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05 妙な静けさ

こんにちは。こんばんは、


この作品は、性的描写。不適切。不快な表現が多量に出てくると思われます。お読みになる方はご注意ください。

あと、ご容赦ください。


最後までお楽しみいただけたら、幸いです。

 翌朝から、リバーシブル・フィールドは自然発生した。

 これには、私以外の方々が驚いていた。というのも、リバーシブル・フィールドが連日で自然発生することは無いからだと言う。

 私の存在が、それを誘発している・・・という予想もされたけれど、急ぎ情報の収集を行うために迅速な行動を開始した。

 私のフィギュアを作っていた方々は、本来は戦闘能力が低いので戦闘には参加できないものの、情報を収集するスペシャリストチームだったそうで・・・。

 尋問室にイデスバリー戦士の能力を使って作ったカメラなどを紛れ込ませて私を隠し撮りしていたらしい。そして、私を3Dスキャンして色々な数値を割り出し、3Dプリンタでフィギュアを制作していたとか・・・。

 私の3サイズとか、ある程度まで計測できているそうで・・・いやいや、身体測定をしないと明確にはならないけれど、教えてもらった予測数値が・・・ぅぅぅ、前に学校で行った身体測定の数値に非常に近くて・・・科学技術の発達を恨めしく思う。

 ・・・あ! 話しが逸れてしまっていた!?

 そ、それはまた別のお話!ってことで、話を戻すとしてッ!

 その情報収集のスペシャリストチームが集めた情報から、今回のリバーシブル・フィールドが昨日のモノよりも発生範囲が広いという事が判明すると共に、なんと東京都の外から怪異が迫って生きている事も判明する。

 なんと、東京支社が担当する範囲外からやってきているとのこと。


「観測史上、初の事態だ」ということで、総力戦態勢が発令し、秘密結社メシアの全戦力が怪異迎撃に出ることとなる。

 また、大阪支社、九州支社、北海道支社へと応援を要請したことも告げられる。

 こうして、全員が慌ただしく動く中で、私には待機を命じられた。

「本来はまず、異世界の事。怪異の事。イデスバリー戦士としての基礎訓練など。実戦に出る段階ではないんだよ。そして昨日の今日だ。しっかりと休みなさい」

 という紅葉朱雀さんの説明を受けて・・・それはそうですよね・・・と納得しかできなかった。

 アレだけの情報量なのだから、本来はじっくりと教えてもらうべき事だし・・・。

「いいえ。今はそういう勉強などをしている余裕はないと思います。少しでも戦い方を身につけるために、実戦を経験させてください!」

 強く、お願いをしてみれば・・・やっぱり戦力になりそうな者を休ませておく余裕はないようで、イデスバリー・アリアネルさんの診察を受けて、十分に戦闘参加可能であることを判断してもらってから。という条件を得た。

 そうして、私はアリアネルさんに診察してもらう。

「体の方は、大丈夫だと思いますが・・・夢毒が心配ですね」

 理由を尋ねると、私は夢毒を受け過ぎていて、昨日の治療と薬だけではまだ毒が残っている状態なのだそう。

 今は、私の精神力と薬の効果で抑えているけれど、もしもまた同様の毒を受けたら、悪化する可能性もあるらしい。

 ・・・す、少なくとも公園に近づかなければ大丈夫なはず。

「公園に近づかなければ大丈夫。というのは間違いですよ。夢毒は浮遊霊や擬態霊も持っています。なにせ、液体系ではなく思念・・・いわば呪いの類ですからね」

 ・・・あ、あの時、浮遊霊に左腕を這われた時に感じたゾワゾワとした感覚は、おそらく呪いを私に打ち込もうとしていたモノで、ロンググローブがコレを防御していたのだと気づく。

 虫の大群みたいに思ったけど、毒を打ち込む行動だったんだ・・・。

「だ、大丈夫です! が、がんなります」

「声が震えていますよ・・・」

 しまった。不安で声が・・・ぅぅぅ。

「大丈夫っすよー。今度こそ俺が守ってあげるっすからねー」

 イデスバリー・リザドラルさんが、何とも言えないあっけらかんとした声で宣言するので、私はため息を吐いた。

「頼りになりません」

「えー。そこは大船に乗ったつもりで任せてくれーい」

「泥船の間違いですよね?」

「麻痺毒で固められるので、だーいじょーぶーッ!」

「私まで麻痺したらどうするんですか・・・」

「え? そりゃー・・・ねぇ?」

 私の胸を凝視しながら何考えているんですかね? ね?


