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13 頑張る。

 こんにちは。こんばんは。


 このお話は、以前にアップしたものを書き直したモノになります。

 別キャラの思考をヒロインに反映させていたりして、いろいろと間違えている箇所が多くあったので、勝手ながら書き直すこととしました。

 大まかな話しは以前と同じですが、書きの直したため、内容も多少の修正を行っております。

 よろしくおねがいします。


 確認が足りなくて、申し訳ありませんでした。


 最後までお楽しみにいただけたら、幸いです。

〇-???-〇


 燃え盛る炎を彷彿とさせる赤のグラデーションが、目に優しい光を揺らめかせて波打つと、草原を幻想的に魅せてくれる。

 夜空まで届く灯りが星を染め、どこか温かい風が火の草原を駆け抜ける。

「ここは、どこだろう?」


「地獄ですよ」


 ・・・え?

 声がする方へ、私は振り返る・・・と、火の草原に照らされる『地蔵菩薩像』が立っていた。でも、お養父さんではない。別の・・・。


「かような場所に、あなたのような魂が迷い込むということは・・・まもなく死ぬのでしょうね」


 ・・・は? え? まもなく、死ぬ!?

「わ、私・・・死ぬんですか!?」


「はい。ここは、あらゆる世界から死者が集う場所。生命あるモノたちが逝き着く世界・・・それが、地獄なのです」


 なぜ?

 秘密結社メシアが襲撃されて、敵に襲われて、毒を打たれて、夢の中で必死に戦って・・・。


「まもなく死ぬとは思いますが、まだ生きているのも事実。今ならば、選択できますよ?」


 選択できる?

 それはつまり・・・生きる。ことを選べる!?

「生きたいです! 死にたくありません! まだ、やり残していることがいっぱいあるんです!」

 私は、まだ生きることができると知って、必死に訴えた。

「好きな人とキスしたり、結婚して、え、エッチなことして、子供とか、家庭とか・・・と、とにかく! やり残していることがいっぱいあるんですッ!!」

 すると、お地蔵さんは微笑む。


「それ以上に、ツラい人生が待ち受けているようにも・・・見えますが?」


 私は、言葉に詰まった。

 そう。

 今の私は、怪異という異世界人の成れの果てである存在に狙われている・・・彼らが人間へと転生するための身体を産む道具として・・・。

 この身が『リバースデイ』を迎えてから、イデスバリー戦士となって、たった数日であまりにも多くの事が起こった。

 必死に戦った・・・。

 でも、そんな日々が続くとするなら、お地蔵さんが言う「ツラい人生」というのも分かるし、このまま死んでしまった方が、楽なのかもしれない。

「でも、多くの人が・・・私を守ろうと、助けようと、戦ってくれました。きっと・・・私が帰ってくるのを待ってくれているって、思うから・・・」

 お養父さんを始め、たった数日のうちに出会えたみんなが・・・リザドラルさんが・・・きっと・・・。


「なるほど・・・あなたには素質がありそうだ」


 ・・・素質?

 私が首を傾げていると、お地蔵さんは懐に手を入れて・・・謎の巻物を取り出すと、私に差し出してくる。

 なんて書いてあるのかな? 読めない。


「コレをお持ちなさい。あなたの死後、この地で再び会える日を楽しみにしています」


「・・・いえ、楽しみにされても困りますが?」

 困惑しながらも、差し出された謎の巻物を受け取る。

 なぜだか、妙に手に馴染む巻物を凝視するものの、やっぱり文字は読めない。


「さぁ、お行きなさい。あなたの帰り道は、あちらです」


 言うと、石の錫杖を翳して、私の帰り道がある方向を示してくれる。

 ただ・・・錫杖が向いている方には、山があるのですが?

「・・・あの? 山へ向かえ・・・と?」


「そうです。あなたが向かうは『険しき山』だ。舗装された道のある山か? 道なき道を切り開く山か? 進むたびに道を阻まれる山か?・・・さて、あなたの人生は、いかような道を山に残すのか?」


 それは、楽な道はないぞ。ということでしょうか?

「あの、えぇっと・・・」


「よい。進みなさい。あなたの命が終わりを迎える日に、歩んだ道が『幸せ』だったと思えるように」


 どこか、力強い笑顔に背を押され、私は示された帰り道を歩き始める。

 この道が、どこへ続くのか? 私はどうなっていくのか?

 不安は数多くとも・・・それでも、帰って・・・ただいま。と、言いたい人がいるから。

 ・・・でも、その前にどうしても確認しておきたいことがあります。

「・・・あの! さっき言っていた『素質』というのは、なんのことでしょうか!?」

 私に『素質』があると言って、謎の巻物を渡してきたのだから、とても気になる。

 けれど、お地蔵さんは何を聞かれているのか?という様子で首を傾げ、少し考えるように指を額に添えると・・・やっと理解したように、笑顔を浮かべて・・・告げた。


「そうですね・・・壮絶な人生を、命尽きるまで生き抜けること・・・で、ございましょうか」


 ・・・は?

 ・・・・・・えっと?

 ・・・それはつまり?

「私の人生は―――」


 壮絶なモノになるってことでしょうかッ!!??




