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底なし沼の魔物

 異世界の高い石壁に守られた城下町、闘いの時のみ開く魔法学校前の大きな門。


そして大豆畑へ向かうために、毎日出入り口した小さな門。


その小さな門から僕らは旅立つ。


いや、旅立つてしまった。


門より少し離れた場所に僕らを乗せてくれる荷馬車が待っていた。それに乗り込みしばらくすると、城下町の城の石壁が遠くに小さくなっていく。


 僕が畑に行くために毎日通った道は、今ではもうかけがえのない思い出の道になっている事を、その景色を眺めていく中で知る事が出来た。


 仲間の顔は、喜びを浮かべるもの、感傷的に物思いにふけるものなどさまざまだ。


 僕は念のため、三枚買っていたマントを、底なし沼の泥に汚されないようにしっかり畳んで鞄にしまった。


「ハヤトさんなんかそういうところが、まめですよね」


 後ろで見ていたミッシェルが、感心するように言う。


「まぁ、庶民だからね」


「そんなもんですかね……」


 そんな会話をした後は、底なし沼の戦闘方法の打ち合わせ、それが終わると幌馬車の荷台から景色を見つつ、後方の安全確認をしていた。


新しくつながった道は、もう蟻の巣のエリアまで到達していた。

驚く早さで世界は広がっているようだ。


今回のギルドクエストエリアの底なし沼を、僕らがクリアーするとホイルトツェリオの世界は、一新されてしまうのかもしれない。


 ここ、現地に来て、その場の空気を感じとり、計画を再度詰め直す。


「では、これから底なし沼の作戦を行います。魔物はほぼひじから指先までの、大きさの魔物である。戦場は底なし沼である事から我々は魔法などを使い、魔物によって底なし沼の中に引き込まれる事を防止する。先発に、僕、ミッシェル。ぬいぬいとルナは、状況を見て参戦してください。以上ですが意見有りますか?」


 返事はない。


「主様、頑張って!」ウンデーネは、力を込めて応援してくれる。


「じゃーウンデーネもついて来てよ、水中で息が出来るんだし」


「泥水は無理」と言って胸の前で手を交差させ、拒否と言うかバイバイされた。


 ウンデーネちゃん……。


 フィーナとは、目と目が合い。彼女に向かって頷くと、荷馬車を飛び降り目的地となる地まで少しだけ歩く。

 

 目的地の底なし沼へ着き、少し近づいて様子を見てみる。


 近寄って見てみると、ただの水溜まりもあるだろうが、底なし沼と思われる沼が、遠くまで続いている。


 悪い予感しかしない。


 数には、加減があるだろう。いっその事ここへ道を通さなくても良くない? しかしそんなわけにもいかないだろう。


ギルドクエストバックレ勇者パーティーって、面白い伝説が残ってしまう。


今は、普通を目指す我々は、目の前の沼から魔法攻撃の電気を通していく。


「ミッシェル、僕から行くよ」


「はい、離れました」


 離れたところから、指から調整しつつ電気を流すと水面は、ぐつぐつ、バシャバシャと音をたてる。


 そのまま魔法の出力をあげると、沼自体がウネウネと動いている。


「ハヤトさん……」


「なんかやばい通り越してグロイ……」


 次々感電した、泥の塊が表面を覆いつくす。人間の手と見間違う何かが、魔物の塊中に見えた。


 たぶん指に擬態しているだけだろうが、指先を見るとそれでもギョっとする、そして沼の表面は山盛りになった魔物が、隙のないほど浮かんでいる。


 何も知らない人間が、人間の手に見える何かに触れてしまったら……。少し考えるだけでうんざりする。


 1つ目の底無し沼が終われば、その先はただの水溜まりかどうか確認するために電気を適度に流す事を繰り返すのみ。


 作業ではあるが、これは危険と隣り合わせな作業である事を頭にいれて動く。


 しかしここで異変が起こる。


 同じ作業を多く行ったからなのか、ただの偶然なのか近場で作業をすると、たぶん電気が行っていない底なし沼から魔物がわらわらと逃げ出すようになったのだ。


はって逃げるものや、遠くにいる我々めがけて近寄り服を掴んで強引に沼を引きづり込もうとするもの出てきた。


カオスな事態である。最初、音によって危険を察知して魔物はそういう行動にでているかと思っていた。


「でも、この魔物は音によって獲物が捕獲されたのを知り、一斉に底なし沼の中に落としていますよね? 獲物が出す音と雷の魔法により魔物自身が出す音に違いがないのになぜ行動が別れるのでしょうか?」


一見どうでもいい事を僕ら真剣に考える。それを考えるかどうかで、ヌシクラスの敵が出た時に思わぬ起死回生の一手が生まれるからだ。


だが、大体はどうでもいい事なのだが。


「オス、メスがいて行動が違うのかもしれない。種族を残す必要のあるメスが逃げ、オスは闘い餌を運ぶ」


「もしくは働き蜂や女王蜂みたいな」


「でも、怖いのは私たちの行動を、魔物が学習しているかもしれない事ですよ」


僕とミッシェル、そして補佐で来てくれたフィーナと顔を見合せる。いろいろな事態に対応するために、一度馬車に帰って沼を落ち着かせる事にした


 馬車に戻る途中で、最初の沼で、何人かごそごそしているのが見えた。みんなで、麻袋に魔物をいれている。そしてぬいぬいが少し氷の魔法をかけている様だ。


「お疲れ様でした、調子どうですか?」

 ルイスが僕らに聞く。


「まだまだ、終わらない。僕らを積極的に沼に引き入れようとして来たり、音で逃げてしまったりするので一度帰ってきたよ」


「では、おれとオリエラで行ってくる」

 僕とルイスの会話を聞いていた、ぬいぬいがそう宣言をする。


「師匠待ってました」


 二人は軽い足取りで、底なし沼を駆けて行く。落ちないだろうか……。


「ところで、ルイスこんな大量の魔物どうするの?」


 いつもの手袋を取り、作業を手伝っているルイスに声をかけると――。


「すぐそこの色とりどりの菜の花畑の村と、次の私達が泊まる宿へ持って行き、宿代替わりにでもして貰うために集めています。処理して乾燥させると、一部の人間に人気のある陶器の様な物になるのですが……。中身の方は食べてのお楽しみですかね」


 と、怖い事を言う。


その時、沼の奥地で、浅黒い雲が広がり次々、沼に落雷が落ちていく。その少し離れたところに、大きい石の上に乗り、指揮者の様に杖を振るっているぬいぬいが見える。


 その下で、オリエラが炎の軌道描く剣の技で、迫りくる腕を蹴散らしていた。


「あれはないわ……」ミッシェルはつぶやく。


 そう、あれはない。ぬいぬい僕とは、格が違い過ぎてなんかしょげる。それにしてもあやって魔法を扱っていると、ぬいぬいは子ども魔王のようだ。


     続く

見ていただきありがとうございます。


また、どこかで!

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