レブレ橋から語られる出来事
ゲーストハウスのリビングルーム、3時の紅茶を飲みながらクッキーを摘まむ。
「じゃー今回のギルドクエストの犠牲者はミッシェルで行くか」
その一言で今回のクエストの犠牲者が決まった。
最近、ある墓場で若い男性の死体が、氷漬けで発見される事件が多発しており、その犠牲者の最後の目撃例が多数出ているのがレブレ橋だ。
『馬車も通れる石を切り出して作られたその橋は、欄干の部分に幾何学模様が彫刻が施され、魔法の街灯も見栄えがよくて、最近ではデートスポットにもなっているところなの。で、商工会がギルドにオファーしたのよ』僕達の受付担当のヴァリスがそっと教えてくれた。
「せっかくだから前に、魔法屋で買った通信魔法の効果があるアレ使おうよ! せっかく買ったんだし!」そう言って、オリエラが二階から持って来たのは、血の様に赤い魔法石で出来たピアスに見えるイヤリングだった。
「僕も魔法を習っているので、ピアスに対してそんなに偏見はありませんが、そこまで大きいの遠慮します。趣味じゃありません。」
すぐさまミッシェルは却下した。
「そっか……」
「でも、ほら見て、ルイスは……」
一人掛けの椅子に足を組み、手を組んで座って居たルイス、その耳もとにイヤリングを当てたオリエラの位置はとても近かった。
間近で受けるルイスの視線は思春期の女の子オリエラには、|『惚れて舞うやろ』の効果ダメージ《イケメンの力》が強すぎて、彼女の動きは止まった。そんな彼女の動きを感じ取りルイスが、今度は動く。
「オリエラの方が似合いますよ」
ルイスは「はい、オリエラ座って」と言って自分の座って居た椅子に、彼女を座らせると、彼女の三つ編みをはずす。するとどうでしょう。器用な手つきで頬両脇の毛から丁寧に編み込んでいく。
出来上がりは、後ろの長い髪を残し、上の部分で編み込みをほどこしてゆるふわっとした仕上がり。普段の三つ編みも元気なオリエラらしいが、|今回の編み込みの成果では《編み込みハーフアップ》でやはりお姫様の血を感じずにはいられない。
「凄い! どうやったのこれ教えて!」
「その前にイヤリングを合わせて見ればいかがですか?」
「かわいいかも?、その前に自分じゃないみたいで不思議」
ルイスから鏡を渡されたオリエラは、いつもの元気な姿になった。しかし普通にやったら事案である。気を付けなければ……。
彼女達のもとにパーティーメンバーが集まる。そして覚えようとしている自分の髪を編み出したぬいぬいはともかく、ミッシェルに釘を刺さねば……。ルイスだから出来る事だよと……。
☆
沢山の星が見えない程、明るく光る魔法の街灯の下のレプレ橋。
ミッシェルは、途方に暮れて空を眺めていた。そろそろ2時間になる。コートを着ているがさすがにミッシェルは寒そうだった。結局、イヤリングはコートの襟の下に縫い込まれて収納された。
5回目位の「もう、今日は帰りたいです」を魔法の箱で聞いた時、「うん、がんばれ――」ともうおざなりに答えていたが――。
「あっ誰か来ます」と言う声の後、見ると、誰かが彼に近寄って来るのが見えた。
「こんばんは、うん一人なんだ、どうやらすっぽかされたみたいで……」
相手の声まで拾えなかったようだ。雑音に交じる。
「えっいいのかな?」
「じゃ……少しだけお邪魔するよ。…………美味しいコーヒーは、何よりまさるからね」
みんなで、台詞を考えたおかげでなんとか無事お持ち帰られは成功した様子で、先行班の僕達は先に墓場の方へと馬車を走らせた。
待っていると、崖の下にある墓場には、やはりミッシェルと女性はやって来た。
殺風景な墓場に入りミッシェルは、「わぁ――凄い大きなおうちなんですね」なんて言っている。完全に幻術か何かに、かけられている様だ。
墓場が、揺れるのを双眼鏡で見届け、「じゃー行こうか。ルナ」「はい!」
僕達は、ロープを命綱に崖から下に飛びおりる、僕の魔法や、ぬいぬいの魔法に、フィーナの植物のツタなど沢山の安全装置をかけているが本当に死ぬ思いである。
地面に接触するとすぐに、僕はミッシェルを抱えて退避させる。その少ししてルナが詠唱しながら、と言うよりは神の祈りを捧げながらゆっくりと歩いて来る。
「神は平等に命を授けたもうがそれは叶わず、神の手は生きとし生けるものには決して届かない。神の手を離れた人間は、彼らの力で生きる事を選んだから、けれど死した時、神の奇蹟は平等に授けられる。おやすみなさい死者たちよ。次、目覚めた時は平等に生き、神を愛し永遠に生きられるよう。さよなら、さよなら、おやすみなさい」
彼女の周りに死者は集まり、彼女の目の前で、跪く様に消えていく。彼女はそのまま死者達が眠りについた場所を、踏まない様にして奥まで歩いて行く。そして置かれていた木や草をかきわけ土を払いのける。僕が手伝おうとすると、「ハヤトは危ないのでやめてください」と言って止められた。
彼女はとても小さな携帯くらいの大きさで、2センチ位の深さの箱を見つけ取りだそうとするが、彼女が触ろうとしたとたんに箱は、粉々に砕け散る。
「証拠が……」と僕が言うと、「もう犯人は、生きてはいないでしょう」そうルナは告げた。
僕は彼女に、浄化をしてもらい、仲間のもとへ帰った。次の日は、ギルドに行ってふたりでヴァリスに説明をしたら、彼女は「あっ」言った。
「私達はその先を知りたくないので、決しておしゃらないで」
ルナはそう言ったが、僕らはきっと犯人の名前を近い内に知ることになるだろう。それまでは知らないふりをしているつもりだ。
つづく
見てくださりありがとうございます。
また、どこかで!