〇-起床-〇


 

 目を開く。

 どこか重たい瞼を開いて見えたモノは、ぼやけた世界。

 光は感じられるものの、形がハッキリと見えてこないことで、自分がどこにいるのかを把握できず、不安になる。

 と、なにかが私の視界に割り込んできて、すぐに離れたと思えば瞼をこじ開けるように抑えられて小さい照明の光が当てられる。・・・眩しい。

 左右の目で同じことをされると、音が響いてくる・・・なんの音だろう? とても鈍くて、とても聞き取れるような音ではない・・・なにか・・・。

 あぁ・・・わ、わたし、どこにいるんだろう?

 だ、だれか・・・。


「おー? おきたんかー?」


 ・・・あぁ。知っている声だ。

 リザドラルさんの声が聞こえ、声の聞こえた方へ視線を動かしていくと、ぼやけていた視界が急速に鮮明になっていく。

 そうして、見慣れた。見ていて安心できるトカゲ怪人さんの「にかー」っとした顔が見えた。

「・・・おはようございます。リザドラルさん」

「うん。おはよー」

 私の声は、なぜか掠れていたけれど・・・リザドラルさんにはちゃんと伝わったみたいで、ホッとする。

 そして、リザドラルさんの「にかー」っとした顔が「にぱー」って笑顔になって、私の心が温かくなる。

 自然と笑顔になってくるのだけど・・・身体を起こそうと思っても、まるで動いてくれない。

〔ユキトッ! 俺が分かるか!?〕

 横から私を覗き込んでくる影は・・・お地蔵さん・・・えっと、ついさっき見た気がする・・・あ、お養父さんだ。

「お養父さん?・・・どうしたの? なんだか怖い顔してる」

〔あ、あぁ・・・すまん。意識が戻ったみたいでよかった・・・もう、ダメかと思ったぞ〕

 ???

 えーっと・・・どうか、したのかな?

「ナイトメアさん。アリアネルです。分かりますか?」

 カピバラ顔の獣人さん・・・そう、医療師の・・・イデスバリー・アリアネルさん。そうだ・・・カマイタチさんは無事なんだろうか?

「・・・はい。わかります。いえ、あの、カマイタチさんはご無事でしょうか? ニャランさんに―――」

「俺は大丈夫だ」

 アリアネルさんの後ろから、ハクビシン顔の獣人戦士であるイデスバリー・カマイタチさんが顔を見せてくれる。

「すまなかった。俺の力不足で、危険に晒したどころか生死を彷徨わせることになった・・・」

 ・・・生死を彷徨わせる?

 あ、そうなんだ・・・わたし、死にかけていて・・・だから、みんな・・・。

「いいえ、カマイタチさんがご無事で、よかったです・・・」


「ちょっと! ナイトメアが死んだって本当なの!!」


 乱暴に扉が開かれる音が響くと、この声からしてイデスバリー・サキュバスさんだと思うけれど。

 周囲が驚いた顔になって病室の扉?と思われる方へ顔を向け、そして場所を譲るように退くと、私の視界にサキュバスさんの顔が飛び込んできた。

「おきなさい! 死んじゃダメよ!!」

「はい。起きてます・・・」

 途端、サキュバスさんの目が点になった。

「つい、さっき・・・目が覚めたんです・・・声、掠れててごめんなさい」

 できる限りの笑顔を作って見たのだけど・・・ちゃんと笑顔になっているかな?

「は、はー・・・はは・・・あーッよがっだーッ」

 そのままズルズルとベッドから床へ落ちていくと、腰が抜けた様子で泣いてくれる。さっき、私の顔を覗き込んできた彼女の顔は、隈が濃かった・・・寝不足みたい。

 そっか、心配してくれていたんだ・・・。


「死んだという知らせを聞いて飛んできたが・・・息を吹き返してくれたのか・・・」

 サキュバスさんのお兄さん・・・イデスバリー・インキュバスさんの安堵したような声が聞こえると、静かに私の顔を覗き込んで微笑掛けてくれた後、妹のサキュバスさんを負んぶして運び出していく。

「まだ、予断を許すような状態でもないでしょう? 私たちはこれで失礼します。一応、支社長を始め、安否を心配しているみんなには、息を吹き返した事を伝えてきますね」

「ええ。お願いします」

 インキュバスさんが一礼して病室を出ると、アリアネルさんが深く息を吐きながら椅子に座った。

「ごめんなさいね・・・変身しているとはいえ、60を過ぎた老体には・・・とても堪える出来事したから、疲れが出てしまいました」

「ご心配・・・を・・・おかけ・・・しま・・・」

 あれ?