「ふっふ・・・まぁ二人とも、すっかりと仲良しのようね」

 んな!?


「それだけ元気なら大丈夫でしょう。リザドラル君? 彼女の事をお願いしますよ? この状況ですからね。少しの実戦経験が今後を左右すると、私は思うのです」

「お任せくださいっすよ! 俺、がんばるっす!」

 ・・・むぅ・・・別に、その・・・ぅぅぅぅぅぅ。



「夢幻一刀流・斬撃術!」

 首を狙う技であるけれど、シャボン玉みたいな浮遊霊であればどこでも一緒なので、なぜか螺旋を描きながら三体同時の体当たりをしてくるソレらに、技を叩きこむ。

 呼吸を整え、視界を広く取り、常に周囲の情報を全身で拾うこと。

「戦いの基本は、情報の収集。俺の友達が言ってたんだけどね? 目で見ること。耳で聞くこと。鼻で嗅ぐこと。肌で掴むこと。そして、勘で感じること。これらを意識せずに出来るようになれば、未来予知にも準じる先読みを可能とする・・・てね? おれにゃー意味不明過ぎてできねっすわねー!」

 ・・・そういう話で『俺の友達が』という事は、自分の体験談ということが多いと思うのだけど?

 この人の場合、ホントに友達の話しをしているのだろうけれども・・・その人、間違いなく武術の達人では?

「ま、まずは自分の前世が遺してくれただろう知識と経験に働きかけるのが一番だねー」

 ・・・自分の前世が遺した知識と経験。

 戦いにおける自分が取るべき構え・・・呼吸法・・・足運びや筋肉の運動・・・それは、明確な記憶とは言えない知識の結びつき。

 一人、剣道の基礎を練習し続けた学生の背。

 何をきっかけに始めたのかも、私に分からない・・・剣の道。

 私が持つ刀は、間違いなく前世の私が目指した剣道の終着点・・・と、カッコよく考えてみるけれど、この剣のようなデザインの刀は考えると・・・実は中二病を患い続けていただけなのでは?と、不安でしかない。

 そもそも、剣の道云々の前に、どういう経緯でボディコン衣装がメインになるの!? 何があったの!?

「はいはい、集中しましょーねー」

 私が余計なことを考えて棒立ちしてしまったため、リザドラルさんが体当たりしてくる浮遊霊を代わりに倒してくれた。

「ご、ごめんなさい。ちょっと、余計な事を考えてしまいました・・・」

「あるあるー。知識の引き出しって言うのは、喪失している記憶を一部再現してくれることもあるらしいから、何かが見えたのなら・・・それはきっと、君にとって重要な幻影だろね」

 ・・・重要な幻影。

 剣道着に防具をしっかりと纏った学生の背・・・。

 

 ただひたすらに、うっすらと見えた幻影が続けた基礎訓練の動作を真似て、浮遊霊退治を続行する。少しずつ、少しずつ、私の動きを洗練させていく。

 そうしている内に、浮遊霊の姿が見えなくなった。

「あれ? もう終わり?」

 空を見上げても、浮遊霊の姿が見当たらない。リザドラルさんと共に倒していたから、全滅させ終えた?

 チラッと、リザドラルさんを見る。

 空を見上げて、目を細めている・・・その瞳には殺気が含まれており、何かを見ているように思えるけど?

 私が、そちらへと視線を向ける。

「なにか、あるんですか?」

「・・・んにゃー。ちょっと、怪異の動きが妙だなーって思ってさー」

 妙?


 どどどどどどどど。


 どこかで聞いたような地鳴りが響き、私はそちらへ顔を向ける。と、目の錯覚を疑いたくなるような、サイズ感を間違えた猫が、道路を駆けているのを見てしまう。

「おー。今日は猫の擬態霊っすかー?」

「・・・眼が痛くなるコラ動画になってますよ」

 周囲の建物と、猫のサイズが合っていないのが問題だと思うの。

 いくらなんでも雑コラ過ぎて、この動画をアップしたとしても、よくてジオラマを使った撮影と思われるだけだと思う。

「浮遊霊に続いて、今度は擬態霊を相手にすればいいんですか?」

「いんやー。アレは大丈夫だねー」

 リザドラルさんが言うと、猫の頭にビームが刺さって霧散していく。

 ・・・もしかしなくても、浮遊霊より弱いのでは?

