19 よかった。一人じゃなくて・・・
こんにちは。こんばんは。
この作品は、性的描写。不適切。不快な表現が多量に出てくると思われますので、お読みになる方はご注意ください。
あと、ご容赦ください。
最後までお楽しみいただけたら、幸いです。
「夢幻一刀流・斬撃術!」
アスレチック・プールでも、イデスバリー戦士として変身している時の訓練プールの一つに、忍者アスレチックプールというエリアがあり、そのエリア内にあるプールの一つに、水上要塞に侵入して情報を持ち帰る潜入コースと、情報を得たので逃げるコースというステージがある。
私は、情報を得たので逃げるコースで、軽めの運動が出来るルートを選択して挑戦していた。
夢幻一刀流で叩き落とすのは、スパイの逃走を阻止するために放たれた矢。
スタートからしばらくはオモチャの矢が飛んで来るが、ゴールに近づくと鉄砲などの弾丸や大砲などの砲弾を想定した各種ボールが飛んでくる。
何度目かの挑戦で順調に攻略を進めていた私であるけれど、ゴールが見え始めた頃に出てくる足場が途切れ途切れに続いている箇所で、足場を飛び越えつつ、襲い来る大砲の砲弾を叩き切って着地した。
と、着地先の足場にヌルッとした液体が滲み出ており、これに脚を滑らせて倒れた私は、水の中へひっくり返りながら落ちた。
「ぶは・・・はー。はー」
近くの足場側面にある取っ手を掴み、身体を引っ張り起こす・・・何気に、このプールの水深は10mあるので、泳ぎ慣れていないと溺れてしまう。
「大丈夫?」
リザドラルさんが、頭を水面に出した姿で私に近づいて来る・・・それだけ見ると、ワニが迫ってきているように見えて、ちょっと怖いです。
「だ、大丈夫です・・・また足を滑らせてしまいました・・・」
「そういう罠やからねー」
これにて逃走失敗。ということで、私はゴールまでリザドラルさんに手を引かれて移動する。
ゴールには挑戦者の結果報告書が出力されるので、ここで結果報告を受け取ることで挑戦終了。
『注意力が足りていません。頑張りましょう』
・・・うーん。
報告書には、失敗時の写真も添付されていて・・・足を滑らせて仰向けに転倒している私の姿がプリントアウトされている。
恥ずかしい・・・。
勢い余って、スッテンコロリン。というのは、こういう事を表すのかも?と思う。
「なかなかサービス精神旺盛な写真やねー」
「ちょ! 覗き込まないでくださいッ」
私が転んでいる瞬間の写真を覗き見られて、反射的に写真を胸に押し当てて見られないよう隠す。そうして、不機嫌ということを示すためにリザドラルさんを睨む。
報告書を受け取って、ゴールから外へ出るのだけど・・・このプールの周囲に集まっている方々は、次の挑戦者ということで入場する様子がない。
「私の挑戦は終わったのに、どうして誰も入らないのでしょう?」
「・・・ま、君の挑戦する様子を見に来ただけやろね」
私の挑戦なんて、見ても面白くないでしょうに・・・皆さん、余裕で攻略できるぐらいには鍛錬を積んでいるのでしょうし。
「今、大注目の大型新人が頑張っている姿を応援したいんよー」
「・・・本当に?」
疑わしい発言に対し、私は責めるようにリザドラルさんを再び睨む。と、目を泳がせながらスライドするように私から離れようとした。
「なんで逃げるんですか!」
「いやぁー」
わざとらしい誤魔化し方をするので、通常時と服装に変化が無い水着の上着を掴んで逃走を阻止する。
そうして、今、このプールに集まっている先輩方々が何を目的にしているのか?を問いただす。
「あ、いたいた。やっぱり人が集まっている場所に居たな」
「そうね。見つかりやすいけれど・・・まぁ、それはそれとして、神鳥谷さん」
「おー! 二人とも、ありがとねーッ!」
ドラゴニッカーさんとドラグナーレさんの声が聞こえたことで、私はリザドラルさんの服から手を放して振り返る。
リザドラルさんも同様で、私と同じく立ち止まって振り返っていた。
と、ドラゴンな二人の後ろから、40代ぐらいの男性が笑顔で二人にお礼を述べると、私たちに向かって小走りで近寄ってくる。
白のYシャツにネクタイ、夏仕様のスラックス。使い込まれているのが分かる革靴。
うん。間違いない・・・サラリーマンですね!って、表から直接来たのかな?
