12 負けたくない
こんにちは。こんばんは。
この作品は、性的描写、不適切、不快な表現が多量に出てくると思われますので、お読みの方はご注意ください。
あと、ご容赦ください。
最後までお楽しみいただけたら、幸いです。
〇-夢-〇
「おはようございます!」
今日のヒーローショーに出演するスタッフが集まる控室へ、私、メシマンズー・ナイトメア役の夜乃雪乙は挨拶のために訪れた。
「おう。おはよう! 今日もよろしくね!」
「はい! よろしくお願いします!」
そうして、丁寧にあいさつして回り、控室を出ようとしたところで・・・。
「はぁ~い! みんなちゅうもぉ~く!」
私のマネージャーであるナンシーさんが、今日も元気に入室してくると・・・美女を連れている。この女性、見たことがある。
「本日から、メシマンズー四天王の新キャラクター! ナマヤンケー・クーニーを演じてくれるニャランちゃんでぇ~す♡」
「みなさ~ん。はじめましてぇ。ニャランです。今日からよろしくおねがいしますねぇ~」
それはとても美人な方であるが・・・数年前にテレビでスキャンダル報道されていた女優さんだとすぐに気づき、しかし誰もそれを顔に出さずにいるので、私も顔に出ないよう気を付けつつ挨拶するために立つ。
「初めまして! 夜乃ユキトです。メシマンズー・ナイトメア役を務めさせていただいております! よろしくおねがいします」
「ええ。こちらこそ、よろしくね♪」
頭を下げたあと、握手をして部屋を出る私は、スキャンダル報道があったと言っても実力派女優とヒーローショーで共演できることに興奮していた。
女性出演者用の控室へ入り、すぐにヒーローショー用の衣装へ着替えて準備を進める。
「って!! ちがあああああああうううううううううう!!!!」
「ひゃああああああ!!!」
突然、女優のニャランさんが控室に突撃してきたことで、私は驚きのあまり変な声で悲鳴を上げてしまった。
だけど、実力派女優の先輩に対する態度ではないと、すぐに何が悪かったのかを尋ねる。
「 ごめんなさい! 私、なにか挨拶を間違えましたか!!?」
「そうじゃないわ!! なんなのこれ!!? なに!? ヒーローショー!? なんで!? メシマンズー・ナイトメアって何よ!? 私がナマヤンケー・クーニー? 意味わかんないわッ!!」
怒涛の叫びに、意味わからないのは私も同じなんですけど・・・。
「ど、どうされたんですか?」
「実力派女優!それはいいわ。OKよ! どんとこい。でもね? スキャンダルってなに? この私が、どんなスキャンダルしたって!?」
・・・え? えーっと。
「不倫報道だったかな?と」
「どういう偏見だ!! あんたの訳あり女優に対するイメージってどうなってんのよ!!」
「ど、どうって言われても・・・え? 芸能界でもそれなりに多いかな?って思いますけど・・・一番はたぶん・・・薬物?」
「・・・まぁ、そうね」
???
ど、どうしたんだろう?
「つか、いい加減に目を覚ましなさいよ・・・自己防衛まで掛けてるとか、マジで厄介だわぁ」
額を指で小突かれて、そして―――。
「夢幻一刀流・抜刀術!!」
私は即座に刀を引き抜いて、敵を攻撃する。
しかし、敵も即座に跳び退いて回避した。
周囲に眼を走らせれば、控室は消え去り・・・ウィアード・フィールド内の社外に変わっている。
「やれやれ・・・ここまで強い精神汚染を先制されるとはね・・・危うく呑まれるところだったけど、強めの毒を大量に打っておいてよかったわぁ~」
それはもう、深いため息を吐かれて・・・私は顔が真っ赤になっていることだけは分かった。
「わ、私もちょっと戸惑っています」
「でしょうね・・・自分自身に暗示のようなものを掛けて、完全に精神防衛の一部になっていたもの・・・こっちの精神汚染を弾いて、逆に汚染してくるとか・・・あんた何者よ?」
わ、分かりません・・・。
「しかしまぁ・・・とんでもない精神防御には、参ったわよ・・・誤算も甚だしいわ」
よく分からないですが・・・私がこの人に攻撃を受けていた。ということだけは、理解した。
引き抜いた刀をしっかりと構え直し、私は問う。
「あなたのお名前は・・・ニャラン。さん。で、よろしいですか?」
「そうよ。ユキトちゃん」
・・・もう一つ確認しておこう。
「あの、ニャランさんは男性だったと思うのですが・・・」
今、私の目の前に居る人物は紛れもない女性だ。
黒髪の綺麗なロングは太ももまで届く長さ・・・そして、スレンダーと言っても間違いではない体形は、適度な運動によって出来た筋肉を仄かに浮き彫りにしている。
それでいて、胸も形が分かるぐらいには大きい。着ている服が薄地というのもあるとは思うけれど。
「それは憑依している人間の身体がね。私・・・怪異転生前は女だったの。肉体を失って怪異化しても、自分が女だったことは忘れてないのよ。だから、こういう夢空間では、女として立てるから好きなのよね・・・まぁ、身体はモデル雑誌からのイメージでしかないけど」
・・・そうだったんだ。
「もう一度、人間の身体・・・自分だけの女としての身体が欲しいから、男に憑依してイデスバリー戦士に身体を産んでもらおうと、結構我慢しているのよ」
・・・うん?