「ま、アレは俺たちが相手するには早すぎるからねー」

「早すぎる?」

「そ、擬態霊はサイズがオカシイ。それはそう。仕組みは簡単で、浮遊霊の集合形態。とも言われているくらいには、浮遊霊から大して進化していないのであーる」

 ・・・あ、そういう怪異なんだ。

「浮遊霊もただ集まっただけの集合形態って言うのがあるんだけど、アレはそれに擬態能力を持たせたもので・・・大差ないらしい」

「それなら、浮遊霊と同レベルではありませんか?」

 私が、ふと疑問を口にしてみると・・・リザドラルさんはうんうん。と頷いた。

「擬態霊の初期は浮遊霊の集合形態とさほど変わらんのよ・・・だけど、擬態霊の真髄はまさに擬態能力にあるんだなー」

 擬態能力?

「言っとくけど、あんなコラ動画の動物みたいなサイズ感じゃないよ。もっとうまいんだ。サイズもそうだけど、本物と見分けがつかない」

「見分け・・・」

 お宝の鑑定みたいに、専門知識が無いと見分けがつかないほどの偽物と成れる。ってことかな?

「ま、リバーシブル・フィールド内では、色がブレていないモノがあれば、それが擬態霊だからすぐわかる。周囲をしっかりと見ることが大事やねー」

 なるほど、怪異だからハッキリクッキリとフィールド内で見えているなら、それは擬態霊の擬態という事になる。

 一応、私は周囲を見回してみた。

 確かに、どれもこれも色がブレているので擬態霊ではないと判断できる。

「ほんじゃ、今日は帰りましょー」

「はい」



 全員の帰還を確認して、今日の業務は終了となる。

 リバーシブル・フィールドも消失し、夜は静かに過ごせそうだ。と、皆が伸びなどをして社宅へと帰っていくようだ。

 外に自宅を持つ人はいないらしく、一応、外にも社宅はあるらしい。

 リバースデイを迎えて、イデスバリー戦士となった者は怪異に付け狙われる。

 けれど、狙われる目印となる『イデスバリー光』というエネルギー波の外部放出を抑制できるようになった昨今では、転生した者同士で結婚して外の社宅に入る人もいるらしい。

 ちょっと意外だったけど、ちゃんと子供などは作ることができるそうで、普通の家庭を築く人も居るのだそう。

 ・・・両親ともに表向き世界的大企業の社員で、その子供ともなれば、超エリート扱いでもおかしくないと思う。

 まだ『光』の抑制が出来ていない頃は、全員で一か所に集まり、交代で警備をしながら毎日のように怪異の襲撃に怯えていたのだそう。

 もちろん、うっかり妊娠などしてしまうと、怪異の大群に襲われた時に逃げられなかったりして、それはもう悲惨な死に方をした人も居たとか・・・。

 ・・・異世界人によるサポートの向上は、私たちの平穏な生活を確かに助けてくれているのだと思えた。


 そんな皆さんの平穏を崩しかねない私にも、秘密結社メシア内に専用部屋をいただくこととなりました。


「君の部屋は・・・他の者たちに比べると狭くなってしまっている。すまない」

 そう謝ってくる紅葉朱雀さんに案内されたのは、最初に連れてこられた尋問室のような白いパネルが敷き詰められた部屋だった。

 天井も、壁も、床も、白いパネルで覆われていて、トイレやシャワールームなどもしっかり覆われている。

 ・・・トイレとシャワー室が別になっていて良かった。

「君の身体から発生している『光』を抑えるには、尋問室の構造だと薄い事が分かってね。だいぶ突貫工事となってしまって申し訳なく思う」

 家具などの搬入はできていないそうで、病室などで使う折り畳み式ベッドを運び入れたので、それで寝ることとなる。

 私の身体から発生する『光』が部屋より漏れるのを防ぐために、パネルを三重構造にしていると説明された。というのも、パネル一枚だと継ぎ目から光が外へ漏れ出てしまうそうで、一層のパネルを敷き詰めたら、継ぎ目にパネルを貼り付けて、二層目を終えたら三層目もどうように継ぎ目に重ねていく。

 というような感じで光漏れを最小限にしているとのこと。

 ただ、扉や扉の縁はどうしてもパネルで塞げない隙間ができるので『光』が漏れ出るらしい。

 また、部屋の外は当然のように塞げていないため、夜はなるべく部屋から出ないように。と、お願いされた。

 ・・・とにかく、大人しく従おう。


 何もない静かな部屋には、空調などもある・・・まぁ、その・・・室内設置型のエアコンではるけど。少しでも光が漏れないようにする工夫が凝らしてある。ありがとうございます。

 特にやる事もない中、私は自分の姿を確認した。

「・・・そういえば、二日もお風呂に入ってないな」

 に、臭ってないよね?

