20 戦っている場合じゃない
こんにちは。こんばんは。
早いモノで、この作品も20話目になりました。
性的描写を書く練習目的で始めたお話でしたが・・・ストーリーや設定を練り直してプロローグから書き直そうか?と考えています。
さて、今回のお話は前回の続きとなっております。
最後まで、お楽しみいただけたら幸いです。
「ええーッ!? これだけ飛び込んでいるのにッ! 私より年上がいないって、どゆことッ!?」
マジカルンナさんが、涙目で嘆いている・・・。
秘密結社メシア日本・東京支社の屋内プール施設に突如として出現した怪異。
それは、一見すると水の塊で伝説の生物『ツチノコ』を模した形をしている怪獣怪異・・・と思われる。
っと、言うのも・・・従来の怪獣怪異とはいろいろと様子が異なっているとのことで、先輩たちはこれまでに見たことのないタイプに困惑気味。
そんな私たちは今、その怪獣怪異?の中に居た。
内部は『水』で満たされており、まるで深海のような暗く冷たい空間となっているため、突入した先輩方は環境別戦闘衣装『潜水服』へと着替えている。
だけど、私はまだ『潜水服』の確認が済んでいないため、リザドラルさんの緊急防御技『麻痺毒バリア・ボール』という技で守られている状況となっている。
・・・その、リザドラルさんに抱きしめられている状態で・・・私もまたしがみ付くようにしているので、ちょっとどころでなく・・・とても恥ずかしい気持ちでいます。
そんな麻痺毒バリア・ボールの上から、強化バフをマジカルンナさんより掛けてもらっていることで、バリア強度が増強され頑丈になって水中を漂うことができた。
普通だと麻痺毒が水に溶けてしまうらしいので、強化バフで包んでもらうことで維持できているとのこと。
この強化バフに包まれた麻痺毒バリア・ボールが目印となり、先に突入した先輩方と後から入って来た先輩方が合流してくれて、今は周囲で周辺を警戒してくれていた。
こうして人数が集まったことで、まず行ったのが班分け。
この場の最年長がマジカルンナさんということで、班を三つに分けることを決める。
このために、集まっている先輩方の中から二人の先輩が選ばれた・・・マジカルンナさんの次に年齢の高い方だ。
一人は『イデスバリー・マナイタート』さん。
潜水服はまさに潜水艦に手足が生えたような姿をしているロボットタイプの戦士で、武器は・・・その、どう見てもまな板です。どうやら、攻守で活用できる『盾』とのこと。
もう一人は『イデスバリー・ブレイデーバ』さん。
潜水服は・・・おそらく着ていない肌艶をしており、カジキマグロに近い魚人系の戦士。魚人三銃士はまさに魚が人の形をしている。という印象だったけれど、ブレイデーバさんは人間が魚っぽくなっている感じの姿だった。武器は『出刃包丁』の大剣。
どちらも30代の男性で、表側の会社では食品開発部門に所属しているとのこと・
マジカルンナ班。マナイタート班。ブレイデーバ班。の三班に分かれる事で、この中から外へ出た際の役割分担を話しあって決めていた。
そういう経緯から、最初はみんな周辺警戒に緊張していたものの・・・特にこれといった危険が起こらない事に雑談を始めるようになる。
緊張は長続きしないから・・・とは、よく聞くけれど・・・。
「リザドラルーん。ナイトメアちゃーん。どっちも大丈夫かい?」
「はい! 今のところは・・・」
「俺も、まだ大丈夫っす」
私は即答し、リザドラルさんも少し掠れ気味の声で答える。
「そ? バリア内で息苦しくなったら言うんだよ? ここじゃ、空気は有限だからね」
・・・そっか! バリア内の空気が私たちの生命線・・・切れてしまったら窒息してしまう。
「息ができないようならバリアを解いて空気の玉を作るから、それを酸素ボンベ代わりにするよ。防御面では問題あるけど、窒息するよりはいいからね」
なるほど。
今、私が麻痺毒バリア・ボールで包まれているのは、この中に居るかもしれない脅威から守るため。その脅威が確認されないとはいえ、未だに潜んでいるだけの可能性もあるから不用意に解くことはできない。
だけど、バリア内の空気が薄まって息ができないようなら、バリアの意味も無いので・・・ということなんだ。
「ま。君はまだ退院したてで、基礎訓練もまだだからね。しっかりと私らが守ってみせるから! そこは安心してねーッ!」
・・・うん。
「はい! おねがいします」
・・・。
・・・・・・私、不安そうな顔をしていたのかな?