「それなら、ご自分で転生する身体を産めばいいのでは? 女性に憑依して・・・」
「それはもう実験済み・・・こっちにもマッドサイエンティストみたいなのが居てね。そういうのがやったことあるんだけど・・・ダメだった。転生を試みると、心肺停止して速攻で死んでしまうのよ」
転生すると、心肺停止する!?
「結論はシンプル。ただの人間では弱過ぎるということ。そもそも、異世界式イデスバリーの時点で地球人には強すぎるみたいだからね・・・怪異からの人間転生ともなると・・・って話し」
「そうだったんですね・・・だからって、私ですか?」
「別に? ハッキリと言えば、あなたでなくてもいいのよ。その辺の適当なイデスバリー戦士に仕込んで、身体を産ませればいいだけだからさ」
「なら!」
「ナンシーから聞いているんでしょ? 魔王の顛末」
「それは・・・」
「胃袋から生まれた体は、胃酸でボロボロ。腸から生まれた体は悪臭。男のアレから生まれた体は成功だと言えるけど・・・アレ、どうやって仕込んだか分かる?」
・・・いや、確かに・・・そう言われると、どうやったのか想像もできない。
「先に言ったマッドサイエンティストみたいなヤツがね? テキトーに捕まえた戦士が男だったから、アソコに・・・まぁ、戦士は激痛に絶叫し、マッドは狂喜しながら続行し、そうして誕生した魔王は・・・強かったわ」
自分の頭から血の気が引いていく感覚がする。
「結局、安定した身体を得たいなら、女性の・・・って結論になったわけ・・・そうすると、手っ取り早く仕込む手段としては、男に憑依して実行するのがいいわけだ」
・・・だからって・・・そんな。
「私以外にも、人間への回帰を目指して男に憑依する女霊は多かったわ。昔は、外を歩けば光に溢れていたからね・・・まぁ、こうして間近で見れば、あなたほどの『光』を放ってもいなかった気がするけど」
「・・・わ、私じゃなくてもいいのなら、別の方を狙う方が楽だったのでは?」
「楽なのは確かだけど・・・今の戦士たちは『光』が弱い・・・つまりは、魅力がない。そして、私の身体を産むには相応しくない」
「ふ、相応しいって・・・」
「人間だってそうじゃない? 自分を飾る宝石は、自分に相応しい輝きを持つ物を厳選する。ちがう?」
「ひ、否定はしません」
「そう。わたしたちもそうなのよ。自分の転生先となる肉体を産む母体は、自分に相応しい『光』を選びたい。厳選したい! だって、世界はあんなにも『光』に溢れていたのだから!!」
「だから、私なんですか・・・」
「いつだってそこにある・・・そう思ってのんびりと厳選していたら・・・いつの間にか『光』が見えなくなって・・・私たちは後悔したわ。だって、人間的に言えば、着飾りたいならその辺の石を拾って服に付けていろ。と言われているようなモノだもの」
ニャランさんは、足元に転がっているタイルの破片を拾って、それを自分の耳に添えるように寄せる。
「こういうタイル片の方が、ただの石ころよりも見栄えはいい。けれど、こんなもので着飾らないといけないなんて・・・私はイヤだ。人間だってそうでしょう?」
宝石が、いつの間にか流通しなくなって、どこにも見当たらなくなって、路上に転がっている石を使って着飾れと言われれば、確かに嫌だとは思う。
「でも、どこを探しても石ころみたいな戦士ばかりで、こっちもやる気をどんどん失い・・・今では転生を目指して男に憑依していた子たちも、軒並み女性へ憑依して地球生活を楽しんでいる始末」
「ニャランさんは、諦めきれなかったんですね?」
