スリの少年
ソイルドソレルの街もやはり高い壁に、守られた街だった。
しかし自警団の守るこの街は、国王の治めるホイルトツェリオ城とは違い街並みが、下町というかゴミゴミしているというか、どちらかというとこの街は僕の以前いた世界と似ている。
そして磯の香りがする。以前見た内海ではなく、どこまでも続く青い異世界の海が見たい。
そんな事を考えながら、不安のない幌馬車の外の世界を見ていると僕たちは郊外近くの自警団の事務所で降ろされる。
これから先は、ある程度予定が決まっているのだろう。僕たちはギルドの受付嬢のヴァリスさんの持っている手帳に書かれているだろう予定通りに彼女の案内でゲストハウスへ辿り着く。
彼女の用意してくれたゲストハウスは、勇者の間ほどのきらびやかさは無く、どことなくシェアーハウスのような雰囲気である。
しかし街中にあり生活をするという面ではこちらの方が暮らし易いのかもしれない。
僕とルイスとフィーナの3人の事務をこなしているメンバーは、ゲストハウスへ着くと荷物を玄関の中に入れると、もう帰ると言うヴァリスさんと一緒にこの街のギルド支部へと向かう事になった。
ゲストハウスにミッシェルが居なかったのだが、こんたけ事務方が行けば彼の仕事も終わり、休む事が出来るだろう。
そして僕らは着いたばかりのソイルドソレルの街を歩く、ワイシャツと灰色のズボンの僕と、燕尾服のルイス、ギルド所属のヴァリスさんは赤いくせ毛で、制服姿の彼女は普段は受付担当であるらしい。
彼女の話ではすでに何度も、僕らはこの街の新聞を賑わしているらしく、フィーナも普段と変わらない格好で問題ないらしい、どんな内容だったのかについては話しをごまかされてしまった。
もしかして……勇者様と結婚間際の美少女とのラブロマンス的なものであったら、どうしよう……。一緒に見せるべき指輪も買ってない。
しかしこの街は商業が盛んの様で、ホーエンツォレルン城より様々な店が並ん賑わっているように見える。
指輪が必要になったら、きっとなんとかなるはずだ。
石畳の道を馬車がゆっくりした速度ではあるが、ひっきりなしに走って行く。歩道と車道の区別の無い道を僕は恐々歩いていた。
「どうですか? この国は?」
ギルドの受付で働く女性特有の、人なっこい笑いをヴァリスさんも浮かべる。
「ホーエンツォレルン城より、都会的で人通りが多い事の驚きました」
「そう何ですか? 私はこの街から出て事がないのであまりピンときませんが、港町なので、伝統的なホーエンツォレルン城の城下町よりその面で賑わっているかもしれません」
彼女がそう言った時、僕の腰にドーン衝撃を感じた。
「あっごめんよ」
小学6年位の少年が、僕の腰に当たってしまったようだ。「気を付けて」、僕は彼を支えるとその少年は、「ありがと――」と言って駆けて行った。
「あ!!」
「どうしましたか?」「勇者様どうかしましたか?」
「あの子は、スリだった様でこっそり取り返したら、あの子の財布まで取っちゃっいました!?」
僕の手には、僕の財布と上等な皮財布が、もう1つ。
「これはどう見ても、彼の財布ではなさそうですね……」
「そのようだね……。僕はあの子を追いかけるからふたりは自警団に、その財布を届けておいて」
と言って僕の投げた、誰かの財布は弧を描いて二人の間に落ちそうになるのを、ルイスが慌てて掴む。
これでルイスの使う鋼の糸が、僕をがんじがらめにし僕を拘束する事はなくなった。
細い植物のツタを付けた少年を追うと、そのツタは暗がりになっているの路地へと入って行っている。
「金がないのは、どういう事だ!?」
今、一歩遅かった様で、誰かの怒号と、ともに少年が後ろに倒れた。彼に手を出し両脇を支え立たせる。
そして彼の前にいた男の前に、僕は立ち塞がった。
「何だお前は?」
その言葉の最後を聞き終わると、僕は声の主をツタによって拘束した。
――これが一番安全で、手っ取り早いのだが、これでいいのだろうか? 正義の味方として、もっと相手の話を聞くべきだろうか? いや、結果は同じになりそうなので、手間を省くか。
「兄ちゃん、何やっているんだよ!? こいつはここら辺をアジトにしてる、『大蛇の牙』の一員って知らないのかよ!?」
「それは知らなった……」
事態としてあまり良くなかったようだが仕方ない判断と言ってもいいと思うが――。
これでは勇者パーティーと街の荒くれ者の抗争が、始まってしまうかもしれない。
続く
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