 眠くなってきた・・・。

〔ユキト!〕

「ナイトメアさん!?」

 はい・・・ちょっと、だけ・・・ねむ・・・。





 翌日の朝、私が起きると・・・看護師の方が大急ぎでアリアネルさんたち医師の方々を呼びに病室を飛び出した。

 さっそくと医師たちによる診察に、多種多様の検査をされる私は・・・ほとんど身体が動かないので移動から何まで頼ることとなる。

 そうして、朝から夕暮れまで徹底的に調べられた私は、病室に戻されると状況説明を受けた。


①秘密結社メシア日本・東京支社が襲撃を受けてから、合計で一週間、寝ていたらしい。


②敵が私を手放す際に、致死量ギリギリで強い毒を打っていたことが分かり、解毒薬で解毒できる分は解毒できたものの、夢毒が特に強く・・・夢魔兄妹でも夢に入り込めない状態だったため、精神干渉で支援してくれていたらしい。


③三日目の朝に目を覚ましたものの、夢毒に負けてしまった者と同じ状態だったらしい。けれど、リザドラルさんの機転?というかなんというか?な対応によって、私は吐血して倒れ、そのまま生死の境を彷徨う事となったとか・・・どういうこと?


④そうして、昼夜問わず吐血する私に輸血やら蘇生措置やらを行いつつ、七日目の朝に懸命な措置も虚しく死亡した・・・と、各方面へ連絡を入れている最中に息を吹き返したらしい。

 ちなみに、お養父さんは蘇生措置中の私へ呼びかけるために呼ばれており、リザドラルさんはたまたま研究室でお養父さんと話をしているところだったため、付いて来ただけらしい。

 

⑤そうして、私が疲れて再び寝た後に、私の身体で謎の現象が発生していたそうで・・・地球の医学ではなんにも分からないため、異世界人医師のバース・パーソンたちが情報を収集して、向こうでも研究することになったらしい。

 ちなみに、すごく喜んでいたとか・・・。



「本当に、気の抜けない一週間でした」

 アリアネルさんから滲み出る疲労感に、私は何度も頭を下げてお礼を述べる。

 そうして、ちょっと気になったことを尋ねた。

「・・・ところで、三日目の朝に目を覚ましたとのことですけれど・・・私、記憶にないです」

「そうでしょう。アレは覚えていない方がいいと思いますよ」

 ・・・そう言われると、すごく気になる。

「あの、気になるので、教えてはもらえませんか?」

「・・・そうですか? そうですね・・・私の口で説明するよりも、記録映像を見ていただいた方がよいでしょう」

 え?

 記録映像?

「あの、記録映像があるんですか?」

「ええ。夢毒を受けた患者の様子を記録する。という規定があるんですよ。夢毒を解毒するための研究に使われる資料となるんです」

 へぇ・・・そういう決まりがあるんだ。

 なら、見せて欲しい・・・見るのがすごく怖いけれど・・・。

「お願いします。見せてください」

 私が頭を下げると・・・アリアネルさんは時間を確認してから言った。

「明日にしましょう。今日は多くの検査を受けてお疲れでしょうから・・・しっかりと休んで、心と体に余裕を持たせてください」

 ・・・そ、そこまで衝撃的な事が起こっていたと?

「わ、分かりました。見る覚悟をしっかりと決めます」

「・・・そこまで肩肘張らなくても、いいですからね?」

 アリアネルさんが微笑みながら頭を撫でてくれると、私もちょっと気恥ずかしい気持ちで笑みを返した。



 そうして、朝の診察を終えて体調は大丈夫であると診断してもらうと・・・病室にテレビとDVDプレイヤーが運び込まれて、私が見やすいように設置してくれる。

 ベッドも上体が持ち上がるように動き、背をもたれながら見られる楽な姿勢になった。

「では、記録映像を再生しますよ?」

「お、おねがいします」



〇-記録映像。再生-〇


 最初の数分は、私が寝ている様子が映し出され・・・夢毒に負けないよう夜通し支援してくれたインキュバスさんと交代するようにサキュバスさんが病室に入ってくるところまで早送りされる。

 そうして、通常再生になると・・・。

「あ、おはぁよぉうござぁいまぁす♪ ・・・インキュバスさん。サキュバスさん」

 目を覚ました挨拶の時点で、私の声が不気味なほどに甘い声音となっている・・・え? これ、この人? 私なんです?

 ・・・信じられない事に、私みたいです。

 その上、身体を起こしたらボディコン衣装の胸回りがダラリと開けて、胸がまるごと露出する。コレを隠そうともせずに寝起きの伸びをしながら、周囲を見回し始めた。

 ・・・いや、隠してくださいよ。

「な、ナイトメア? あんた・・・まさか・・・」

「はい? あ、ところでぇ・・・リザドラルさんはどちらでしょうかぁ?」

 夢魔兄妹が、なんというのか? この世の終わりみたいな顔で私を凝視している・・・いや、この病室内にいる看護師や医師の方々も動く様子が無いことから、私の様子に固まっているのが分かる。

「り、リザドラル?」

「はぁい・・・呼んでいただけますかぁ? とっても、とぉーっても、大事なことをお願いしたいんですぅ」

 露出している胸を抱えるように・・・いや、自分を抱きしめるように腕を組んで、顔を赤く染めている。

 ・・・これが、わたしなんだ?