「その通り・・・もう一度、この世に『光』が再誕する日が来る。そう信じて待ち続けて・・・あなたが現れた」
息を呑む。
私を、絶対に逃がさない。そういう目を向けてくる。
「これは奇跡。今一度、訪れたチャンスは・・・もう二度と来ないかもしれないわ」
どこか、絶望した人が再び立ち上がった時に見せる強い意志を、その両目に漲らせている。ただその目に見据えられて、私は一歩・・・後退る。
「わ、私は・・・あなたの転生を手伝うつもりも、道具になるつもりもありません!」
「そうよ。受け入れてはダメ」
一瞬、何を言われたのか分からなくなった。
「え?」
そんな声を漏らしてしまう。
「先にも言った通り、元は女なの。だから、女の立場からすれば、そんなのは認められないわ。ふざけんな!って話しよ」
「そ、それなら・・・」
「しかし、今の私は怪異なわけだ。もう一度・・・人間へ転生したい。自分だけの身体を得たい。その思いが、私を動かしている・・・ま、他の連中は何を考えているのか分かんないけどね」
・・・少なくとも、この人は私の気持ちを理解した上で、行動する。
なら、私の返答はただ一つ。
「あなた方が何を考えているかは、この際どうでもいいです。何度でも言います。私は、あなた方の道具にはなりません」
「・・・うん。それでいい」
強い意志で、敵を退けていかなくてはならない。
「っと、いうことで!! これからあなたを『エッチ大好きドスケベ娘』にしてあげるわ!!」
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・デジャブ。
「それ、宣言する必要ありますか?」
「あるわ」
いや、宣言する必要の有無じゃなくて、そもそもさっきまでの話しからどうしていきなり『エッチ大好きドスケベ娘』になってしまうのかが分からないんです!
ナンシーさんも似たような事を言っていたことと、私自身、ニャランさんが何を言っているのか理解できずに混乱してしまった感じ。
「これから、私があなたに何をするのか? あなたは自分が何をされるのか? 想像してごらんなさい?」
「そ、そう言われても・・・」
テレビの報道などでも問題になる性的被害は多くあるけれど、エッチが大好きになるような行為とは? 全然想像できない。
「悩め。悩め。若人よ・・・それがドスケベ娘への第一歩よ~」
「は! 罠!!」
な、なんという巧妙な!!
すぐに刀を構え直して、ニャランさんを睨み返す。
「ふっふっふ・・・いいわね。やっぱりあなたが欲しいわ」
と、ニャランさんは鞭を私へ放ってくる。
この動きに合わせて、刀を振るい叩きつけて払う。社内での戦闘時に比べると、鞭の動きが遅く感じられるのは・・・夢空間だから?
「・・・ふーん。夢だからかしらね? 動きがいい」
ニャランさんも、鞭を払われるとは思っていなかった様子。これなら撃退できるかもしれない。
私が強気になったところで、ニャランさんはもう一度同じ動きで鞭を放ってくる。
それはさっきも見た。と、刀で叩き払うためにタイミングを見計らう・・・も、私の動きが遅れている?
鞭は、刀をすり抜けるようにして超えてくると、私の左・・・二の腕に巻き付いてきた。
「ふむ・・・もう少し速くすると、対応できなくなりそう・・・ネッ」
グィッと鞭で引っ張られ、負けないように踏ん張って堪える。
けれど、もう片方の腕からもう一本鞭を出して私の足へ巻き付けてくると、これに引っ張られた私は倒されてしまった。
起き上がろうとしたところに、ニャランさんが迫ってくる。
「そぉら! 早く起き上がらないと襲っちゃうぞ~♪」
あ、遊ばれている!?
