僕と彼女と事務仕事
彼女がゲストハウスの階段で、僕を呼び止める。
「相談したい事があるんです」
僕はすぐさま、みんなと居る時ではなく、この場所を彼女が選んだ意味を彼女瞳から読み取ろうとする。
ーー駄目だ。いろいろな意味で、顔がにやけてしまう。いや、それが普通だ。頬を染める事もある。
しかし僕は未だにそういう気持ちには、慣れないようだ。フィーナは、僕が好きって気持ちを、あらわしていい人。
しかし二人だけの話しの後々になって、日常では思いか掛けず好きって気持ちを、隠してしまっていた事実に気づく。
「ここで話しにく話?」
「そうですね、二人きりの方が……」
フィーナは、下を向き服の上着を言いにくいそうにもて遊ぶ。
「じゃ……」
僕は彼女に手を差し出し、彼女の置いた手を優しく包み込む。
そして一緒に、階段を一段、一段ゆっくりと上がる。そして階段の先の飾り窓から見える通りを指差し――。
「しばらくしたら彼処の看板のカフェに来て、君、一人でね。僕はルイスに報告だけしたらすぐ行くから」
「はい、わかりました」
そう言うと階段の下へと、彼女は手すりを持って駆け下りて行く。弾む銀色の髪や華奢な身体付、あやうい感じのスカートの裾と、か見ていて飽きない。
しかし僕の視線に気づいたのか彼女は、突然振り返り少し恥ずかしげな表情をうかべると、ゆっくり少しよそ行きな感じなふるまいで、廊下の角を曲がっ入った。
はは、少し熱い顔を、手で覆い……僕は、いろいろ駄目かもとそう思う。
理性が、って事もそうだけど、好きの加減が彼女より、僕の方が多く、強い気がして、いろいろ負けている気がする。
こんな気持ちを伝える事が少し怖い。彼女は絶対言わない事だろうが僕の心のどこかと、僕の過去がふと顔を出し『重いね』と、僕に告げて沈んでいく。
僕にそう言った彼女も、冗談だったんだ。気にする事はない。
――まぁいい。僕は僕。いるか、いらないかと言えばいらない記憶。それを心のどこかに投げ捨て、彼女と僕だけの恋をしていく事にしよう。
っと、急がないと。
僕は少し、急ぎぎみに階段を駆け下りる。そしてリビングルームへと通路を進み、その扉を開ける。
やはり今日もルイスとミッシェルは、いろいろ書き物をしている。
ホーエンツォレルン城の王族やギルドは、僕に猫の鈴は付けない代わりに、指定の書式で報告書は欲しいと、告げて来ていた。インクで正式な書類へと書いていかなければならない。
そもそもギルド運営を進めて行くために、新種の魔物、新ダンジョン(と罠)の情報は欲しいらしく、そっちは前からあったけどね。
僕向けは旧地図からの変化した地形を書き込んだり、住す民の数を記載したり、明らかに冒険者の仕事ではないだろ?! って事柄を明記する書類欄がある。
だからゲストハウスを、気を抜いて歩いていると、「もうレンさん!」ってミッシェルの声だったりクックク(『いいでしょう。ならば、戦争です!』って言いそうな)ルイスの笑い声がする。
事
フィーナは、魔界とは書き方やそもそもパソコン派の魔界との違いがあるので、下書きをまとめたりしているようだ。
ーー僕は魔界でのパソコンについては、フィーナに詳しく聞くことは出来なくて、パンドラの箱は未だ閉まっている。
というわけで、二人の仕事はまだまだ時間はかかるし、ギルドクエストの成果報告は毎日増えている。
地獄絵図!! それプラス、今後の進路予定図の作成と仕事は山積み待ったなし。それなのに僕も専門的な事になると半分も理解出来ない、そんな僕に任せるより、自分達でやるのが早いらしい。
それでもルイスは、休憩時間などに事務関係の書類や書籍を、僕に手渡す。
「ギルドカードを読み込むと、ステータス的には貴方の学力は決して低くはないはずです。意外でしょうが、貴方に理解出来ないものではないのですよ」
今年大学1年、現在休学中か、退学してしまった僕は、「はい……頑張ります」と、力なく答えた。
しかし……「内容うんぬんの前に、やはり文字が壊滅した……」と、すぐに頭を抱える事になる。
しかしフィーナには、すぐに辞退したルイスは、僕に毎夜、進行状況のチェックと、わからない場所のおさらいをする時間をもうける。
「では、今日の習った部分のおさらいとして、フィーナの書いた下書きをもとに、本番のものに記入してみましょう」
と、彼はいた具合に、彼は丁寧に教えてくれる。
「ハヤトさんいいですね。僕もルイスさんに教えて貰えば、もっと上の資格を狙えたのに……」
僕が勉強している横で、僕らの様子を見ていたミッシェルはそう言ったほどに、彼は丁寧に教えてくれたようだ。
「ミッシェル、私にその資格のお手伝いをさせて貰えませんか?」
そうルイスは、優しい笑顔でいう。
「ルイスさん……」ミッシェルは、感動しているようだ。
「ハヤトはもちろん、ミッシェルにも、むちゃぶりを言いやすいですし。きっと立派に事務の知識を身につけてくだされば、一生その恩を忘れないと私は理解しているつもりです」
そう言った彼は、沈む夕陽をバックに、椅子の背に手を掛け計算されたような量の日射しを受け、大変神々しかった。
ミッシェルは動揺していたようだが、ルイスの語った未来は勇者と執事の関係上、妥当とすぐさま判断し「うん!」と、力強く言った。
これが世に言う、『黄昏時の利害関係の一致である』なんて事は、誰も言わない。
そんなルイスとミッシェルに、デートの報告をするのは申し訳ない。なので、コーヒーを飲みに行く事だけを連絡をする。
「わかりました。ハヤトすみませんが、我々の分のコーヒーも買って来てください」
「わかった。普通のコーヒーか、おススメでいいよね?」
「眠くならなければ、何でもいいです」そう彼は、力なく答えた。ピカピカのルイスの様子は普段と同じ感じだが、ミッシェルには目の下に明らかにクマが出来ている……。
「今日はもう休んだ方が……」
「大丈夫ですよ。もうすぐ、めどが付きそうなので、気にせずデートへ行って来てください」
そう言って、僕を見つめるルイスは、半端なく顔が綺麗なだけに怖い……。
「えっあぁ……」戸惑う僕に、ミッシェルが――。
「デートなんですか? 人がハヤトさんの手を5人分は借りたいのに!?」
「ミッシェル……そう言う事を、言うとモテないみたいに思われるので、こんな時は好きなものをお土産に頼むくらいがいいですよ。きっとお土産にだいたいの物は買って来てくれますから」
「ルイスさん……その余裕……。社交界では、影でブイブイいわせてるって本当ですか?……」
「はっ?」
ルイスは、静かにそう言った。ミッシェルはこの後、何か月もルイスの生贄になる事を僕は確信した。
「では、行ってきます!!」
「ハヤトさん……」
僕は、そんなミッシェルの声を、振り切ってリビングルームの扉を開けた。
――ごめん……ミッシェル。僕に守れるのは一人だけフィーナだけなんだ……。
そう、思いながら僕は階段を駆け上がると、自分の部屋へ入る。そして鍵を閉める。
念のため、布団を人間一人分くらい膨らました。後は、鞄を持ち自分に強化魔法をかける。
そして窓を開けそこから、下を覗くと誰も居ない事を確認すると窓から飛び降りた。
いざ! 彼女の待つカフェへ!!
続く
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