「・・・まずは、胸を隠すべきではないかな?」

 インキュバスさんが絞り出すような声で指摘してくれるのだけど・・・。

「隠したら、見てもらえないじゃないですかぁ・・・もっと、見ていいんですよ?」

 ・・・。

 ・・・・・・死んでしまいたい。

 今すぐにでも、自分の首を紐で絞めてしまいたい気分になりながら、ここで早送り。リザドラルさんを呼んで、到着するまでが長いそうです。

 早送りされる映像内では、看護師や医師が出入りする様子が映っており、アリアネルさんとカマイタチさんも入ってくる様子が見える。

 そうして、本当に長い時間を早送りして・・・通常再生に戻ると・・・。


「あ、どもー。呼ばれて来ましたリザドラルっすー」


 彼の入室で、アリアネルさんを始めとした全員が「イラッ」とした顔で睨みつけている。

「あ♡ リザドラルさぁ~ん♡ あのぉ、女の子とのエッチな経験てぇ・・・ありますかぁ?」

 こ、声が・・・声が一層、甘くなっています!!

 わ、わわわ、わたし、私に・・・こ、ここここ、こん、こんなこえが、声が出せるんですか!?

「ないよ?」

 どこか、きょとーん。とした様子で返事をくれるリザドラルさんに、この私は顔をさらに喜び輝かせる。そして、周囲は天を仰ぐように「もうダメだ」という様子で顔を覆っていた。


「ではぁ♡ 私とこれからエッチをしてくださぁい♡」

「しないよ?」

「「「「「「しないの!!??」」」」」」


 私のエッチなお誘いは、胸をこれ見よがしに抱えて見せつつ、どこまでも甘えた声音が耳に残るように響かせて、相手に迫っているのだけど・・・。

 リザドラルさんは、「きょとーん」とした顔で、さらに首を傾げて見せながら「意味がわからない」と言わんばかりにお断りしてくれる。

 一方で、まさか断られるとは思っていなかったのだろう・・・この私は、顔を青ざめさせて口を魚のように開閉させていた。

 ・・・ん?

『しないの!!??』って反応しているのが、この私だけでなく・・・病室にいる全員なのはなぜ?


「ま、そんなことよりもー」

「そんなことよりも!?」


 リザドラルさんが、買い物袋を持ち上げて中に手を入れる。

 映像の端っこにあったため、見切れていたから気づかなかったけれど、どうやら何かを買いに出ていたため、病室へ来るのが遅くなっていたみたい。


「ほらみてー。国産の高級リンゴ! お見舞いに買って来たんよー。コレを買いに出てたんで、遅くなったんなー。ごめーん」

「り、リンゴ? リンゴぉ?」


 この私の誘いには、特になんの感情も見せずに「お断り」をしたというのに、リンゴを取り出した途端に「にかー」と笑顔になるリザドラルさん。

 これに、この私は苛立って、怒りのために震えだしている様子が見て分かる。


「さ、さ、今から剥くんで、たべよー」

「そんなリンゴ一個に!」

 買い物袋から、果物ナイフを取り出すリザドラルさんを見て、この私は堪えきれずに怒り出す。

 けれど・・・。

「これなー? 一個千円もしたんよー? 高くね? まじかー!って笑っちゃったわーッ」

 ケラケラと笑いだす様子に、この私はとうとう叫ぶようにして怒鳴り出した。


「そんなリンゴ一個よりッ!! 私の身体は魅力が無いって言うんですか!!?」

「うん。ないよ」

「ないの!!!!????」


 あっけらかん。と、何を当たり前なことを?と言わんばかりに「きょとーん」とした顔で即答するリザドラルさん・・・私自身、ちょっとショックで自分の胸とかを確認してしまう。

 これでも、男性からの視線は熱い方なんだけどなぁ・・・。

 私が涙目になりそうなところで・・・。


「んぐはッ」


 という声がしたので視線を戻してみれば、この私は口から大量の血を吐き出して、目と鼻からも血を噴き始め、そのまま白目を剥いてベッドへ倒れ込んだ。

「あらー? リンゴ、嫌いだったんかー?」

「どう見ても違うだろがッ!!」

医師せんせい!!」

 リザドラルさんの頓珍漢な解釈に、鋭くも怒鳴り声でツッコミを入れてくれるサキュバスさん。そんな二人を無視して、居合わせる医師と看護師らを呼ぶインキュバスさん。

 このやり取りに固まっていた全員が、我に返ったように動き出して・・・ベッドに倒れ込んだ私に飛びつくようにして、診察?を始めた。


「呼吸停止!」

「心音・・・脈拍・・・共にありません!」

「すぐに応援を呼べ!! それとAED――――ッ」


 ここで、病室は野戦病院のように慌ただしくなり・・・映像は終了する。


〇-映像再生。終了-〇



「こうして、ここからあなたは昼夜問わず吐血を繰り返し、その都度、蘇生措置を施して持ち直すものの・・・七日目の朝に死亡・・・からの奇跡的な蘇生・・・という流れになります」

 私は、絶対に真っ赤になっているだろう顔を、両手ではムリなので布団で覆い隠した。

 は、恥ずかし過ぎる・・・こんな理由で死んだとか・・・恥ずかし過ぎて今にも死んでしまいますよ。

「ただ、吐き出した血を検査したところ、怪異の夢毒を排出していることが分かったのです。おそらくですが、リザドラルくんにアッサリと拒否されたことで、毒が弱まり・・・あなたの本能的な部分が命がけで毒の排出を行った・・・というのが、医師たちの推論です」

 つまり、逆転の好機。

 私の本能が、ここぞで一転攻勢に出た結果・・・ということですか?