 自分の体臭を気にして、ちょっと鼻を近づけ確認してみる・・・うーん。分からない。

 まぁ、シャワーを浴びればいいかな?

「砂埃でちょっと汚れてるしね・・・」

 シャワールームに入って、私はある事に気づいた。

「・・・変身って、どう解くんだろう?」

 う、うーん・・・誰かに連絡をして、聞いてみる?

 そう思い、シャワールームを出て室内に設置された電話を見た。

「使って・・・いいんだよね?」

 おそるおそる受話器を手に・・・できなかった・・・。

 ど、どこに繋がるのかな? ホテルとかだと受付に繋がるって何かで読んだことある気がする。

 朱雀さんとかお養父さんとかシェルさんとかに繋がるなら、それでいいとは思うけど、知らない人に繋がるかも?って思うと、どうにも手が震える。

 どうしよう・・・あ、でも別に変身を解かなくても大丈夫と言えば大丈夫だよね?

 シャワールームに再び入り、ここに設置されている姿鏡で自分の姿を確認する。どう見ても人間の私・・・と思ったけど、日本人の色をしていない。

「そういえば、変身してから今日まで自分の姿を確認した覚えがないや・・・」

 改めて自分の姿を見てみると、ボディコン衣装にマントという組み合わせに、どういう意匠が込められているのかが分からない。

 悪の女幹部。とか言われてしまえば、確かにその通りだなーって頷ける。

 マントを外して、洗濯籠に畳んで入れる・・・そして、マントを脱いだ姿を改めて確認する。


「・・・サキュバスさんが言っていたのって、この瞳のことか・・・蒼銀・・・珍しい色の瞳が仄かに光りを放っているような感じで、髪の毛とか衣装の色も、月夜のふんわりとした青みを帯びた夜闇色っていうのも分かる色だ・・・そして、この肌色・・・白雪の様って言ってたけど、本当に白雪色の肌になってる・・・何かの比喩だと思ってたのに・・・」


 でも、この白雪みたいな肌の色合いが、黒をキラキラと星空のように演出しているようにも思える。

 芸術作品・・・例えば『月夜の雪景色』を擬人化した。と言われれば、その通りな見た目をしている気がする。

「・・・もしかして、衣装だけじゃなくてこの私の色も含めた全部が『前世の集大成』ってことかな?」

 どうなんだろう?

 ・・・うん。考えてもしかたないよね。

「ふぅ・・・とにかく、シャワーを浴びちゃおう」

 それにしても、こういう服ってどう脱ぐんだろう?

 肌に張り付くような衣装だから、どこかにファスナーとか付いていると思うんだけど・・・えーっと、背中側が見えない・・・。

「あ、先にグローブとブーツを脱いじゃおう」

 ちょっと苦戦したけれど、脱ぐという意志を以て指を掛けると、スルッと脱げた。なるほど、念じればいいんだ。

 なら、こっちの方も―――。

≪こんばんはーッ! イデリバリー・リザドラルでーす!≫

 いでり? 宅配?・・・じゃなくて、リザドラルさん!?

 私は、突然の来客に急いでシャワールームを出て、インターホンの話すボタンを押す。画面に映るのは、見慣れたトカゲ怪人さんの姿だった。

「はい!? どうかしたんですか?」

≪や! こんばんはー。イデリバリ―・リザドラルでーす≫

「い、デリバリー? なんですか?」

≪ご飯持ってきた! たーべよーぜーぃ♪≫

 なんだ、そっか。

 ・・・ふぅ・・・ふふ。

 私は、そういえばご飯もまだ食べていないことを思い出して、ちょっとだけ空腹を思い出す。

 なので、部屋の扉に掛かっている鍵を解除して、リザドラルさんを部屋に入れた。

「どうぞ。なにもないですけど」

「どもども! おじゃましまー・・・おあ!?」

 私が何もない部屋へと招き入れて、リザドラルさんが何やら大きな桶みたいなモノを掲げながら、騒がしく入ってくる。

 そうして、すぐに変な声を出すと・・・私の足元に何かが落ちた。

「お、おお・・・眼福・・・あ、ごめん。俺、あっち向いてますわーね」

 私の身体に纏われていた服が落ちていて・・・下着一枚姿を、彼に見られてしまった。


 