「おーい、ナイトメアちゃー・・・あ! まずは退院おめでとぉ~。元気になってよかったね~」
「あ、ありがとうございます」
・・・誰!?
ああ、人間時の姿だと誰なのか分からない! 変身しているとしても、まだ全員を覚えたわけではないので、分からないかもしれないけれど・・・人間時よりは分かるはず・・・。
「あ、変身してないと分かんないよね~? 私も、新人時代は人間時の先輩方が分かんなくてもぉ~まいったもん! わかるわかる~♪」
そ、そうですか・・・。
「と、のんびり話している場合じゃないから、自己紹介を省かせてもらうんだけど!」
省くの!?
「私、魚人バカトリオを探しているの! ナイトメアちゃんと一緒にいる。って聞いたから、探していたんだよッ!」
魚人バカトリオ・・・。
・・・いや、その・・・こういうのは失礼なことだと分かっているんですが・・・魚人バカトリオと聞いた瞬間に、『マグロードさん』『サバイタルさん』『カツオブシさん』の三人がパッと思い浮かんでしまいました。
ついさっきまで、一緒に居たわけですし。
「マグロードさんたちのことでしたら・・・」
「そう! あいつら!」
ですよねー。
「少し前にアトラクション・ダンジョン・東京メトロに入りまして・・・」
「あッ!そッ!こッ!かぁーッ!!」
ビクッと・・・私は、その腹の底から湧き出して沸いている怒りが籠った声音に怯んだ。
ラナタスカさんをムリヤリ成人向けコースに引っ張り込んでいきました。と、伝えたかったのだけど、私が怯んで声を詰まらせている内に、ドラゴニッカーさんとドラグナーレさんが入ってくる。
「あー。そういや、あの三人・・・成人コースのステージ3で手こずっているとか言っていたな」
「三人とも接近、近距離が主体の戦闘員だものね・・・射撃系の援護が無いとステージ3は難しいのよね・・・」
はい。だからラナタスカさんをお神輿みたいに担いで連れ込んで行きました。
「あいつら~・・・仕事サボって遊びやがってからにぃ~ッ!!」
えッ? サボっていたのですかッ!?
「お仕事、サボっていたのですか?」
「そう! あいつら、普段から仕事をサボって鍛錬、鍛錬、三度の飯と鍛錬は止められん!って生活をしているから、いろいろとヤバいのよ・・・」
ふと、リザドラルさんを見た。
この人も、本来なら仕事で他県に行っているはずだけど、やる事は終わっているのでここにいる人だったはずだ。
「あ、リザドラルんは何でここいんの? 他県へ調査に出てるはずでしょ?」
「そっちはもう終わったんでー。報告書も提出済みっすー」
「へぇ・・・君、そんなに出来る子だったっけ? 市場調査員への転属希望が増えてるって話しだし、意欲的な子にやらせてるとかじゃあないよね?」
「そ、そんなことはないっす」
・・・市場調査員への転属希望?
「ところで? ラナタスカはどうしたの?」
う、市場調査員というのはどういう仕事なのか?を聞こうとしたら、ドラグナーレさんに先を越された。
訊かれた以上は、答えないわけには行かないので・・・とりあえず、先ほど言えなかった経緯をここで説明する。
魚人三銃士と呼ばれている三人と、ラナタスカさんと私の5人でアトラクション・ダンジョン・東京メトロに入ったこと。
初心者である私が『全年齢向けコース』に挑戦するべく入った直後に、ラナタスカさんが三人にお神輿みたいに担がれて『成人向けコース』に連れ込まれてしまったこと・・・。
「あー、ラナタスカはバズーカ系の火力重視とはいえ、射撃系戦士だもんなぁ・・・」
「そうね。あの三人からすれば、これ以上無いほどのチャンスだものね・・・」
「成人向けコースは、どうしてもエッチな攻撃が多いからね。男女共に入るのは嫌がられるしー」
「そうなんすか?」
うんうん。そうなんですか?