・・・このままは、良くないな。
「あの! マジカルンナさん!!」
「はい! 何かなッ!?」
私は、そして勢いで尋ねてしまった。
「変身して、魔法少女になるのはどういう感覚ですかッ!? 特に性別が変わった感覚というのは、どういう感じなのでしょうか!?」
「あぁー・・・うん。みんな最初は勘違いするんだけどねー? 年齢は確かに9歳ぐらいになるわけだけど・・・性別は、変わっていないんだよねー」
・・・えッ!?
私は、改めてマジカルンナさんを見る。
今は衣装チェンジで『潜水服』姿であるけれど、標準衣装は『ゴスロリ』と呼ばれる格好をしていた上に、とても可愛らしい顔立ちをしていた。
それは、どう見ても女の子にしか見えなかったのだけれど・・・。
「「「「「「よく見るんだッ! こんなにカワイイ子が、女の子のわけないだろッ!!」」」」」」
えッ!?
とんでもない言葉に「ギョッ」としていると、マジカルンナさんが照れくさいと言わんばかりの顔となって・・・。
「よせやーい。てれる~」
・・・少し気恥ずかしそうな様子で、ニコッとしている。カワイイ。
そんな感じで男性方からの力強く重なる言葉に、女性方からも続けて声が上がった。
「「「「「「なんせ! 男の娘だからねッ!!」」」」」」
?????
ん? 男の子・・・なんですよね?
「あ、子供の『子』じゃなくて、『娘』と書いて『男の娘』と読む方ねッ」
そっち!? 確かに聞いた事あります! 言われるまで覚えていませんでしたがッ!
「いや~。私も初変身時は焦ってねー・・・急いで股間を確認したんだよねー。大丈夫『ある』よッ!」
力強い笑顔とグッドサインで答えを貰い・・・私は、勢いとはいえ恥ずかしくて顔が真っ赤になったと思う。ちょっと、男性の・・・その・・・想像を・・・してしまったので。
「ごめんなさい。変なことを聞いてしまいました」
「いやいやーッ! よく尋ねられることだからねー。って、朱雀先輩にもヒソヒソと訊かれたぐらいだしー」
支社長さんもッ!?
そ、そっかー・・・私だけじゃない。なんだか、ホッとしました。
ここから、皆さんの初変身時の話しが始まり、盛り上がる。
こんな状況下でも、明るく振舞っている皆さんがとても力強く感じられて、私は自然と笑顔を浮かべることが出来ていた。
キラッ
「ん!? 今、なにか光ったぞッ!」
誰かの一言で、談笑していた全員が一斉に戦士の顔へ戻り、武器を手にして周囲へと向き直りつつ殺気を放ち始めた。
その変わりように、私はただ息を呑むことしかできない。
私にも、できるようになるかな・・・。
キラッ
「光った! あそこだッ!!」
確かに・・・一回目よりもハッキリと分かるほどの瞬きが、私にも確認できた。
「全員、武器を構えッ! 敵の攻撃に備える! 何が起きても気分はヘッチャラでよろしくーッ!!」
「「「「「「おぉおーッ!!!」」」」」」
攻撃姿勢を取る方。
防御姿勢を取る方。
それぞれが得意とする戦闘姿勢で、敵の次なる動きに備える。
ごごん・・・んごごごごごごごごおおおおおおおおおおおああああああああああああ
何かが震動して響く音。
・・・そこから周囲に水流が生じて、次第に勢いを増していく。
「は? なんだ、これ!?」
水流は、次第に渦を描くように動きを変えて・・・流れに乗せたモノを強引に押し流していく。
「こ、これは!」
「くそッ! ふざけるなよッ!!」
これはまるで・・・水洗トイレで水を流した時のような・・・・。
見て分かるほどの強い流れに、先輩方が怒りをあらわにしながらもバリア・ボールに張り付いて共に流されていく。
そうして、視界は光でいっぱいになった。
〇
どっしゃーん
まるでバケツの水をひっくり返したような音が響くと、直後に鉄球がコンクリートの上に落ちたような鈍い音を響かせて、ゴロゴロと転がる音を鳴らす。