「ふざけないでください!」
下半身に勢いをつけて地を蹴りつつ、腕で地を押し上げるように回転して身体を起こし、迫るニャランさんを刀で切り付ける。
しかし、刀を持つ手首を掴まれると捩じられてしまい、痛みなどで刀を取り落としてしまった。
と、間髪入れずに私の背に腕を回して抱き着いてくる。
「なにを!」
「こうするのよ」
言いつつ、私の頬に舌を這わせて唾液を塗り込んできた。
「ひぃ!!」
唾液の温さを気持ち悪く思っていると、ジュゥゥゥという音を立てて唾液が蒸発していき・・・私の中に浸透していく感覚と・・・脳裏にイメージが浮かぶ。
私が、ニャランさん?と思われる人影の前で、頬を赤く染めながらマントをゆっくりと脱ぎ、捨てる様子がイメージされる。
すると、私のマントが外れて勝手に離脱した。
「なんで・・・」
「マントを脱ぐイメージをしたでしょ? あなたが念じたことよ?」
「わ、私・・・そんなことを念じてなんて・・・」
「したのよ。マントを脱ぐ。とね」
「し、した・・・」
そんな事を念じた覚えなどないけれど、私はこの抱き着かれている状態から抜け出すためにニャランさんの足を踏みつけることにした。
けれど、ニャランさんはすぐに私を開放して距離を取る。
「うんうん。マントが無くなるだけで、ずいぶんと露出が増えるわね」
「あ、あなたがそうさせたんでしょう!」
「ちがうわ。自分でそうしたのよ」
そんなはずはない。
私はマント拾い上げて、再び装着する・・・けれど、すぐに外れて離脱してしまう。
「な・・・これは・・・」
「ふふ。さて、次はグローブにしようか? ブーツにしようか?」
取り落とした刀を手招きして、この手に戻す。
それから、再び刀を構え直した。
「もう、これ以上はさせません!」
「がんばってね♪」
ニャランさんは再び鞭を振るって攻撃を仕掛けてくる。それらを刀で叩き払いながら、私は距離を維持するべく動く。
だけど、ニャランさんは私との距離を詰めながら鞭を振るって足止めしてきた。
刀で応戦しても、鞭の速度が早くて捌き切れず・・・刀に鞭が絡め捕られて奪われてしまい、続けて両手首に鞭を巻き付けて来て、さらに私との距離を詰める。
と、鞭の取っ手?と思われる部位が杭のように変形して、二つの杭は地面へ左右に投げられる。
これにより、私の両腕はそれぞれの方向に引っ張られて、杭が地面に突き刺さったことで勢いに抗いきれず仰向けで倒れ込む。
後頭部を地面に打ち付ける寸前で、ニャランさんの足が割り込んだ。
「後頭部をぶつけるのは、危ないモノね」
妙な優しさ?を見せてくるけれど、すぐさま私の上に跨ってくる。そして、顔を私の胸元に寄せて来た。
「すっごいボリューム・・・あなた、本当に16歳?」
「そ、そうですけど・・・」
私の胸を間近でジッと見つめるニャランさんは、そして露出している上胸に舌を這わせてきた。
「くぅ・・・」
気持ち悪さに呻いていると・・・再びイメージが浮かんでくる。
今度は、衣装のロンググローブをゆっくりと、相手に見せるように艶やかな表情で脱ぎ、コレを捨てている・・・というイメージ。
「まだまだ」
続けざまに、鎖骨から首元まで舌を這わせてくると、続けて新しいイメージが浮かんでくる。
さらに衣装のニーハイブーツを脱ぐために、私は丈の短いスカートより見える太ももを艶めかしく指でなぞりながら、下着が見えるように脚を高く持ち上げて、頬を赤く染めながらもグローブ同様に脱いで、捨てる・・・イメージ。
「こ、こんなイメージが何だというんですか!」
手首に巻き付いている鞭から手を抜こうともがいた時、両手がスルッと鞭より抜け出した。
コレをチャンスだと思い、私に跨っているニャランさんを押し退けるべく、その身体を掴んで押し上げる。
「グローブが・・・」
見れば、ロンググローブが脱げて、素手になっている。
私の手首を縛っていた鞭を見れば、グローブを巻き付けたままだ。
ニャランさんに見せられたイメージが私の念となって、戦士としての衣装が脱げてしまっているのだと、理解する。
「ふふ。そんなに嫌なら退いてあげるわよ」
私に押し上げられて、上体が反れていたニャランさんは素早く私から退いて距離を取る。
すぐに体を起こして立ち上がり、刀をもう一度呼び戻してから構え直す。先ほどから、まったく何もできずにいるけれど、唯一の武器を手放すなんてできない。
