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水面ごしの恋


 広葉樹の森を歩いてる。


 皆、それぞれ荷物を背負い歩くが旅慣れない僕は疲れはするが、それより新しい景色に目を奪われ疲れを忘れてしまう事の方が多い。


 小さな子供の様な黒魔術師ぬいぬいと、特殊な訓練をされているだろう執事服は強靭で破れない。そんな服を身に付けたルイスが先導する僕たち勇者パーティーは、 湖の水辺を歩いている。


 歩いている途中に中間の目的地である渡し舟があったが、船頭が不在だった。


 その為いつもと変わった事が起きていると仮定し,2班に別れて船頭さんを探している最中だが、最悪の事態を考えて水鏡になった湖の水中も覗きながら行く。


 湖の水は澄み、魚が幾度も水面に顔をのぞかせる。やはりここでも、フィーナと写真を撮りたいが、そんなに何枚も撮っているとフィーナの携帯の電池が足りなくなってしまう。


 ……うん? ところで、フィーナはどうやってバッテリーを充電しているのだろうか? 後で、聞いてみよう。


 そんな事を考えて歩いていると、ぬいぬいが小走りに湖の水辺を走って行く。彼の後を追い付いていくと――。


「おい、これを見ろ」


 彼は指さす先の湖には、水面の揺らめきはなく鏡のようになっているがそこにいるのは見ず知らずの女性だ。


 魔性を感じるほどの美女ってわけではないが、身綺麗な好感の持てる女性ではある。その彼女がしきりに何か訴えてくる。


 試しに僕が湖面に手を突っ込もうとしたら、「おい!」と、言われぬいぬいに腕を掴まれた。


「ウンデーネ、こいつの代わりに手を入れてやってくれないか?」


 そう言って僕の後ろで、どれどれ? って言う感じで見ていたウンデーネに、ぬいぬいは声をかけた。


 彼女は、口元に手をやり首をかしげると。「わかった」と返事をした。


 彼女は荷物を置いて、冷たく水にゆっくりと手を突っ込むが、どこまでも触れる物がないようで、思い切ってそのまま飛び込んでしまった。


「ウンディーネ?!」


 彼女はすぐに浮かび上がり、水色の髪を水につけ、メイド服の重さなど感じない感じて、背泳ぎでスイスイと泳ぎだす。


 しかし水辺では、ウンディーネに手を伸ばしたまま落ちそうになっていたぬいぬいを、僕とルイスが慌てて引きあげようとおうわらわになっていた。



「ぬいぬいさん、ちゃんと自分の非力さを自覚してくださいよ」と、別の班だったミッシェルがぬいぬいに苦言を呈する。


 彼が走って来てなければ僕らの班は、皆ずぶ濡れだったかもしれない。

 

 ぬいぬいは杖をひょいっと出し一振りする。「うぇ――まずぅ……なんですかこれ!?」と、ミッシェルはうぇうぇ言いだした。


「これは好き嫌いを直す魔法、このまずい味の後に食べると素材本来の味に気付く魔法だ」


「それを何故今、かけたのですか?」そうミッシェルが話している途中に、彼の口にぬいぬいが何か放り込む。


「うわぁぁぁ、なんか、すぅーすぅーする。これ何ですか?」


「お前の嫌いなハッカ飴だが、うむ」


「全然美味しくないじゃないですか。もう!?」


 地団駄を踏むミッシェルに、ぬいぬいは、「そういう事もあるのか……。ちょっとしたお礼だったんだが……」と、目を見開き驚いていた。


「ハヤト、遊んでいないで、こっちに来てください」


 ルイスに呼ばれて向かった先では、ずぶ濡れの男性が、四つん這いになり荒く息している。

 

 僕らの来た方角から、ウンデーネが水を滴らせて歩いて来た。


「主様、水の中には女の子はいなかった」


「ありがとうウンデーネ、では、彼女が居るのは水面の僅かな部分だけなのかもね」


 そう言うと男性は泣き出し、僕らは少し途方にくれるが、そこはルイスがわかっている部分だけ報告を始める。


「ウンデーネが飛び込んだ後の水面は、なおも女性が我々に何か訴えるので、それにしたがったら彼を見つけて保護しました。それでも彼は女性の元に行こうとしていましたが、女性は彼を助ける様に私達に要請しているようなので、彼が何も考えず湖に飛び込んだのでしよう」


「お前達に何がわかる。俺の気持ちもわからないくせに!」


「じゃー貴方は、貴方を助けようとして湖に飛び込んだ、彼女の気持ちがわかるんですか!!」


 そう言って勝手に飛び込んだ、ウンデーネを指さす。こんな時だけは、感の良くなるウンデーネは、「頑張ったのにひどい!」と、言ってフィーナの後ろに隠れた。


「そうだったんですか、すみませんでした……」男は急にしおらしくなった。


その功労者であるウンディーネは「もう、いきなり飛び込まないでください」と、フィーナに怒られている。

 

 違う班だった彼女だが飛び込むウンディーネを見て、慌ててバスタオルを手に持ち駆けつけたようで、走って来てそのままウンデーネを拭き続けている。


 彼女の体の横から、ウンディーネのニコニコ笑顔が見える。大事にされている事が嬉しいようだ。


 湖に飛び込んだ男はやはり僕らが、探していた船頭だった。

 

 彼は拭かれてはいるが濡れてしまったウンディーネの事で、責任を感じ我々を家へと招待してくれた。彼の家は一人で住まいにしては大きな一戸建てで、船の船頭の独占商売は結構儲かるんだな……と僕を感心させた。


 もちろん彼の出してくれた魚料理もどれも美味しく、多才過ぎる男に僕は驚く。


そして彼は水面に移る彼女の事を話出した。


「親父から船頭を継ぎ、一年位してから水面に映る彼女の事に気付いたのです。俺の寂しいこの暮らしの中で、彼女の見つめるその時間だけが、俺の安らぎである事に俺は気付いたのです。しかし彼女の事だけを思い暮らす俺の前に、彼女は段々現れてくれなくなってきてしまった。だからつい彼女がみえる今の内にしか、彼女つかまえれないのならもう一生会えない。そう思う様になってしまい……皆様にご迷惑をかける事になってしまいました」


「でも、マカルさん確証がなく無謀な事をすれば、もう二度会えなくなるところでしたよ」


「彼女の腕を引き留めようとして湖に落ちたのですが……もしかしたらこのまま逝けたら、彼女に会える気がしたのですが、彼女のあの様子では会えそうにもないですね」


 そう、マカルさんのいう通り女性はとても心配そうにしていたのだ……たぶん、2人の思いは通じているだろう。一同黙り込んでしまった……。中に一名、モリモリ魚をたべ、生でも食べそうな勢いの子も居たが……。みんな黙って居たのは事実である。ミッシェルはよく頑張ってツッコミを抑えた。


「とりあえず氷の魔法でも覚えますか……」


「あっ!……はい!」そう言った彼。


 そもそも、こんな所に住む人は結構器用な人が多い。もともと器用そうなマカルさんは、恋の力のあいまって凄まじい勢いで、氷の力を拡張していったらしい。


 そして次に朝には彼は……。


「覚える事が出来ました!」と、日が昇りだして、すぐの僕らを起こしてまわったらしい。


 そして彼は氷越しに彼女に触れ、泣いて喜んだらしいのだ。


ちなみに、僕の夢は、フィーナと素敵な湖でデートする夢だったのでまぁ……仕方ないよね……。起きられなくても。



          続く


見ていただきありがとうございます! 


また、どこかで!

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