「お、リザドラルんはまだなんだ?」
「そっすー」
「あのコースは、成人向けに分類される攻撃が確かに多いのよ。っというのも、イデスバリー光・・・つまりはエネルギーを回収する上で連中が私たちの身体に抱き着いたりまさぐってくるように、より効率的にエネルギーを得るため・・・まぁ、その・・・」
ドラグナーレさんが解説してくれるものの、私を見て言葉を濁らせた。
つまりは、未成年な私に聞かせる内容ではない。ということである事は理解する。
「でも、全年齢向けコースは、結構利用者が多いんだよ~。ね? ドラグナーレちゃん?」
「ええ。そうですね・・・私もよく利用しています」
え!?
「ど、どういうことですか!? 私、ステージ1のスライムから脱出できずに攻略失敗で、基礎訓練をやり直すように。って評価を貰ったんですけれど!」
すると、リザドラルさんを除く三人が「「「あー」」」と納得するような顔になる。
「確かに、あのダンジョンは基礎訓練を終えていることが前提だからな」
「そうね。なんだかんだで新人研修がまるごとスキップされている現状では、攻略は難しいでしょうね」
「忘れがちだけど、変身してから即実戦の連続って、ここ近年じゃ異例中の異例だもんねぇ・・・」
・・・それは、シェルさんにも言われていることなので。
「あの、それはそれとして、ダンジョンの話しなのですが・・・」
「ああ、そうね。攻略できるようになると、あそこの全年齢向けコースは社会人のオアシスみたいになるのよ。私も、神鳥谷さんに使い方を教えてもらって、よく通っているわ」
ということで、ドラグナーレさんがアトラクション・ダンジョン・東京メトロの使い方。をレクチャーしてくれる。
ステージ1。『バス・スライム』で、まずは身体を綺麗に洗います。体を洗うためのタオルを持参しましょう。
ステージ2。『ドクター・クラゲ』の触手?を全身に巻きつけてもらって、老廃物もろもろを吸い出したり食べたりしてもらいます。
ステージ3。『ネズミ整体師』にツボ押しマッサージなどのリラクリゼーション。そして身体の歪みなどを矯正してもらいます。
ステージ4。『岩盤ゴーレム』に拘束されてからの岩盤浴で身体の芯から温まり、リフレッシュ。なんでも、ゴーレムの頭部が岩盤浴用の石が敷かれているらしく、その上で寝かされ拘束されるらしい。
最後に、脱落用の配管へ飛び込んで帰ります。
この時に、汗などを一緒に流してもらう事で、身体スッキリ気分爽快!となるとのこと。
帰りに『ここはマッサージ店ではありません。真面目に攻略するように』という評価を貰ってニッコリ。
「・・・そんな利用方法が!?」
というか、そういうモンスターが配置されていたんだ!?
「まぁ、本来のダンジョン内容を全年齢向けにすると、こうなる。っていうことらしいわ」
「シェルさんたちも色々と考えてコースを三段階の難易度にしたようだし・・・いつまた、ダンジョンが発生するか分からないから、それに向けた訓練を推奨するため。ってことらしいしね」
あくまでも、ダンジョン攻略の訓練施設であることは変わらないけれど、活用方法は多々ある。ということですか。
・・・。
・・・・・・今から、もう一度挑戦しに行こうかな?
どぉぉん
「・・・うん?」
「なんだ? 今の音・・・」
「誰かが爆破でもやったんすかね?」
「ラナタスカ辺りが、あの三人にキレてやらかした・・・って可能性はあるわね」
さ、さすがに・・・ここまで音が届くような攻撃はしないと思うのですが・・・あるかもしれない。というのは否定できない。
でも、とりあえずはアトラクション・ダンジョンの攻略を終えたということになるから、どういうコースだったのか?を教えてもらえるかもしれない。
―――びー。怪異警報発令。怪異警報発令。屋内プール施設にて怪異反応を確認。屋内プール施設にて怪異反応を確認。緊急事態発令。緊急事態発令。規定により、戦闘員の戦闘制限を解除します。規定により、戦闘員の戦闘制限を解除します。全戦闘員は速やかに対処せよ。全戦闘員は速やかに対処せよ。非戦闘員は避難してください。非戦闘員は避難してください。
「「「「「怪異ッ!!!???」」」」」
先の爆発が響いてきた時は、さほどの注意もせずになんとなく音がした方を見ただけだったけれど、今度は急いで身体ごと向き直る。
ここからはまだ遠いけれど、隣のプールエリアではすでに怪異への攻撃が始まっているようだった。炸裂音が断続的に響き始めると、何か、大きな物体がモゾモゾと動き始める。
表面は・・・青・・・いや、水色かな?