「ほら、また攻めるよ?」
私に向けて再び距離を詰めてくるニャランさん。
私も、距離を離すために走りだし・・・て、ブーツが脱げて転んでしまう。
「いッ」
地面に手を付けて、なんとか受け身を取る事は出来たけど、中途半端に脱げたブーツのせいで立ち上がる事も出来ず、そのまま背中よりニャランさんに抱き着かれて、正面へと回ってきた両手に胸を揉まれた。
「うーん。いい手応えねぇ!」
「この!」
身を捩りながら刀を振るも、ニャランさんには当たらず・・・手首を掴まれて再び捻られ、刀を取り落としてしまった。
と、うなじ辺りから首をなぞるように舌を這わせて耳元で囁く。
「そろそろ。エッチな気分になって来たんじゃない?」
グローブもブーツも脱ぎ捨てて、最後に残った服・・・衣装の胸元に手を当てて・・・自分から胸を隠すソレをゆっくりと下へ引きながら・・・指を胸と服の隙間に入れつつ剥がすようにして捲り、隠された部位を露出させて、ニャランさん?と思われる人影に見せている姿がイメージされる。
と、私の脳裏に染み込むように、イメージが消えなくなる。
「べ、別に! エッチな気分になんてなりませんよ!!」
激しく暴れてニャランさんを振りほどくと、邪魔なブーツを乱暴に掴んで足から引っこ抜き、投げ捨てた。
ストッキングは残ったモノの、ほとんど素足と大差ない。
それで立ち上がり、刀を構えてニャランさんを睨む。
「さっきから、こんなイメージばかりを見せて、何がしたいんですかッ!!」
「ふふ。あなたをエッチが大好きにしたいだけよ。ドスケベな娘に・・・ね?」
「ね?っじゃ・・・」
ニャランさんは、自分の胸を指差している。
しかし、彼女の胸に何があるでもない・・・なら? 私の胸?
視線を落として、胸元を確認してみれば・・・服の胸回りが脱げていて、胸が完全に露出している。
「な!」
すぐさま左腕で胸を抱えるように隠して、刀を手放し、右手で服を元に戻そうと奮闘する。
「な、なんで・・・なんで・・・脱げちゃう・・・」
いくら直しても、スルッと胸回りだけが脱げてしまう。
「あらあら・・・胸回りだけを脱がすなんてねぇ~・・・エッチだわ~」
え・・・あ・・・さっきのイメージが・・・私の脱ぐという念となって・・・。
ここまでに脳裏で浮かんできたイメージがスライドショーのように繰り返し表示され始める。まるで、このイメージを忘れさせないようにするような・・・。
わ、私が、望んだことじゃないはずなのに、こうなることを望んだように思えてくる。
「これが夢毒というものよ? 自分の意志では無いはずなのに、自分が望んだように浸透させていく」
「・・・これを、さらに繰り返していくんですか?」
「そう。そうして毒による汚染が完了する時、あなたは『エッチ大好きドスケベ娘』になっている」
「・・・こ、こんなことをして、なんになるんですか・・・」
「そうねぇ・・・ストレスを無くすことかしら? なにせ、精神への負荷は健康を左右する。すなわち、私の身体を産むリスクの軽減につながるわ。嫌なことを夢毒で好きなこととして思考を誘導し、あなたの嗜好を変えるのよ」
「そ、そんなもの! 受け入れるわけがありません!!」
「受け入れる必要はないわ。最終的に、あなたは受け入れているのだからね・・・まだまだ汚染度も足りてないし、もっともっと汚染する必要はあるけれど・・・それも時間の問題よ」
戦闘経験値の圧倒的差。
今の私では戦士として、まったく歯が立たないレベル差がある。
それでも、諦めることはしない。したくない。
私は、左腕で露出しっぱなしの胸を隠しつつ、手放した刀を拾い直して、構える。
自分の身を守るためにも、今度こそ負けたくない。
私は戦う。
戦って、この身を守って見せる。
「その心意気は認めるけれど・・・」
その手に、新たな鞭を取るニャランさんが、私の眼を見て言うと・・・。
「ッ!?」
私の足に鞭が巻き付いている。
見れば、地中から植物のように飛び出している・・・ハッとして、グローブが巻き付いたままの鞭を見れば、幾重にも木の枝のような鞭が生え出して、地中に潜り込んでいる様子が見えた。
と、ニャランさんが手にする鞭が私の右手首から肘までに巻き付き、キュっと絞められることで痛みに呻くと共に刀を再び落としてしまった。