それは、麻痺毒バリア・ボールが床に落ちて、ゴロゴロと転がっている音であり・・・中にいる私とリザドラルさんが共に回転して天地逆転を繰り返している状態になる。
目が回りました。
「見ろッ! 『光』だッ!」
「す、すげぇえ!? コレが噂の『光』かよッ!」
「眩しいはずなのにッ! 目が離せないッ!!」
「コレだッ! この『光』がッ!!」
次々に聞こえてくる興奮した男性たちの声。
それは、共に居てくれた先輩方とは違い・・・背筋に悪寒が走るぐらい嫌な感情が含まれた・・・興奮した声音だった。
「早いモノ勝ちだッ!」
「悪く思うなッ!」
「あの『光』は俺が貰う!」
「ふざけんな!」
「俺のだッ! 触るなッ!!」
興奮した声は、怒声に変わり・・・とても攻撃的な足音が響き始めたことで、私はそちらへと顔を向ける。
バリア越しではあるけれど、近づいて来る男達は目を血走らせていて、正気を失っているようにも見えた。
「そうはさせないんだなーッ!!」
マジカルンナさんの声と共に、射撃による攻撃が一斉に放たれると、まっすぐ男達へ飛んでいって爆発した。
「「「「「「ぎゃああああああああああッ」」」」」」
私を一番に得ようという競争状態にあったことで、彼らは攻撃を避けようともせずに正面から受けて吹っ飛んでいく・・・けれど、先ほどまでの鬼気迫る雰囲気は消えていた。
「クソッ! どうなってんだ!?」
「なんか余計なのがいっぱいいるじゃねぇか!!」
「あの『光』が眩し過ぎて上手く見えてなかったけど、結構いるぞッ!」
「何やってんだよッ! 敵をアジトに連れ込んだようなもんじゃねぇか!」
敵である男達は、次々に一人へと文句を叫び始める。
その様子から、私以外のイデスバリー戦士が一緒に来るとは思っていなかったようだ。
・・・アレだけド派手に襲撃しておいて、考慮していない方が問題ある気がするんだけども。
「仕方ねぇだろ! ミズノコは、吸引中は視界が悪くなって吸い込んでいるモノとかを確認し辛くなるんだ! その上、あの『光』が眩しいから他の連中なんざ見えるかよッ!」
と、反論すると・・・それまで文句を怒鳴っていた者たちが押し黙る。
「みんな落ち着け! ニャランさんが言っていた通り、俺らが『光』を直で見たら、理性を失って襲い掛かるから気をしっかり持て。と注意されていただろ!」
・・・私を見たら、理性を失う。ってどういうことなの?
「それはそうだけどよ・・・」
「マジで理性が飛んでたわ・・・」
「事前に注意されてても、どうしようもなかったぞ」
「つか、こうして冷静に見てみれば、光の中に美女が居るぞ」
「情報通り、輪郭線だけど美女だな・・・」
「ところでよ・・・あの体勢って、誰かと抱き合ってんじゃね?」
・・・。
・・・・・・。
・・・。
「「「「「「なにエッチなことしてんだよッ!! 羨ましいぞッ!!!」」」」」」
「エッチなこととかしてませんからッ!!」
リザドラルさんに抱き寄せられて、麻痺毒バリア・ボールを展開してもらい・・・何かの拍子に投げ出されないようにしがみ付いている状態ではありますが・・・。
断じて、エッチな行為ではないッ!という強い意志を込めて、私は否定の言葉を叫んだ。
「悪いんだけどさー? 君たち、人間憑依霊であってるー?」
マジカルンナさんが不機嫌そうな笑顔で確認を取ると、敵の中から一人が前に出た。
「そうだ! 俺たちはおまえらが言うところの『人間憑依霊』さ! それがどうかしたか?」
ニヤリ。と笑みを浮かべて見せるものの、その男性は後ろに居た人に殴られた。
「なにを俺たちの代表みたいな面して言ってんだお前はッ!」
「そうだぞッ! 先輩を差し置いてリーダー面すんなっ!」
「テメェ! 俺より雑魚のくせに威張るなよな!」
「俺がナビしてやらなかったら、秘密結社内部に侵入すらできなかっただろうが!」