「そもそも、敵から受けた毒は致死量ギリギリでしたし、夢毒もまた強かったわけですからね。まさに、生死を分かつ死闘が、夢の中で繰り広げられていたのでしょう」

 ・・・ニャランさんに追い詰められて、でも、なんとか持ち直して、ギリギリだったけど引き分けに持ち込めた。

 まだ、その辺りの報告はしていないし、聞かれていない。

 まずは、私の状態を安定させることが優先されているから・・・。

「頑張りましたね・・・」

 そっと、私の頬に添えられるアリアネルさんの手が・・・とても温かくて、優しくて、自然と涙が―――。


≪こんにちはー。リザドラルっすけどー。入室いいっすかー?≫


 ・・・。

 ・・・ちょっと、空気を読んで欲しかったです。

「面会の約束は無かったはずですよ?」

「ふむ・・・どうする? 入れるか?」

 アリアネルさんとカマイタチさんが、どこか疲れた顔になっているのを見て、私は苦笑した。

「はい。おねがいします」

 カマイタチさんにリザドラルさんを入れてくれるようお願いして、私はすぐに身だしなみのチェックを忘れている事に気が付く。

 髪は? 乱れてないよね?・・・涎とか垂れてない?大丈夫? いや、それよりも胸の露出・・・は、大丈夫。開けていない・・・大丈夫。

 テキパキと身だしなみチェックを終えると、その様子を見ていたアリアネルさんが苦笑していた。

 これに気恥ずかしくなって、顔が赤くなる。

「いやー・・・容体も安定したって聞いたんでー」

 どことなく恐縮した様子で病室に入ってくるリザドラルさんは、四角い物体を風呂敷に包んで持ってきたようで・・・。

「待て、何を持っている」

 カマイタチさんに止められる。

「はい? あ、これ? お見舞い品でっす!」

 一応、病室まで持ってこれたという事は、安全なモノだとは思うのだけど?

 カマイタチさんがテーブルを引っ張ってくると、私から離れた位置まで運んで、その上に置くよう指示を出す。

 これに従って、四角い物体を包む風呂敷をテーブルへと置く。

 そうして、風呂敷を解くと・・・中からは木箱が姿を現した。見た限り、とても高価なモノに見えるのだけど?


「メロンです」


 ハッ!? どこかで聞いた事のある言葉ッ!!

 スッと、木箱が開かれると、目が眩むほどの光が箱の中より発生する・・・様子を幻視する。

 それはどこまでも神々しくて。

 それはなによりも美しい・・・見事なマスクメロン・・・これ、国産の高級品では!?

「一つ、二万円を超える一品にございます。・・・いや、快復に向かっているって聞いたんでー。大奮発したんよー。店長さん一押しの一品! これ食べて、早く元気になってなー」

 にぱーっていう笑顔に、私の胸の奥がじんわりと温かくなっていくのが分かった。

 ・・・ふふ。

「ありがとうございます。リザドラルさん・・・このメロン相手じゃ、私なんて霞んでしまいますね」

 ふいに、先ほど見た映像を思い出してしまい、言うつもりもなかった言葉を口にしてしまったことで、私はなにか言い訳を・・・と慌てた。

「んにゃ? 調子も良さそうだし、魅力十分可愛さオッケーやで!」

 親指を立てて、グゥーッド!と言わんばかりの姿に、私は面食らった。

 先ほどの映像で見た反応よりも、あきらかに感情が豊かに見える。映像では、終始「きょとーん」としていたから、同一人物かな?と疑ってしまう。

「あの、その・・・今の私は、魅力的ですか?」

「うん。ふつう」

「ふつう!?」

 ふ、普通って・・・リザドラルさんの基準では、どの程度なの!?


「あ、もしかして魅力ない。って言ったの覚えてる? いや、ごめんなー? 俺、女の子の猫なで声っていうの? こう、甘い声音?っていうのが生理的にダメなんよー」

「・・・え?」

「こう・・・耳に粘つくっていうか? こう、背筋がゾワッと来ちゃってさー。ダメなんよ。マジで」

 そ、そうだったんだ・・・。

 それなのに、嫌そうな顔を一つもせずに「きょとーん」と・・・あ、アレってポーカーフェイスだった!?

 私が一人で結論を出していると、アリアネルさんが確認するようにリザドラルさんへ尋ねる。

「もしや、樹木憑依霊に毒を打たれた彼女の口に、麻痺毒を含ませたのは・・・」

「あー・・・あの声音で腕を絡ませてこようとしたんで、思わず・・・そのー、気持ち悪かったんで、条件反射でやっちゃいましてー・・・ええっと、ごめんなさい」

 じゃあ、麻痺毒で夢毒の侵攻を遅らせることができる。とか、そういう狙いがあったわけじゃなくて、私の毒に浮かされた声音が気持ち悪かったから・・・の行動だったんだ?

 ・・・・・・・ま、まぁ・・・その、ね?

 ほら、女性だって男性のアレコレが生理的にムリ。っていう人はいるわけだし? 男性にだってそういうのがあってもおかしくはない・・・よね?

 私、リザドラルさんを誰から擁護しているんだろ?