透明とは言い難く、水が大きな塊となっているようにも見られる。
「・・・蛇?でしょうか?」
水の塊みたいな物体は、一見すれば蛇のような頭をしているものの・・・蛇のような体長ではないために「?」が付いてしまう。
なんだろう?
「あの形は、どこかで見た事がある気もするのですが・・・」
「ツチノコじゃない? ほら、幻の生物ってことでどこかの市町村が探しているってヤツ~」
「あー。それなら確かに、想像図っていうのをネットで見た事ありますね」
「確かに、言われてみるとそれっぽい形はしてるっすねー」
みんな、どことなく魚の小骨みたいな疑問が解消してスッキリした顔をしているけれど、ちょっとのんびりされ過ぎているような気が・・・。
「みょみょみょみょみょみょみょぉおーッ」
思わず転んでしまいそうなほどに、力が抜けてしまう咆哮が響く・・・いや、もっとこう恐怖心を煽るような激しい咆哮とか無いの!?って思ったのだけど、以前の怪獣怪異も似たような感じだったので、こういうモノなのかもしれない。
「なんだ、あのふざけた怪異は?」
「いつもの怪獣怪異とは、様子が違うわね・・・」
「にしても、どうやって侵入して来たんだろ~? 唐突に出現したのも摩訶不思議だねー?」
確かに・・・。
あのように唐突に姿を現すまで、警報が鳴らなかったことを考えれば・・・どうやって侵入してきたのだろう?
ジッと怪異を見ていると、その蛇の頭に似た形をする部位を振って、周囲を見回しているように見える。
「何か、探しているようですね? 何を探しているんでしょうか・・・」
・・・。
・・・・・・。
・・・あれ?
ドラゴニッカーさん。ドラグナーレさん。神鳥谷?さん。リザドラルさん。の四人は、無言で私に注目していた。
その眼は『何が目的?って、むしろ他があるのか?』と私に訴えている。
私は、恥ずかしさで少し俯いた。顔が熱いので、赤くなっていたと思う。
「すみません・・・先の間の抜けた咆哮で、いろいろと私の間も抜けてしまったようです・・・」
ごめんなさい。
すると、神鳥谷?さんが怪異を睨むように向き直ると、言う。
「よし! まずはリザドラルんッ!は、ナイトメアちゃんを連れて避難だーッ!」
「りょーかーいッす!!」
指示を受け、リザドラルさんは素早く私の背後へ回り込むと、それはもう流れるような動作で抱きかかえられた。
それは、いわゆる『お姫様抱っこ』で、ちょっと自分が何をされているのか理解が追い付かなかったけれど、理解できたところで顔がまた熱くなる。
わわわわわわ
「私! 自分で走れますからッ!!」
「ええからええから、体力は温存しておく方がいい。不測の事態に備えてねー」
そ、それはそうかもですけれどッ!?
いや、今は緊急事態! 今は緊急事態! 落ち着け私! 妙な事を考えている場合じゃない! 落ちないように腕にしがみ付いておくぐらいはいいですよね!
体格差があるために、首へ腕を回すなどはできないので・・・すぐ近くにあるリザドラルさんの腕にしがみ付いておく。
「ドラゴニッカー! 先行して怪異を攻撃して頂戴! どういう奴なのか、調べて!」
「了解です!」
「ドラグナーレは、リザドラルんと一緒にナイトメアちゃんの護衛! アレ以外に敵が潜んでいる可能性もあるから、警戒して!」
「分かりました!」
すごい。
なんだか指示を飛ばし慣れているように見えるけれど・・・えーっと、誰なんだろう?
「よーし、私も変身だッ! イデスバリーッ!!」
変身時に、なんだかこう「キラッ!」て音声が入りそうなポーズを取ると、その姿が光に包まれて変身は瞬時に終了する。
けれど・・・なんだろう? なんだか変身バンクみたいなモノが差し込まれていたような錯覚をした。
「イデスバリー・マジカルンナ! ただいま参上ッ!!」
・・・。
・・・・・・。
・・・ああ!!
あの人は! 魔法少女系イデスバリー戦士の『マジカルンナ』さんだ!!?