「ぁぐ」
「無駄よ。あなたも理解している通り、私との戦闘経験値が段違い。越えられない壁ってヤツがあるの」
靴音を響かせて、どこまでも余裕のある様子で私に歩み寄ってくると、胸を隠している左腕を掴まれて剥がされる。
抵抗しようと右腕を動かすも、いつのまにか地中からさらに鞭が飛び出して、私の右腕を縛り拘束している。と、足から脚まで登ってくる鞭が、腰まで巻き付いて身体を拘束していた。
「い、いつのまに・・・」
「ほらね? もう諦めなさいな」
そして、掴まれた左腕をそのまま持ち上げられると・・・ニャランさんは屈んで顔を私の左胸に寄せて、胸下から胸の形をなぞるようにして舌を動かし、脇まで這わせていく。
「うぅぐ・・・」
全身を鞭で縛り上げられて拘束されている私に、ニャランさんが迫り・・・その綺麗な唇を私に近づけてくると、私は幸せそうに自分の唇を差し出すように顎を上げ・・・そして、唇は重なり、ニャランさんの舌が喉の奥を目指すように入ってくる・・・イメージが脳裏に貼り付いてくる。
「こ、この・・・イメージは・・・」
左腕が解放されるものの、即座に鞭が巻き付いて胴に重ねるように縛り上げられ、鞭はさらに私の身体を登ってくると、首までグルグルと巻きついて少しづつ絞めてくる。
この絞められる痛みが、次第に気持ちいいと感じられてきた・・・。
「そのイメージは、今から私が、あなたのファーストキスを奪う予告よ」
「・・・ファースト。キス?」
「そう、まだでしょう?」
唇・・・ファーストキス・・・そうだ・・・私は、まだ、したことない・・・。
す、好きな人ができて、この人ならって思える人ができて、それから、それから・・・あ。
「これでトドメよ。あなたのように意志の強い子は、ちまちまと攻めるよりも一気に汚染した方がいい。特に、大事にしているところを・・・ね?」
い、いやだ。
いやだ・・・いやだ!
「思いっきり泣きなさい。怪異として、その全てを蹂躙してやりましょう」
ボロボロと涙が溢れ、奪われたくないという気持ちが暴走して、ただ涙ばかりが溢れ出る。声もなにも出ない中、涙だけが私の感情を相手に訴える。
そんな私の頭は優しく抱かれ、ニャランさんの顔が静かに迫ってくる。
その唇が近づくにつれ、私は受け入れるように自分の唇を差し出し始める。それは、先に見せられたイメージをなぞるような動き・・・。
これだけは、絶対に受け入れたくない。
もうダメだって、諦めたくないし、負けたくない。
思い出せッ!
みんなの足手まといにならないようにと、強くなるためにと、私が戦士として変身してからの経験と、教えを受けた知識を・・・思い出せッ!
みんなが、リザドラルさんが、いっぱい教えてくれたことを!
―――なんという最凶の秘伝奥義を伝授されてんの!?
ッ!!
「ああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
「えッ!?」
私の絶叫に、ギョッとした顔をするニャランさん。
その驚きで動きが止まり、まさに隙が生じる瞬間を得る。同時に、私の脳裏にて前世の知識と経験の擬人化さんの背中を思い出した。
渾身の力を込めて、鞭に縛られたまま右足を振り上げる。
人体急所に、私の蹴りを叩きこむために!
「なッ!?」
ゴッ
そんな音が響くと、ニャランさんは目を開けるだけ開き、口を開けるだけ開き、鼻から鼻水が微妙に垂れだして・・・うめき声を上げながらその場に崩れ折れる。
・・・すごい。効いた。
「ちょ、ちょっと・・・それは、反則・・・でしょうが・・・」
ワナワナと体を震わせているニャランさんの言葉を無視して、私は身体を縛る鞭を強引に引き千切りながら、落ちている刀を拾い上げて追撃を仕掛けた。
「夢幻一刀流・斬撃術!!」
首を狙う一刀。
しかし、ニャランさんは飛び退いてから転げるように身を投げ出して、この一撃を回避して見せた。
さすがに、経験値の差が出ているみたい。
「くぅ・・・油断したわ。いきなり叫び出すから、発狂してしまったかと冷や冷やしたけども」
「・・・鞭に縛られている状況を脱するには、ああするしかなったんです」
私の返答を受け、ニャランさんは明らかに焦りの表情を浮かべている。
それで、私は確信する。
息を整え、集中力を高める。
私は、もう一度・・・刀を構えた。