「でも、ホッとしたんよー。今はいつも通りみたいだからんなー。やっぱり、そっちの方がカワイイで!」

 ・・・。

 ・・・・・・んー。

 ・・・もぅ。

「あ、当たり前です! 毒でよく分からない事になっていただけなんですから!・・・でも、おかげさまで正気に戻れたみたいなので・・・ありがとうございました」

「そうなん? なら、よかったわー。元気になったら、また先輩としてがんばるかんねー」

「はい。また、よろしくおねがいしますね!」

 こんな会話している横で、アリアネルさんとカマイタチさんが寄り添っていた。二人とも、私たちを見て何かを懐かしんでいるのが分かる。

 ・・・私たちも、この二人みたいな関係になれるかな?

 ・・・。

 ・・・・・・ん?

 ・・・・・・・・んんん???

 不意に、自然と思ったことの意味を考えて、私は顔が真っ赤になった。

 このせいで、なにか異常が出たのでは!?と、また皆さんを心配させて、ご迷惑をおかけすることになってしまった。

 ごめんなさい。


 リザドラルさんが退室したあとで、顔が赤くなった原因を報告すると・・・アリアネルさんは子供の成長を喜ぶお母さんのような笑顔で、私の頭を優しく撫でてくれた。





 さらに三日が経過した。

 この三日の間に、私は夢毒との戦いを報告書にして提出し、アリアネルさんがコレに目を通すと・・・いろいろと腑に落ちた様子で息を吐いた。

 特に何かをいわれることはなく・・・ただ「本当に、頑張りましたね」と抱きしめてもらった。


 そうして、再び大量の検査を終え、診察も済んだ午後に・・・支社長の紅葉朱雀あかばすざくさんと、バース・パーソンのシェルさんが車椅子を押しながら病室を訪ねてくれる。

「やぁ。見舞いが遅くなってしまったね」

〔無事に峠を越え、こうして再会できることを嬉しく思うわ〕

 二人が、私の無事を喜んでくれて、私も二人にお礼を述べる。

「さて、色々と話をしたいところだけど、まずは車椅子に乗って欲しい・・・移動しながら話をしようか」

「どこかへ、行かれるのですか?」

〔ええ。ずっと病室に居るのも退屈でしょう? 気分転換は大事ですからね〕

 なるほど、散歩かな?

 確かに、ずっと病室にいるし、外に出ると言っても医療施設内で検査を受ける程度だから、散歩をするなら嬉しいかも。

 まだ、お世話になった人たちに挨拶も出来ていないし・・・私への面会も制限されているらしいし。

「まだ歩くのは厳しいと聞いていたが・・・この短期間でここまで回復しているとはね」

 ベッドから出るべく、脚を震わせながら床のスリッパに足を乗せる。

 数日のうちに、ペンで文字を書けるぐらいには回復しており・・・まだ歩くのは厳しいけれど、こうして足を動かすことはできるようにもなった。

 もう数日もあれば、しっかりと動けるようになるだろう。と言われている。

 今の私は、マント、グローブ、ブーツなどは脱いで衣装棚にしまってある。ストッキングも脱いであるけれど、ボディコン衣装と下着はそのまま・・・そしてさっきまで検査をしていたので患者用の服を着たままになっている。

 体を冷やしてはいけない。と、春先用のカーディガンを上から羽織ってもいる。まぁ、季節は春ではないけれども・・・。

 朱雀さんに手を貸してもらい、車椅子へと移動する・・・と、脚に薄地の毛布を掛けてもらった。

「では、行こうか」

「はい。お願いします」

 車椅子を押され、病室を出る。


「・・・まずは謝罪を。本当にすまなかった・・・秘密結社メシア内ならば、安全であると思っていた私の落ち度だ」

「え? いえ、そんな・・・」

「これほど簡単に侵入されてしまうとは、予想もしていなかった・・・今日まで、連中が積極的に攻撃してこなかったこともあるが・・・やろうと思えば、いつでもできたのだと思うとね? 連中を侮り過ぎていたと、反省するばかりだ」

 う・・・確かに。秘密結社メシア内であれば大丈夫。と、私も思っていた。・・・でも、それはみんなが同じように思っていた事だと思う。

〔我々も、敵に侵入されることはない・・・そう考えていましたが、今回の襲撃で多くを学ぶこととなりました。現在、技術班が総力を挙げてシステムアップデートのために研究を加熱させています〕

 ・・・ほ、ほどほどにお願いします。

 熱中し過ぎて、倒れたら元も子もないですし・・・。

「また、職員の練度も向上させる必要がある・・・アレだけの実力者が、君一人を奪うために続々と出て来た以上、今のままではダメだからね・・・強化訓練メニューを試行する予定だ」

 みなさん。大丈夫でしょうか?

 通常業務もある中で、戦士としての訓練にさらなる訓練が重なるとなれば、過労で倒れる方も出るのではないでしょうか?