秘密結社メシア日本・東京支社の支社長『紅葉朱雀』さんの後輩で、今の私とリザドラルさんのような先輩後輩関係だったことで、新人時代は組んでいたという・・・。
髪の毛が派手なピンク色をしており、フワフワとした長髪は腰より少し上ぐらいまで。衣装もまた細かい名称はちょっと分からないけれど、私が知る限りでは『ゴスロリ』というものであるはず。
フワッとしたフレアスカートがとても可愛いと思える。
その他にも、可愛らしい装飾を身に着けて、イデスバリー・マジカルンナさんは『9歳』ぐらいの少女姿で仁王立ちしていた。
性別ばかりか、年齢まるごと変わっていることに、ただ驚く以外のリアクションが私にはできない・・・見た目の少女感と、ベテランの風格で、私の認識がなんだかおかしくなりそう。
そうして、その手にはおもちゃ売り場にありそうな『魔法のステッキ』が握られており、取っ手の上くらいに花びらを模したレンズがはめ込まれた筒があり、レンズは光を発している。
取っ手のいかにも単三電池が入ります。と言わんばかりの形状も・・・こ、細かすぎる。
「よーっしゃ! はい、そこでナイトメアちゃんのエッチな姿を堪能していた野次馬しょくーん!」
ステッキでビシッと指し示すのは、私が挑戦していたアトラクション・プール周辺で見学をしていた先輩方だ。
マジカルンナさんの声が掛かった事で、全員が「ビクッ」と緊張した顔で身体を強張らせている。
「怪異討伐に出撃だぁーッ!! 私に続けーッ! 来ない奴は隠し撮りしてたってシェルさんに報告だーッ!!」
「「「「「「やぁぁぁぁぁってやぁるぁぜぁぁぁぁあああああああッ!!!!!」」」」」」
・・・いまなんて?
「・・・あの、リザドラルさん? 今、マジカルンナさんが――――」
「っと、言う事でッ! 私も護りに付くわッ!! 他に敵が居た場合は、私に構わず避難所まで走るように!」
「了解っす!」
・・・。
・・・・・・。
・・・はい。
周囲を見回し直すと、マジカルンナさんの言葉で先輩方が雄たけびを上げながら続々と駆けだし始める。変身していない方は変身し、変身済みの人は衣装チェンジなどをしていた。
飛行能力を持つ方は飛び上がり、武器をその手に怪異へと挑んでいく。
「怪異は俺らに任せなーッ!」
「リザドラル! 避難口まで落としたりするなよーッ!」
「俺もお姫様抱っことかしてみたいぜッ!」
「く、悔しくなんかないだからなーッ!!」
・・・え、えーっと。
射撃系の先輩方はこの場から攻撃を始める人も居て、怪異周辺での爆発が増えて、音が重なるように響き始める。
近接戦闘を主体とした先輩方も全速力で突撃していくと、姿が遮蔽物などで見えなくなって少ししたところで、雄たけびと思われる声が再び響いて来た。
出現した怪異が巨大であるため、上部を射撃系攻撃で、下部を接近戦闘で攻撃しているのだと思う。
「武装制限が解除されているとはいえ、屋内だから威力の加減は必要でしょうにー」
マジカルンナさんが飛び上がる。
・・・フレアスカートから火?を噴くと、コレが戦闘機のノズルみたいに動いて姿勢制御もこなしてくれているようで、ある程度まで上昇したところで状況確認のために滞空。
そこから怪異へ向けて飛んでいく。
「こらーッ! 外じゃないんだから加減しろーッ!!」
そんな怒鳴り声を上げながら、マジカルンナさんも手にしているステッキでやたらキラキラ光るビームを放っていた。
でも、マジカルンナさんの言う事は正しいと思う。
この施設が異世界の技術を取り入れているとはいえ、その基礎は現代地球の技術であり、異世界技術は少しだけという配分のはず。
なら、多少は頑丈にできているとしても、限度というものはあるわけだから・・・加減するように言って回る必要があるんだと思う。
現場で指揮をする人がいないと、大多数が全力攻撃をしてしまいそう・・・ニャランさんに掴まっている時に必殺技級の攻撃が絶えず飛んで来た時の事を思い出して身体が震えだした。
そんな中、私は強烈な熱量の視線を向けられた感覚を得る。
「ッ!?」
ゾワッとするこの感覚は、探していたモノを見つけた時の高揚感と思われ・・・つまりは、怪異が私を見つけたことで歓喜し、熱の籠った視線を飛ばして来たのだと思われ・・・。