すでに抜刀済みだ。ここからは、夢幻一刀流の剣技で以て・・・この人を倒す。
「あのさぁ・・・」
髪の毛を掻き上げながら、苛立たし気に立ち上がる。
「あなたじゃ、私には勝てないって言ってんでしょ!?」
「いいえ。ここは夢の中です。すべては、イメージから成り立つ空間・・・だから私は、あなたの本体に刀をアッサリと砕かれて、自然と勝てない相手・・・とイメージしていました」
「ッ!!!」
言葉に詰まったように、目の前にいるニャランさんは驚愕の表情を見せる。
だから、私は続ける。
「あなたは、あの人ではない・・・夢毒の呪いが、あの敵の人格を再現しているだけ・・・でも、あなたの気持ちは伝わってくる。女性としての想いと、怪異としての望み。それは、間違いのない本物なんでしょう?」
「・・・そうね。その気持ちは、間違いないわ」
「もう、迷いません・・・私は、あなたを倒します」
ニャランさんは、そして呆れたような顔になる。
「胸・・・隠さないでいいの?」
「すでにあなたの毒で、隠せませんから・・・それに、あなた相手に片腕で戦うなんてできません」
「ふふ。エッチな子ね」
「恥ずかしい気持ちはあります。でも、それで負けてしまったら・・・私が迷惑をかけた秘密結社メシアの皆さんに申し訳が立ちませんから!」
みんなが、私を気遣ってくれた。
あの時、ニャランさんに連れ去られそうになっていた時も、コントみたいな事をしていたのは・・・もしかしたら私を元気づけるか勇気づけようとしてくれていたのかもしれない。
・・・素のような気もするけど。
「なら、もう一度! 拘束するまでッ!!」
私の周囲・・・地面から飛び出す鞭の束は、私を中心として円を描くように渦を巻き、そして私を拘束するために殺到する。
「夢幻一刀流・転刃術! 寝返りッ!!」
片足を軸にして、その場で身体ごと刀を横薙ぎに一回転させる技。
スパパパッと鞭を全て切り裂いて、消滅させることに成功する。も、ニャランさんは目を点にしていた。
「それ、某姫の伝説に出てくる勇者の技じゃないの?」
「・・・私も、そう思います」
顔が真っ赤になる。
だって、仕方ないじゃないですか・・・そういう技なんですよ。アレの真似よね?って聞かれても、そうですね!って頷くしかできないじゃないですか・・・。
「つか、技の名前からして・・・子供がよくやる『僕の考えた最強の〇〇』じゃない?」
「私も、実はそうなんじゃないかな?って思っているんですよね・・・」
初手の抜刀術は『おやすみ』。
次の斬撃術は『寝違え』。
そして、敵に囲まれたり逃げ場のない攻撃をされた時の技である転刃術が『寝返り』・・・これ、敵に寝返る。と誤解されかねない気もする。
「夢幻一刀流・反撃術! 枕返し!!」
私の死角から強襲してくる鞭を、刃を三日月のように見立てて構えてから、一気に振り下ろしつつ満月を描くように閃かせる。
そうして、鞭が私の死角からニャランさんの死角へ瞬間移動して、ニャランさんの身体を拘束した。
「んな!?」
「そこです!!」
私は即座に突進して、ニャランさんとの間合いを詰める。
「夢幻一刀流・斬撃術! 寝違え!!」
首を狙う一刀の斬撃。
しかし、それを待っていたと言わんばかりに鞭が私の全身を縛り上げて拘束する。
「チャンスと思った?」
ニャランさんを拘束した鞭は、その身体に取り込まれていく。
演技だった・・・。
「さぁ、今度こそ唇をいただきましょうか!」
「いいえ、すでに夢幻一刀流・霧刀術は発動しています!」
「は?」
怪訝な顔をするニャランさんは、目の前の私が霧のように崩れて消えて行く様子を見て、即座に身体を投げ出すようにして前転する。
少し遅れて、斬撃術をニャランさんの背後から放つものの・・・。
「くそ・・・幻覚の類を利用した身代わりの術ってこと!?」
足首を抑え、鞭を生やして足の形に固形することで再生した。一方で、私が切り飛ばした足首から先のソレは、砂のように崩れて消えて行く。
私は、一息吐いた。
「白昼夢。という技です」
「えぇ・・・あながち間違いでもない気はするけど・・・」
・・・自分でも、こうして冷静に考えると恥ずかしくなってくる・・・なんなの? この技の数々。
「はぁ・・・仕方ないわね」