「だいたい! ウイスさんはどこ行ったんだよ!?」
「そういや、ウイスさんどこだ?」
「あー、昼飯買って来た後に、ゲーセン行く。って出て行ったぞ」
「マジか!?」
「なら、ゲーセンで菓子でも取りに行ったんじゃね?」
「ウイスさん、菓子取り名人だもんな」
「金になりそうな人形はまるで取れないのになッ!」
「「「「「「わっはっはっはっはっはっは」」」」」」
・・・こうしていると、敵と相対しているとは思えなくなってくる。
ただ、リーダー不在ということは統率が取れていないという事・・・そこにこの状況を打破する隙があるはず。
「マジカルンナさん。攻撃しますか?」
「ちょいまちー。どうにも嫌な感じがする・・・目の前の連中じゃなくて、この工場っぽい施設の外ね」
マナイタートさんの提案に待ったを掛けるマジカルンナさんは、そして索敵能力を持つ先輩へと指示を出す。
「索敵は出来てる?」
「はい。ここが東京都との県境にある廃工場ということまでは分かりましたが、特に隠れている敵が居る様子はありません」
「隠れているんじゃなくて、迫っている気がするんだよね・・・とにかく、ここから外へ出ることを優先したい。連中は無視だよ」
「分かりました」
私たちが取る次の行動も決まり、全員が脱出口である工場の入り口を確認する。
そして、マジカルンナさんがハンドサインを出して、全員でゆっくりと移動を始めた・・・その時だった。
「おまえらーッ!! 何をしたんだよッ!!?」
唐突に響く声。
それが、この廃工場と思われる入口からであり、そこには新たな人影が立っていたことで、脱出を図っていた全員が足踏みした。
新たに現れた人影・・・。
その人物は、一言で『チャラい感じ』の男性だった。
どういうわけか・・・大きなビニール袋にはお菓子の箱がビッシリと詰まっていて、それを両手いっぱいに提げている。
・・・もしかして、この人物が『ウイス』というのだろうか?
「あッ! ウイスさん!!」
「お帰りなさい! ウイスさん!!」
「見ろ。スゲー菓子の量だ」
「また大漁だったみたいだな。ゲーセンは涙目か?」
「相変わらずだよな・・・金になりそうな景品は一個も取れないのに」
「だなッ」
「お前ら! うるさいんだよ!!」
どうやら、あの男性が『ウイス』で合っているらしい。
苛立たし気な様子で、出入り口から中へと入り彼らへ合流するウイスは、そしてお菓子を詰めた袋を押し付けていた。
「俺は、おまえらに、何をしていたんだ?って聞いてんの!」
「何って・・・ウイスさんがマツドさんから依頼されたっていう仕事を、成功させたんですよ?」
この時、ウイスという人物の顔から表情が抜けて、なんとなくではあるけれど・・・話の内容を覚えていない様子で固まっている。
「アレっすよ。アレ」
「ほら、秘密結社メシアから『光』を奪取するっていう、アレ」
「ミズノコを使って連れ出すっていう、アレ」
「・・・アレか・・・・・・え? マジで!?」
「「「「「「マジでッ」」」」」」
と、全員が私を指差したことで、ウイスという男も指が示す方を見て・・・目を血走らせた。
「光ッ!!!!」
それはもう、すごい形相でこちらへと飛び掛かろうとしたものの、周囲に居た仲間たちに取り押さえられて防がれる。
「お、落ち着いてください!」
「ニャランさんが言った通り、理性が飛ぶんですから!」
「俺らも飛んだけど、ウイスさんでも飛ぶと分かって、一安心だぜ」
「おまえらッ!! あの『光』は俺のモノだ!! 横取りは許さねぇえ!!」
・・・は? 誰が、誰の『モノ』ですか?
「何をやっているんですかッ!? ウイスさん!! 怪獣怪異が迫って来ているんですよッ!!?」
続けざまに、新たな人影が現れて・・・。
その新たな人物は、先の『ウイス』と比べると、優男。という感じの学生ぐらい?