〔確かに・・・ナンシー。ランボー。ドタマ。ニャラン。ワンゴー?なる人間憑依霊が現れましたが、これら全員で今回の襲撃を受けていたならば・・・間違いなく、ナイトメアさんを奪われていたことでしょう。事実上、ニャラン一人に社内へ配置していた部隊が全滅しているわけですからね〕

 そうだ。

 カマイタチさんと戦い、イデスバリー・キャノンで一度は社外へ吹き飛ばしたのに戻って来て、片手間のように私の守りについていた皆を薙ぎ倒して見せた・・・。

 そもそもの実力が、桁違いなのは明白だから・・・。

「あのドタマという男も手強かった。私の攻撃を適切に対処し、まったく隙を見せなかったからね。ただ唯一の隙を見せた瞬間に、全力の一撃を叩きこんだが・・・ヤツにまで逃げられた・・・ふふ。化け物揃いとはこのことだ」

 ・・・フェニックスさんでも、厳しい相手なんだ。

 ニャランさんが言っていた・・・。

 今のイデスバリー戦士たちは『光』が弱過ぎてヤル気が出ないのだ。と・・・。それが、今日までの平穏な生活を支えていたんだ。

 私が、その平穏を崩してしまった・・・のだとすれば、申し訳ない気持ちになる。

 でも・・・。

「たぶんですが、私を巡って争奪戦になっているのだと思います」

「・・・争奪戦?」

「はい。私は、かつて外を歩けばどこにでもいた『光』の再来らしく、私の『光』は彼らの身体を産むに相応しい『光』なのだそうです・・・ですから、私に自分の転生先となる身体を真っ先に産ませたいと考えて、早い者勝ちになっている。と、思うんです」

 どれだけ頑張っても、一人に付き一人までしか産めないはず・・・双子とか三つ子とかが可能だと、話しは変わってくると思うけど・・・。

「ふむ・・・今や世界で一人だけの『光』だからこそ・・・協力するのではなく、争奪戦をしているわけか・・・」

「あ、えっと、ニャランさんと夢で戦った時に少し話をしまして・・・その感想でしかないんですけど」

〔いいえ。とても貴重な意見です。参考にしつつ、敵の行動パターン解析に加えましょう。とはいえ、まだまだ情報不足なので、今後も地道に集めていかねばなりませんね〕

「楽観視はできないが、連中が一斉に襲撃してこなかったことを考えると、可能性は十分にあるね」

 楽観視はできない。

 いずれ、私を個々で強奪するのは難しい。と判断すれば、協力して襲い掛かってくるようになるはず。

 だって、逃げる時に助けに来た人がいるのだから・・・きっと、それほど遠くない将来には。


「そういえば・・・社内の修復などは大丈夫でしょうか? 亀裂が入ったり、電気が落ちて非常灯に切り替わったり、震度5を超えるような揺れが起こったりとしていましたが・・・」

 イデスバリー・キャノンで大穴も開けてしまいましたし・・・。

「うん? うん。それらは大丈夫。すでに補修作業は終えているよ。今後、設備強化が検討されているが、その辺りは技術班次第だね」

〔先にも述べた通り、今は技術班が全力で取り組んでいます。本社も、今回の件を重大事件として、すでに全世界の支社へ通達済みですし・・・怪異への対策強化も順次進めていく事となります。が、今すぐに実行できることでもないため、時間はかかるでしょうね・・・とはいえ、対岸の火事にしておけることでもありませんから〕

 ・・・そっか、もうみんなが次を見据えて動き出しているんだ。

 私も、早く身体を回復させて・・・今度こそ、みなさんの足手まといにならないよう強くならないと。


「さて、話しはここで一旦終わりにしよう」


 朱雀さんが言うと、立ち止まる。

 話に集中していて、どこへ移動しているのか?などを気にしていなかったけれど・・・ここは、食堂?

〔では、朱雀・・・ちょっと確認してくるわ〕

「はい、シェル」

 シェルさんがフワーッと飛んでいくと、食堂の入り口から中を覗き込むようにしている。

 なんだろう?

 ちょっとお茶を飲む・・・という雰囲気ではないように思うけれど?

〔準備はいいみたい。さぁ、入りましょうか〕

「わかりました。では、中に入るとしよう」

「え? あ、はい・・・」

 なんだろう? なにがあるんだろうか?

 思わず息を呑み、緊張で身体が強張ってしまう。

 そうして、食堂の入り口が開き・・・朱雀さんに車椅子を押されて中へと入ると・・・。



 パン! パン! パン!

 数多くのクラッカーから破裂音が鳴り響いて・・・。

「「「「「「秘密結社メシア日本・東京支社へようこそ! イデスバリー・ナイトメア。夜乃雪乙ちゃん!」」」」」」

 そこには、多くの人が集まって・・・私を歓迎する言葉を合唱するように重ねてくれた。



「え? え?」

 困惑している私に、朱雀さんが苦笑しつつ教えてくれる。

「新人歓迎会だよ。本来はもっと質素にやるんだけれど、今回は君の生還祝いと、快復祈願を兼ねているんだ。ふふ。想像以上に盛大な歓迎会となったね」

〔みんな、三日前から張り切って準備をしていましたからね・・・食材なども大量に仕入れていましたし・・・〕

 三日前から? 私の歓迎会に、生還祝いに、快復祈願まで・・・。

「ん? どうかしたのかい?」

「え? いや、だって・・・わたし・・・そんな、みなさんにご迷惑をかけてばかりで・・・」

 そうだ。

 私が『リバースデイ』を迎えたことで、怪異が活性化して、連日のように怪異の対処に追われ、終わったら通常業務に追われ・・・。

 襲撃されたときだって、私を守ってくれていたのに・・・自分から敵に掴まりに行くような事をして・・・。

「そんなことはないさ・・・前にも言ったが、君は本来、新人として実戦に出る段階にはなかった。人手不足を言い訳に、私が判断した結果・・・君を危険に晒してしまった」

〔それに、迷惑をかけているのは私たち異世界人の方です。あなたは、私たちの事情に巻き込まれながらも、できることを。と頑張ってくれました・・・迷惑など、何もありはしません〕

 そ、そうなのかな?

