魔が刺す時
夜の廃虚の城。草原の立つこの城は僻地のためか誰知られず建てられていたらしい。
異世界といえ、僕らのいた世界とそうかわらない程、戸籍にはしっかりしているこの世界。
僻地とはいえ、人知れずなんて事がありえるのか? 向かう前から嫌な予感しかしない。
朽ち果ててしまった資材が平然と、城の通路に置かれている、そしてこのかび臭い匂い。
今回僕たちが選んだと言うか、押し付けられたギルドクエストは、不死者、アンデッドと言うか骨の討伐だ。
骨がこの城のどこかに、大勢住み着いているらしい。
パキッ、その音に慌てて振り返ると、ぬいぬいがうん? って顔をしている。
彼が朽ちた木を踏み潰しただけのようだ。僕も早く少しでは動じない心が欲しい……。
「これは、随分劣化がすすんでるな。だが、この城の主が居なくなってからそんなに経ってはいないはず。骨の他に何か居るかな?」
彼は少し嬉しいそうである、不死者を操るのはリッチ、ネクロマンサー、偉大なる魔法使いのなれの果てのどれかだろうが、今はまだ世に出ていない研究成果がここには眠っているかもしれない。
「師匠、廊下には何も居ないよ」
「しかしこの奥には、大きな魔力が渦巻いている」
「そのデカそうなのどうしますか?」
「この先の奴は、たぶん操られているだけだろ。そっちはお前達に任せる。操られているだけなので死なん。だから時間だけ稼げばいい。その間に俺とオリエラ……後、聖女様に来てもらうか。魔術師がアンデッド化している可能もあるからな」
「わかった、ルナに伝えて来る。気を付けて」
そう言ってハヤトは、後ろに走って行った。
「あの頃よりは、使える様になったかもな」
ぬいぬいは、あごを少し動かしハヤトを示す。
「かもね。でも、師匠、私も負けていは居ないよ」
オリエラは、細身に剣に魔法を唱え、その剣先は赤くメラメラとした炎の後を残した。聖女ルナが走って来た。
「どれくらい走れる?」
「貴方がたをおいていく位には」
「それは、上等!、行くぞ」
「「はい」」
☆★☆★☆
めっちゃ早い……。王女も、聖女も走る訓練させられるの?
フィーナとシルエットは、知能の高い魔族がいた場合、魔界の統治の面でいささか面倒な事になるそうで、外で今は待機している。
だから今ここにいるのは、僕、ルイス、ウンディーネとミッシェルとなっている。
「ハヤト数で攻めて来る相手は、苦手なんでよろしくお願いします」
「鋼糸があるでしょう?」
「鋼糸は直接攻撃用なので、絶え間ない、攻撃には隙が出来るので無理です」
そう言って早々に、ルイスは戦線を離脱しそうだ。
「じゃ……侵入した側の廊下で陣取って戦おう。まだ骨達は動いていないけれど、始まってから向こうのぬいぬいのほうへ行かれても困る。まず一発喰らわせてこちらへ引っ張る。そして魔法はで出来たら温存で、様子見を」
僕らは無言でうなずきあい、戦闘の立ち位置に付く。
「ほら、戦闘開始だ――! ハァハハハ!」
――テンションあげていないとやばい、空気に飲まれそう――!
戦闘の初手は、熱い粘着質の溶岩! そしてそれに渦巻く炎を纏わせ、ホールの中央に注ぎ落す!
そこで僕らの最初の一発はおわり。これから僕らは戦力の温存戦が始まる。それがいつまでか? それはぬいぬいたち次第なのか、触媒を壊せば片付く未知数の戦いだった。
さっきまでこのホールの中央にあった、白い山が少しばかり炎に炙られ現在も燃えている。
いるが、その炎の中で幾つも白い骨達がゆったり肩から立ち上がるのが見える。
中にはケッケケと、笑っているものもいる。
「あれは、どこの肺から空気が出ているの!?」
僕が言っている間に、ミッシェルは土の塊を骸骨に叩き落とし粉砕する。
その勢いによって消されない様に、出来るだ復活させないように溶岩に火を汲めて最低限の魔力にしているが……。
数が多すぎてアンデッドを操る媒体をも燃やせているのかまったくわからない。もっと効率よく燃やす方法はないものか?
しかし骨の行動パターンが変わった。残った骨がすべて一箇所へと集まりだしたのだ。
「ぬいぬいの言っていた、一番オーソドックスなのが来た……。逃げろ――!!」
燃えない、崩れない強靭さを持ち。
集まって行動するという冒険者の習性を考慮して、速く重い1発で殺す。初見殺しみたいな技を仕掛けくる骸骨。
バア――アァ――ン!!
凄い音がした?! 振り返ると土煙が立ち、僕らの居た場所の壁が削れる道を少しふさぐ。
僕はウンディーネを抱えて、何とか逃げたって感じだ。
「主様、怖かった……」
そう言って僕の首に手を回す、ウンディーネの顔はうきうきワクワクしていた。
「ウンディーネ! しゃれこうべに魔力が集まっている部分を破壊して!」
「えっ……、うん、わかった」
彼女は僕の顔とデカ骸骨を見比べて、骸骨を忌々しげに見てから、ゆっくり僕の腕から降た。
そしてしゃれこうべを水の水圧を一点に集中させて、その媒体を一撃で貫き破壊した。
☆★☆★☆
ぬいぬい達はネクロマンサーを発見し、オリエラがその炎の宿る剣技で、ネクロマンサーが次々作る骨を蹴散らす。
その後ろで、ぬいぬいと、ルナが、それぞれ魔法を詠唱を開始する。
先に攻撃を放ったのは、ぬいぬい。
彼が「我らの敵を拘束せよ!茨の鎖」そう言うと今まで、魔法を詠唱しゆらゆらと一定の動きをしていた、ネクロマンサーの手首を鋼がグルーグルーと言うように締上げる。
そのまわりは黒いもや立ちこめ始めるが、その黒沼のようなもやから赤いバラが1つ、また1つと浮上しているかのように咲き誇り始める。
それもつかぬまで、骸骨の両腕は誰かに誰かが引っ張った様に前に引かれる。
その力はネクロマンサーはその膝を無様に地面に付かせる。
手を合わせ、前に出すうつぶせ姿は、神に祈る姿に似ていた。
そこで彼のこの世での懺悔は終わる。ガリバー冒険記のガリバーのようそのイバラの鋼は全身へと絡みつく。
ネクロマンサーは、惨めで無様だった。
その時、「浄化の王冠」と、祈る様な聖女のルナから放たれた魔法は、ネクロマンサーの頭のまわりを光の王冠のようまわる。
その王冠はその輪の形を小さくするとともに、ネクロマンサーの額にはまった。そう……思った時、ネクロマンサーは白い骨の破片となり砕けて、そう……少しずつ確実に砕けてしまった。
「あっぁ……」ルナは、その顔をその手で覆った。
「浄化されても人間に戻れるほどの、人間だった部分が無くなってしまっていたか……」
「なんでなのです?!、神に頂いた大切な身体なのにどうして!?」
聖女様はわかり兼ねるかもしれないが、ぬいぬいにはネクロマンサーに気持ちがわかる。と言うか、感じていた。
壁の向こうに、未知の魔法がいつもあるのは知っている。
けれど倫理、家族などの彼を踏み止まらせるものがあってただ見ているだけだ……。
しかしそんな時、魔が差す時がネクロマンサーには、あっただけかもしれない。
こうして少しの気まずさを残して、ギルドクエストは終了したのだった。
続く
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