先のウイスと同様で、ビニール袋にお菓子を積めて抱えている・・・本当にゲーセン帰りって感じがする。
「みんな逃げろ!! 出現した『光』に眼が眩んで、怪獣怪異たちが正気を失っている! ここへ向けて迫っているんだッ! マツドさんの狙いは、コレだったんだよッ!!」
と、叫ぶと・・・敵一同が互いを見合って、顔を真っ青にした。
「や、やべーッ!!」
「逃げろ!」
「こんなことしてる場合じゃないぞッ!!」
「急げ急げッ!!」
「荷物は捨てていけ!!」
「くっそーッ!! あのマッドぉーッ!!」
まるで怪獣映画の一般人が逃げ惑うシーンのように、彼らは私たちが目に映らなくなるほどの慌てふためきようで動き出し、工場から飛び出して行く。
その様子を、私たちは唖然とした気持ちで見送ることしかできなかった。
「あなた方も逃げろッ! 邪魔はしない!! 先日の『光』強奪作戦で集まっていた怪獣怪異は、あの後も東京都との県境をウロウロとしていたから、今回の『光』で暴走しているんだ! このままだと『ダンジョン・フィールド』が展開されるッ!! 急いで逃げろよッ!!」
そうして、その優男さんも逃げ去っていった。
とはいえ、急いでいるというのに、丁寧な状況説明を入れて私たちに逃げるよう言ってくれる。
・・・なんだか、敵というのがなんなのか分からなくなってくる。
「って、俺の見せ場ッ!! なんで全部奪っていくんだよ!?」
残っているのは、ウイスという男性ただ一人。
泣きっ面になっているけれど、彼もまた私たちには目もくれずに、工場内の隅へ駆けると・・・私たちを襲った怪異を抱きかかえてて出口へと走る。
・・・というか、あのツチノコみたいな怪異・・・なんだか小さくなってる?
「とにかく、あんたらも逃げなッ!」
それだけ言って、出口まで駆けた時・・・その手に持っていた怪異が腕の中から飛び降りる。
「ぅえ!? どうしたミズノコ!!」
み、ミズノコ!?
突然の行動に足を止めたウイスだけれど、ミズノコは地面に着地すると再び飛び上がった。
それは、ウイスの身長を超える大ジャンプで・・・頭上へと跳び上がって、その大口を開いた。
「は?」
とても、信じられない光景を目の当たりにする。
ミズノコと呼ばれた怪異が、そしてウイスという男性を頭から食らいついて呑み込んでしまった。
私たちは、その異様な光景に息を呑む。
ずずずずずずずずずぉぉぉおおおおごごごごごごごごごごごごごごッ
地鳴りのような震動は、そして地震のような揺れを発生させて工場を大きく揺らし、工場出入口へと駆けたマナイタートさん達が外を見て驚愕する。
「連中の言っていた事は本当です!! 多数の怪獣怪異が! ここへ迫って来ています!!」
この報告を受けて、マジカルンナさんが叫んだ。
「総員! 工場より脱出ッ!! 逃げろーッ!!」
マジカルンナさんの言葉で、全員が工場から飛び出し・・・しかし、安全確保のために周囲へと武器を構えて警戒を怠らない。
一方で、バリア・ボールの解除をしている間がない私たちは、マジカルンナさんの魔法で網ビームを使って牽引してもらうことに。
潜水服のままだけれど、背中と足から火が噴射されて私とリザドラルさんを麻痺毒バリア・ボールごと引っ張ってくれる。
サバイタルさん。カツオブシさん。マグロードさん。ラナタスカさん。と四人が工場から飛び出して、周囲に敵の待ち伏せが無い事を大急ぎで確認しつつハンドサインを送ってくれる。
急ぐ気持ちをそのままに、マジカルンナさんが私たちを牽引して工場を飛び出した。
直後、工場の屋根を砕きながら多種多様な怪獣怪異が頭を突っ込んでくる。
その勢いで、互いの頭をぶつけて工場内にギュウギュウ詰めの状態となり、苦しそうな鳴き声が響いた。
瞬間。
吐き気を催すほどの圧が、同時に重なって発生すると・・・それは、ウィアード・フィールドが多数の怪獣怪異によって同時に展開された事を意味した。
世界は、一転する。
〇
気を失っていたわけじゃない。
意識はずっと保たれていて・・・だけど、ふと周囲を見回せば・・・そこは別世界と言えるような場所だった。
「・・・え?」
空は赤黒く・・・月は真っ白に染まり、星はまるで血涙のように空から地上へと降り注ぐ。
東京?なのかどうかは定かではないけれど・・・紛れもなく、ここは別世界のような場所だった。
「あぁ・・・これは、ダメなやつやんなぁ」