「そうだぞーッ! むしろ勇敢が過ぎるってもんだ!」

「そうだね! 私なんて初陣の浮遊霊相手にビビりまくってたもんだよ!」

 私の考えていることを読まれたように、クラッカーを片付けている皆さんが笑顔を向けて、歩み寄ってくる。

「どこぞのトカゲ野郎にそそのかされて変身したんでしょう?」

「そんで、怪獣怪異と戦えとかさぁ・・・」

 みんなが、一斉にリザドラルさんを睨み出すと、当の本人は「うへへへへ」と笑って誤魔化そうとしている。

「それで、脚を切断して首を落したんだ・・・凄すぎだって話しだよ」

「俺、初めて怪獣怪異を見た時は、マジで倒し方とか分からなくて逃げたし!」

「そりゃ、あんなデカいの倒すなら光の国の戦士にお願いする以外思いつかないって・・・」

「ホントにな!」

 集まってくるみなさんが、それぞれに思い出話を語ってくれる・・・最初は誰でも同じだ。って言ってくれている様に。

 

「私が初実戦を迎えたのは、研修を終えてから一か月後ぐらいだったわ」

「初めて浮遊霊と戦った時なんて、シャボン玉じゃん!てナメて掛かったら毒喰らって大変な目にあったなー」

「擬態霊のビッグサイズアニマルを攻撃できなくてねぇ・・・毒にやられてから、後悔したものよ」

「デカいヤツには騙されないけど、マジでその辺のモノに擬態しているヤツは気づけないからなぁ」

「人間憑依霊に初めて襲われた時とか、怖くって腰が抜けて泣いちゃったわ」

「あいつら、とにかく体をまさぐってくるからな・・・う、あの時の感触を思い出しちまった」

「俺らの姿が見えてるっていうなら、性別ぐらいすぐに分かれよ。って思うわ・・・くそ」

「私、人間憑依霊のせいで人間が怖くって、三か月くらい引きこもってた・・・」

 

 次々に、自分の体験談を語り、それらでみんな盛り上がっていく。

 懐かしむ人。怒りを露わにする人。後悔に苦笑する人。恐怖を思い出して顔を青くする人。気持ち悪そうな顔になる人。様々だけど・・・私が経験したことに似た話しも聞こえてくる。

 ・・・みんな、同じような経験をしている。

 それでも、笑顔を取り戻したんだ・・・それは、きっと共に戦う仲間のおかげなのかも。


〔ナイトメアさん。ここに集まっている皆さんは、前世の内に我々の協力要請を受けてくださり、その説明を聞いてから転生をしたことで、記憶はなくとも自身のやるべきことを知識と経験で認識されています。だから、戸惑いながらも戦いに身を投じることができるのです・・・しかし、あなたは違う。何もかもが奇跡のような偶然から、再誕を果たしました・・・本当に何も知らず、分からず、私たちの事情に巻き込んでしまった事を・・・本当に、申し訳なく思っています〕

 シェルさん・・・。

「いんやー。俺もごめんなー? 調査員として、いろいろ配慮に欠けてたけれども、これから一緒に頑張っていこうぜッ!って、あだだだ。痛いっすわーッ!」

 リザドラルさんが空気読めない感じで割り込んできたことで、皆さんから「お前は黙ってろ」と袋叩きにされている・・・だ、大丈夫かな?


 すると朱雀さんが、ジュースが注がれているグラスを私に差し出しながら・・・。

「多くの奇跡を経て、私たちは巡り合った仲間だ。共に戦おう。この再誕して得た人生を『幸せだった。』と、最後に笑えるように」

 


―――あなたの命が終わりを迎える日に、歩んだ道が『幸せ』だったと思えるように―――



「・・・はい」

 私は差し出されるグラスを受け取って、朱雀さんの言葉が、ただ嬉しくて・・・涙が溢れた。


「み、みなさん! これから、よろしくおねがいしますッ!!」

「「「「「「おおーッ! よろしくーッ!!」」」」」」


 みんなが、その手に持っているグラスを掲げながら、私を『歓迎』してくれた。


「よし。それではみんな! 新しい仲間にッ・・・乾杯ッ!!」

「「「「「「かんぱーいッ!!」」」」」」


 頑張ろう。

 まずは、皆さんの顔と名前を覚えることから始めよう。

 そして、いつか私が先輩となった時に、後輩へ、多くを教えられるように・・・。


 私は、頑張る。って、決めました。 





次回は、若手。を予定しています。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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