巨大な水の塊に見える怪異の頭部が、そうして私をジッと見ている姿を確認できた。
「リザドラルさん! 怪異が私を見つけたと思われますッ!」
「あら、そりゃマズい・・・」
「大丈夫! 仲間の攻撃で足止めはできているから、すぐには追い付けるはずないわ!」
ドラグナーレさんの言葉に頷き返し、リザドラルさんは構わず走ることで避難を優先してくれる。しかし、この怪異はとんでもない行動に出た。
私が、ジッと怪異を見ていると・・・怪異の蛇を模した頭。その口と思われる部位が開かれて・・・まるで穴のように丸く、そして大きく広がって・・・。
ぉぉぉぉぉぉぉごぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ
小さな音が耳を震動させる。
そう思っている内に、突如進行方向から風が吹き始めて強まっていく。
「な、なんなんこの風!?」
「だ、誰よ! 風なんて・・・」
あまりの強風に、リザドラルさんとドラグナーレさんは吹き飛ばされないように腰を落として身を丸く、小さくしつつ走り続けるも、速度は一気に落ちた。
そして、その風を起こしているのは怪異だと、私は気づく。
「違います! この向かい風は! あの怪異の吸引が起こしている風です!!」
「はッ!?」
「まさかッ!?」
向かい風に吹き飛ばされないようにしていた二人も、その場に踏ん張りながら一度立ち止まり、そして振り返って怪異を見る。
その開かれた大穴となっている口を見て、二人は目を点にしながら顔を青ざめさせた。
「・・・世界でただ一人、吸引力の変わらないキャラみたいやんな」
「言ってる場合!? とにかく! 避難口まで・・・ぐ・・・風が強くて、あ、歩けない」
強まる向かい風に、二人は動けなくなる。
と、甲高い音が聞こえて来たので進行方向へと視線を向けてみたら、正面よりパラソルやテーブル、椅子などが飛んできた。
これらが複数飛んでくる中で、私たちに激突しそうなものがある。
「リザドラルさん! テーブルが飛んできます!」
「んぁ!?」
怪異の方に気を取られていたことで、リザドラルさんの回避行動が遅れるものの・・・機敏な様子で横っ飛びの回避を成功させ・・・そのまま身体が宙へと浮かび上がった。
「あ、あっかーん!!」
着地する瞬間に、足が地に着かず空を切る。
まるでギャグ漫画みたいな様子で足をバタバタ動かしていたけれど、風に押し上げられて高度が上がったところでリザドラルさんの悲鳴が上がった。
「くっ・・・リザドラル!! 掴みなさいッ!!」
ドラグナーレさんが短剣を二本ほど抜くと、左手に持つ短剣を地面に突き立てて右手に持つ短剣をリザドラルさんへと投げる。
その柄頭からワイヤーと思われる紐が伸びている様子を見て、リザドラルさんに掴ませて吸引されるのを防ごうとしてくれていると理解した。
当然、リザドラルさんも理解して、こちらに近づいて来る短剣を掴もうと手を伸ばす。
しかし、誰かの食べかけだと思われるハンバーガーが飛んできて、リザドラルさんの顔・・・特に目の周りに激突したことで、短剣を掴み損ねた。
「あんぎゃーッ! 目がぁぁああめぇぇぇががががががががあ!!」
・・・肉汁とかタレとかケチャップとか、目に入ると染みて痛いですものね。
巨大な怪異に吸い込まれている只中ですが、痛みでボロボロと涙を流しているリザドラルさんの方が心配でそれどころでは無くなった。
私は刀を提げるベルトに取り付けておいたポーチから、タオルを取り出す。
異世界技術によるアイテムポーチは、本当に便利だと思いつつ、取り出したタオルをリザドラルさんの顔に当てた。
「とりあえず、タオルです! 今から、水分補給用にと用意していたミネラルウォーターを出しますから、濡らして顔を拭ってください」
「あんがとーッ」
急いでペットボトル飲料を取り出し、タオルを濡らしてあげる。
それで顔を拭いつつ、目に入った分は涙で流し出したようだ・・・そういえば、トカゲって目にゴミが入らないように膜のようなモノがあるんじゃなかったかな?
・・・トカゲ怪人だから、無いのかも?
