だ」
「でも、僕らが他の種族を嗅ぎ回ると、困るのではないのですか?」
「もしお前たちに嗅ぎ回られたくないのだら、お前たちの敵がそれを態度に出せばいいだ。それについて我がどうするかは我の勝手だ。我の魔界では勝手にするのが、ただひとつの通りだ。ただ……お前の話しを持ってきた時、我の脳裏にはすぐに狐の里と白煙の事が頭に浮かんだ。だからお前たちへ伝えるのは我が秘密裏に調査した後でも遅くない。そう思っただけだ」
「ああぁ……」
僕らが動くと言う事は、フィーナが動く事になるからだろうか?
「お前は、フィーナに甘いなぁ……俺の腹はかっさばいたのに」
「ああ、そうかもな」そう、よしのさんにも甘い魔王は言った。
「では、これくらいでいいな。そろそろ昼食の時間だ。今日は飯炊きの者が来る曜日だが、人数が多いので、お前たちも手伝うように」
そういうと魔王は、髪をくくり割烹着を着始めた。
僕の視線に気付き「我は、やりたい事をやる」彼はそう言った。
そして「魔王様は、なかなの料理上手なのですよ」と、言ったうちの執事にあいた口がふさがらなかったが、まぁいいかと僕も台所へとついて行ったのだった。
☆☆
魔王について、改めて魔王の城の台所に来てみた。そこには裏口があった。
その裏口で、フィーナが誰かと話していた。僕らの存在気付いた何人かが、現れた僕らというか魔王に気付き「魔王様」と口々に言っている。
あれが飯炊きと言われる者たちだろうか? 皆、腰が曲がり老婆という感じだ。
そりゃ魔王より、皆、物凄く若いだろうが、ご老体に無理させ過ぎではないだろうか?
「よ! 鬼ババども元気にしてたか?」
そう元気に挨拶するよしのさん。鳥だからといって、許されない暴言ぶりだった……。
「で、今日は婆たち、どうしたのだ?」
なんと魔王までが婆呼びだった。魔界では、母、父ときて婆、爺なのだろうか? しかし事態は急変する。婆たちをかきわけ、鬼が姿を現す。
「お前か、新しい勇者ってのは」
そう言って、老婆たちをかきわけ現れた角のある鬼。鬼ってよりオーガよりだが、金棒ではなく、トゲトゲもない、木彫りの素朴さがある棒を持っている。大体太い、野球のバットのような形だ。
そのオーガが、僕に向かって棒を、振り上げ襲って来た。
―― 戦闘スタート ――
魔王は、ただ前を見ている。
それは僕とオーガの間にあった出来事には、関知しないって解釈にしないと窮地におちいる。ので、僕は攻撃する事にした。
僕は野球ボール大の、土の魔法の塊を、オーガの腹へ目掛け放った。
「あぁ……!?」
彼に驚きの声を聞く、僕もそれに驚く。1つ1つの動作も今回は遅いのに、驚く要素がないはずなのに、どうした!?
攻撃されたら戦意喪失する程度には、ぶっぱなす癖で思いのほか魔法は強くなってしまったようだ。向こうの世界なら、入院するレベルの攻撃だが、ここは魔界。
その時、婆たちから幾つもの手がオーガに延びて、彼を引きずりズルズルと、魔法の直撃を避けるように移動させた。
ゴォーン、僕の魔法は壁に当たりひびを入れて、パラパラの欠片を落す。
……攻撃威力的にこんなもんか……と、壁を見ながら、視線を移すとオーガの方は婆たちに袋叩きにされている!?
「えっ、何? どうしました?」
僕がそう言う間も、婆たちはこちらをチラチラと確認している。それなのに袋叩きの手を止めず、誰も答えてない。しかしよく見ると婆たちは、手荷物の鞄や巾着袋などで叩いているので、僕の魔法よりは優しいだろう。これはあれだ。
「皆さん、僕に免じて彼を許してあげてください」
そう少々浦島太郎気分になった僕は、やっとオーガ(亀)を救う事が出来た。どういう事!?
この一芝居の中で老婆たちは、大変活発に動き、背筋もちゃんとしていた。口もとから見えている大きな犬歯、そして髪から見え隠れしている角が見えなければ、困惑の度合いは倍になっていただっただろう。
やはりここは魔界見かけ通りではないようだ。改めてここで生きる大変さを知り気分落ち込む。
婆たちの中のリーダー的な、婆様が僕たちの前に進み出たのち、頭を下げる。
「礼を欠いた事いたしました。申し訳ございません。なにぶんあやつはまだ、若いので許してやっていただけないでしょうか?」
「まず、今回の本題を話せ、話はそれからだ」
そう魔王が言う。僕たちの前とは違い、話しがさくさく進むようだ。僕は少し感心し、少し呆れた。
「話しというのは、私の息子が新しい勇者が客人として迎えられている事に納得出来ない。そうもうしまして……話を聞きたいと言うので、連れて参りました。ですが、先考えぬ事をしでかしまして……。本当に申し訳ない事をいたしました」
「うむ……」
そう話は、まとまりかけるようには動いているようだ。
「俺は魔王様と、話しがしたいなんて言ってねぇ! 新しい勇者がこの城でふんぞり返るれるほど、価値があるか? それを自分の目で確かめたいと言ったまでだ。それが通りだろう」
オーガの若者はそう言った。たぶん、僕と戦いたいという事だろうが……。そんな通りなど聞いた事がないわ。武道会へ行け! 闘技場でも可。
と、言っていい? 魔王?と、たぶん聞こえてないだろうが、心の中で言ってみた。
「駄目だ」
魔王の言った否定の言葉に、青ざめる一同だったが……。
「いや、こっちの話だ。魔王ともなると、人に聞こえない雄鶏の声まで聞こえるようになる」
魔王がそう言うと、フィーナがちらっとこっちを見て、ルイスが「ハヤト……」と少し咎めるように、僕と名前を呼んだ。
……二人とも、心が読めるようになっちゃったの?
続く
見ていただきありがとうございます!
またどこかで~。