リザドラルさんが、顔を真っ青にしながら周囲を見回して・・・おもわず。という様子で声を出して困った顔になる。
「ここは、ダメな感じの場所なのでしょうか?」
「え? あ、あー・・・ごめんなー。今のは聞かんかったことにしてもろてー」
「いえ! ここは、ダメな感じの場所なのでしょうか!?」
「・・・そやね。ここは、過去に確認された数あるダンジョン・フィールドの中でもガチで危険な怨霊領域・・・その特徴が、あの赤黒い空なんよ」
再び空を見上げる。
確かに、おどろおどろしい雰囲気の赤黒い空は・・・周囲に見える建物を不気味に演出している。
どれもこれもが四角い商業施設をしているせいか・・・まるで街並みが墓地のように墓石が並んでいると錯覚してしまう。
・・・いや、それよりも。
「ここは、どこかの街なのでしょうか?」
「さぁ? どこかしらをモデルにしているかもだけど、街並みだけではわからんねー」
やっぱり、周囲を見回すだけじゃ分かりませんよね。
「っと、悪いんだけど・・・ちょっと俺の腰にあるポーチから飲料水と食料を出して欲しいんよ」
「え? あ、はい」
私は、言われた通りにリザドラルさんの腰へ手を伸ばすけれど・・・抱きついたままでは無理だったので、リザドラルさんから離れることにした。
そうして、バリア・ボールの上に降り立つと・・・バリアが砕ける。
「あ! バリアが!!」
「ええんよ。このフィールドに呑まれた時の衝撃などから俺らを守ってくれたから、役目はすでに終えてたんよ」
あ、そうだったんだ・・・。
とにかく、ポーチから飲料水と食料を・・・。
「リザドラルさんも、そういうモノを持っていたんですか?」
言われた通りにポーチから飲み物と食べ物を取り出し、干乾びているリザドラルさんにまずは飲料水から飲ませて上げる。
「んが。んが。ぶぅん・・・うん。マジカルンナさんは個人的に持っていた熱中症対策のドリンクやろけども、俺がポーチに入れてるんは、会社支給のエネルギーチャージ食品なんよ」
なにそれッ!?
「基礎訓練を終えたら、正式に支給される物で・・・実戦参加する上では必需品みたいなもんやんね」
「私が貰っていないのは、基礎訓練を終えていないからですか・・・」
「せやね。あと、退院したばかりだから。っていうのもあるかも? 結局、渡すタイミングが無いまま、こんな事態になったわけだし」
「それも・・・そうですね」
見る見る内に、干乾びていたリザドラルさんの身体は回復していく。
・・・凄い効果!
「いやはや。異世界技術が盛り込まれたエネルギーチャージ食品の回復力は半端ないわー」
「異世界技術!? どんな技術が!」
「いや、それは俺もわかんね」
「ですか・・・」
なんとなく、イデスバリー・フードプロセッサーさんが開発に関わっているように思える。
「あいたたたた・・・あー。みんなー・・・ぶじぃ?」
その声は、マジカルンナさん!
声が聞こえた方へと振り返ってみると、そこには仰向けで倒れているマジカルンナさんが居て、私は急いで駆け寄った。
私たちが居る場所よりも、少し遠い場所に倒れていたので・・・この赤黒い空の暗さもあって気づけなかった。ごめんなさい。
「マジカルンナさん! 大丈夫ですか!?」
「お・・・おー・・・ウィアード・フィールドに当てられて・・・気持ち悪い」
顔が真っ青なマジカルンナさんを、とりあえずは負んぶする。
そして、リザドラルさんの元へ戻ろうと一歩踏み出した時・・・リザドラルさんが居る地点よりも奥に・・・それはあった。
『ようこそ! 霊園地商店街へ!』
商店街の入り口となるアーチ。
そこに掲げられている看板に記された来客歓迎の言葉・・・。
このアーチが、神社などで見る鳥居そのものだったことで、否が応でも『異様』を実感してしまう。
・・・。
・・・・・・。
・・・でも。
なんで、商店街?
次回は、怨霊との戦い。を予定しています。
ちなみに、諸々練り直したお話は『イデスバリー・ナイトメア~○○○○○○~』的なタイトルで別作品として出すつもりです。
・・・まだ練り直している段階なので、いつになるかは分かりませんが、各小説大賞などにも応募していきたいです。
一応、この作品でも応募しますが・・・。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