と、そんな事をしている間に、怪異の大口は迫っていた。
「ん!? おい! アレ!!」
「あ! ナイトメアちゃんが吸い込まれるぞ!!」
「誰か! 彼女を助けられるヤツは!!」
あの、リザドラルさんもいるんですが・・・。
「私が行きます!! チェンジ、イデスバリーッ! エアクラフト!!」
ラナタスカさんの声が聞こえると、地上から飛び上がってくる姿が見える。
けれど、その姿は先の水着姿となる亀の甲羅みたいな外装を纏ったモノではなく・・・サーフボードのような板に乗っていて、背中に戦闘機のエンジンみたいなモノを背負って、ジェットノズルから火を噴いていた。
轟音と共に飛び上がり、風という波に乗るようにこちらへと接近してくるラナタスカさん。
「今、助けます!」
そう言って、近づいてくるものの・・・私たちに並走しつつ手を伸ばしてくれた。
「ありがとうございます! ラナタスカさん!」
「いえッ! ステージ3に手こずっていたら、緊急警報が鳴ったので驚きました。が、あなたが無事で何よりですよ!」
あ、射撃系戦士の援護があっても苦戦するんだ・・・と、もう少しで私の手がラナタスカさんの手に届く。というところで、ビーチパラソルが激突する。
「んぎゃ!!」
と、ラナタスカさんが悲鳴を上げて怪異の大口へと押し込まれていくと・・・。
「なんですかこれはーッ!?」
何に対しての抗議なのかは分からなかったけれど・・・背中の背負い物に引っ掛かっているパラソルを退けようともがきながら、怪異の大口へと吸い込まれて行った。
・・・。
・・・・・・。
・・・あ、これはもう逃げられない感じですね。
「怪異の吸い込みが強過ぎて、こんな強風では飛んでいられないぞ!」
「ナイトメアちゃんが敵に奪われることになるんだぞ!?」
「なら! 俺らも彼女を追って、怪異の中に突入すりゃいいだろ!!」
いや、それはッ!!
「「「「「「とつげきぃぃいい!!! リザドラルばかり美味しい思いをさせるなぁああああ!!!」」」」」」
ええッ!!?
「ったくー、みんな自分に正直なんだからねー」
ふと、すぐ横にマジカルンナさんが並走していた。
「ま、マジカルンナさん!」
「こうなったらしゃーなしだーッ! みんなで怪異に突入するよ!!ってことで、そこのバカトリオ!!」
「「「はい! お供させてもらいますッ!!!」」」
「よろしい! ついてこーいッ!!」
魚人三銃士の三人も、マジカルンナさんの指示で私たちと合流してくれる。
それ以外にも、多くの先輩方がどんどん集まって来た。
「全員はいらないっつのーッ! 半分は残って後片付けしろーい!! これ以上はいいから! 朱雀先輩に報告! ナイトメアちゃんのイデスバリー光は観測できるんだから、後程援護に来てちょーだい!!」
マジカルンナさんの指示が飛び、今から私たちを追いかけようとしてくれた先輩方が悔しそうな顔をしつつ踏みとどまる。
「くそ! 乗り遅れた!!」
「おまえらー! 必ず援護しに行くから、見せ場はとっておけよーッ!」
「踏ん張れなッ!」
「よし! 支社長へ報告! 次のために指示をもらうぞ!」
そうして、私たちは巨大な怪異に呑みこまれ・・・私たちの先を行っていた先輩方が突入する。
「うわ! これ、水!」
「空洞じゃない! 水だ! 潜水服を!!」
そんな悲鳴交じりの報告が途切れ途切れに聞こえてくる。
水?
水の塊みたいな巨大怪異だと思ったけれど、吸い込まれた先は水中ってことに?