「あ、シャワー前だったんすね? そりゃタイミング悪かったーね」

 レジャー用の折り畳みテーブルを、調達して運んでくれたリザドラルさんが、コレを部屋の中央に設置して持ってきた桶みたいなモノを置きつつ、先ほどの話をする。

 私は、とりあえず脱げた服とシャワー室に脱いでいた服を着直して、恥ずかしさにリザドラルさんを見ることも出来ずに部屋の端っこに蹲っている。

「変身時の服って言うのは、念じることで脱着も可能なんよ」

 リザドラルさんが、自分の着ている服・・・上半身の分をバサッと脱いで、部屋の隅へと投げた。そして、指をクイッと手招きするように動かすと・・・。

 部屋の隅に落ちた服がバサッと飛び上がって、リザドラルさんの身体と合体する!

「・・・す、すごい」

「服だけじゃないよ? 武器もそう。手に持つタイプは戦闘中に落としちゃったりするから、こういう感じで念じると引き寄せることができるんよ」

 お、お、おーッ!

 それはすごいじゃないですか! フォースみたいな事ができるということでは? やってみたいです!

 はッ!?

 今、ちょっと興奮した? なんだか、自然と宇宙戦争を題材にした古い映画の情報が頭に雪崩れ込んできて・・・あ、前世知識!? そっか、あの映画大好きだったんだ。

「ま、そういうわけで、シャワールームとかで脱ぐって念じている途中だったなら、その影響でバサッと落ちたんやろねー」

 途端に、私の顔が真っ赤になったと分かるほど火照った。

 うう・・・見られてしまうなんて・・・ぅぅ。

「あー、ちなみに・・・身体の汚れとか服の汚れとか、その辺が気になるんなら『汗を流す』『汚れを落とす』などを念じながら『イデスバリー』って、変身時と同じ言葉を唱えれば、綺麗に落ちるで・・・お風呂や洗濯したあとの綺麗な自分をイメージすると、楽かもー」

 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

「そうなんですか?」

「そッ♪」

「そういう事はもっと早く教えてくださいよ!!」

「ご、ごめ・・・」

 うー。それなら、こんなハプニングは起きなかったはずなのにぃ・・・。


「ま、ま、気持ちを切り替えてこ! 夕飯まだでしょー?」

 手振り身振りで私の気を引こうとしてくれるリザドラルさんを見ることはできないが、お腹が空いたような気がするのは確かなこと。

 言われてみれば、まだ食べていないのも確か。

「何を持って来たんですか?」

 この桶みたいなモノからするに、ピザかな?

「今日はナイトメアちゃんの引っ越し祝いということで!」

「まだ引っ越すと決まってはいませんよ?」

 桶みたいなモノを包む風呂敷を解こうとしたところで、私がツッコミを入れる気分で言う。

「そーんなん? んー・・・じゃ、入社祝いってことで!」

 ・・・うん。まぁ、それなら分かります。

「わざわざ、ありがとうございます」

 そうお礼を述べると、リザドラルさんは桶を包む風呂敷を器用に解いて、中身を公開した。


「じゃじゃーん! 秘密結社メシア日本・東京支社、食堂のボス! イデスバリー・フードプロセッサーさん渾身の超特上寿司セットぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「超特上寿司セットッ!!!!!!??????」


 その桶は、光り輝いて見えた。

 その桶は、神々しいオーラを放っているように見えた。

 その桶は、大事な大事な宝石のようなお寿司を、優しく、おいしく、健やかに包み込んでいる慈愛を感じられた。

 

 さらに、このお寿司にはコレ!と言わんばかりの高級茶まで取り出し、私の落ち込んだ気分がどこ吹く風に飛ばされていくのを感じる間もなく消えて行く。

 なんという豪華絢爛!

 ・・・あ、なんだか自分でもテンション上がり過ぎておかしくなっている。ううん。今日はもうおかしくなってしまおう。

「あとで、食堂主のイデスバリー・フードプロセッサーさんにお礼を言いに行ってね?」

「はい!! 絶対に行きます!!」

 

 こうして、私はお寿司をいただいた。

 地元のお寿司屋さんも、確かに美味しいモノを提供しているのは分かる。

 だけど、このお寿司には歴史を感じられた・・・食堂のボス・・・まだお会いしたことは無いけど、間違いなく人生の全てを料理に捧げている職人さんだ。

 私は、人生初となる東京のお寿司に、ただ感動した。


「んーッ!! おいしいーッ!!!」




次回は、敵。を登場させる予定です。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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