「リザドラルん!!」
「了解っす!」
リザドラルさんが私をお姫様抱っこから両腕で抱きしめる態勢に変えてくる。その手際に、私は反応が遅れてギュッと抱きしめられてから再び顔が熱くなった。
「な、なにを!?」
「俺にしっかりと抱き着いて! 抱き枕に抱き着くように! 両腕両脚使ってガッツリしっかり!」
急いでいるようなので、私はとにかく木の幹にしがみ付くように両腕と両脚でリザドラルさんにしがみ付いた。
そしてすぐ、リザドラルさんは身体を丸くするような姿勢を取る。
「リザドラル式防御術! 麻痺毒バリア・ボールッ!!」
鱗と鱗の隙間より、リザドラルさんの麻痺毒が湧き水のように染み出てくると、それらが噴水のように飛び出してリザドラルさんを包むように麻痺毒が拡がっていく。
それは、技の名前通りで麻痺毒のボールとなった・・・だけれど、同時にリザドラルさんの姿がどんどん干物のように干からびてしまう。
「よし! マジカな。マジカよ。マジカルだもん。マジカルンナ・バフ・マジック!!」
マジカルンナさんが魔法を使ってくれると、リザドラルさんが展開した麻痺毒バリア・ボールが魔法のステッキより飛び出た光に包まれて強化されたことを理解する。
ざっぱ~ん
リザドラルさんがバリアを展開し、マジカルンナさんが魔法で強化してくれた直後に、私たちは怪異の中へと突入した。
先に飛び込んだ先輩方の言う通りで、中は水。
私たちは水中へと飛び込んだことになる・・・バリアのおかげでこの中に水は入ってこないけれど、バリアの向こう側は水で満たされた。
「・・・あ、リザドラルさん! 大丈夫なんですか!?」
「あー・・・あー・・・あ、この、技、使うと、こーなる、んよー・・・身体、の、水分、を、浪費す、るんよなー・・・な、んか、のみ、もの、ない?」
「あ、あの、さっきタオルを濡らした水が少し残っていますので!」
タオルはリザドラルさんが使って、そのままどこかに手放してしまわれたけれど、私がタオルを濡らすために使ったミネラルウォーターは、まだ持っている。
コレを、急いでリザドラルさんの口に・・・手を伸ばして、ペットボトルごと口の中へと放り込んだ。
「んぐ・・・んぐ・・・ぷは・・・ごっほ・・・これでしばらくは持つと思うんわー」
500mlのペットボトルでは、全然足りないようだけれど・・・喉が潤ったことで少しだけ活舌が良くなったようです。
「おーい。二人とも大丈夫?」
バリアに手を付いて、声をかけてくれるのはマジカルンナさん。だけれど、その姿は先ほどまでの魔法少女から宇宙飛行士が宇宙空間で活動するための宇宙服みたいになっていた。
「・・・え? その衣装はなんですか?」
「あ、これ? 環境別戦闘衣装の潜水服だよ。水着は水辺から浅い水中用の衣装で、深海などでの活動用として潜水服もあるんだよね」
そ、そうなんだ・・・。
「でも、ナイトメアちゃんはまだ潜水服の確認をしていないだろうから、今回はリザドラルんにバリアを展開してもらったってわけッ」
あ、そうか・・・私に潜水服の設定があるのかは不明だし、あるとしても、潜水服として機能するのかも不明なのだから、無い。物として考えた結果がリザドラルさんのバリア展開なんだ。
事前確認をしていないなら、無いモノとして行動する。そういうことなんだ。
「リザドラルん・・・どれくらい持つ?」
「あー・・・あー・・・あー・・・わかんねっす」
すでに危険な状態かと思いますが!?
「しゃーなしだね。一応、私はミネラルウォーターと経口補水液とポ〇リとア〇エリ持ってるから、外に出たら飲ませてあげるよー」
「うっす・・・」
用意がいい!?
でも、それまでリザドラルさんが持ち堪えてくれるといいのだけど・・・。
▽
「おーい! 無事かーッ!」
「あ! やっぱりリザドラルの麻痺毒バリアか!」
「お! いい感じにバリア張ってくれて助かるぜ!」
「たすかったー。ここ暗すぎてなんも見えなかったから」
「ライトがなんか反射したと思えば、リザドラルの麻痺毒バリアか・・・助かったー」
「あぁ! ナイトメアさーん! 私が不甲斐ないばかりにぃ!!」
あ、ラナタスカさん・・・の装備がまた変わっている。
なんだかイカの頭・・・いや、耳から目までのアレは胴体だったかな?・・・と、とにかく三角の帽子みたいな装甲で全身を覆っている姿で、足は膝から下が露出しており・・・装甲にはクレーン車のようなアームが二本。
「あれ? 誰かー、バカトリオ見てなーい?」
「ああ、あいつらなら溺れている奴がいないか見てくるって、探検しに行きましたよ」
「そかー。なら、任せるとしますかねー」
続々と、先に突入していた先輩方と、後から突入して来た先輩方が合流してくる。
全員が、リザドラルさんの展開したバリアを目印にして集まってくる。
・・・よかった。一人じゃなくて・・・。
この場所は、とても暗くて、静かで、寂しいから・・・秘密結社メシアのみんなが居てくれてよかった。
ほんとうに・・・。
次回は、敵味方共に若手同士の激突。を予定しています。
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