ニャランさんが立ちあがり、すべての鞭を自身に呼び戻して取り込んでいく・・・と、大量の鞭を右手から放出して束ね・・・これらを凝縮させて一本の木刀を作り上げた。
「・・・樹木刀・鞭転。と名付けているの・・・転じる鞭。って書いて『べんてん』ね」
一気に、雰囲気が変わった。
どこか柔和な雰囲気を持っていたニャランさんが、武人を強くイメージさせる圧を全身から発して、私を威嚇してくる。
「言ったはずよ? 刀の相手は戦国時代から散々やって来たわ。つまり、多くの武人と戦い渡り合って来たということよ・・・それでも、私に勝てると?」
そう。
戦闘経験値が、越えられない壁に阻まれているほどに差があるのは事実。
「それでも、負けたくないんです」
ニャランさんは、嬉しそうに笑った。
「よろしい・・・」
瞬間、前世の知識と経験の擬人化さんと同じ足捌きからの動作による・・・『面』が迫ってくる。
コレを受けてから、即座に流して反撃の『胴』を狙うも、あっという間に私の横を通過して背後に回り込むと、その方向転換を利用した『胴』を放ってくる。
当然、私も『胴』を狙うつもりでいたので、即座に防御へ。
「・・・ふむ。なるほど」
ニャランさんが私を睨みながら、何かを見定めるような顔で頷いた。
と、間髪入れずに次の攻撃が放たれ、私は夢幻一刀流を駆使してニャランさんの攻撃を防ぎ、凌ぎ、捌いて、耐える。
それら全ての動きが、現代の『剣道』に通じる動作での攻撃に、私は戸惑った。
素早い攻撃で手首を裂く『小手』。
一撃必殺になりかねない『突き』。
頭骨も砕くだろう『面』
上下で身体が泣き別れとなりかねない『胴』
ニャランさんの攻撃は、これら四つだけにもかかわらず・・・私は防戦一方に追い込まれてしまう。
「どう? 剣というのは、突き詰めていけばこの四種でいくらでも攻め続けることができるわ。現代剣道はスポーツ化しているわけだけど、本来は相手を確実に殺すための技術。多くの流派が存在していながらも、基本的な技能。として、これら四つが共有されるには、ちゃんとした理由があるわけだ」
・・・確かに。
あらゆる動作に無駄がなく・・・見栄えもなにもない攻撃は、確実に相手を殺すために洗練されている。
先人が、多くの剣技を編み出して・・・最終的に行きついた『剣』の極意と言われても、納得できる。
「ま、テキトーに言っているだけなんだけどね?」
えー。
「結局のところ、今までに相手してきた連中は、意味不明な剣技を使ってくる事も多くて、それらを理解できなかった私は、今や基本となった四つの技だけで対応してきたのよ・・・基礎は大事。古事記にも書かれているんじゃない? 読んだことないけど」
ふ。っと笑みを浮かべて、その身体が微かにブレた。
「夢幻一刀流・破刀術! 夢物語!」
正面に、ただ一振りをする。と、ニャランさんが私の右側面回り込もうとしていたようで、次の瞬間には転げながら姿を現した。
一方で、正面にいるニャランさんの姿が崩れて鞭に分解し、ニャランさんへと還っていった。
「く、まさかそんな行動無効技があるなんて・・・」
「騙し技などじゃないと、効果がないんですけどね!」
先に私が使った『白昼夢』のような身代わり系の技や、偽の情報で視覚や聴覚に嗅覚などを騙すような技で無いと防げない技で、そういう技を使われたかどうか気づけないと使えない。
「ええい、押し切る!」
「させません!」
斬り結んだ。
夢という空間で、ニャランさんと私は、ただひたすらに刀と木刀をぶつけ合って斬り結ぶ。
私が切り付ければ、毒が浄化されるように何かが蒸発するニャランさん。
木刀が私の肌を掠めて肌が切れたり、打ち付けられて痣ができるたびに脳裏に、エッチな行為をする私とニャランさんのイメージが増えていくけれど、先のモノに比べると頭には残らない。
今もずっと、私の脳裏に残るのは衣装を脱ぐイメージとニャランさんとキスをする自分の姿ばかりで、攻撃されて脳裏に浮かぶ新しいイメージは定着せずに消えて行く。
互いの剣をぶつけ合い、そして弾き合って、反動で互いに背を向け合いながら遠心力を利用して振り向きざまの一撃を交錯させる。
斜め上から振り下ろされる私の一撃。
斜め下から振り上げられるニャランさんの一撃。
互いの脚が、一歩前へと踏み込んで・・・。
「あ・・・」
私の視界がぐにゃッと歪むと・・・そのまま立っていることができなくなって地面へ倒れ込む。
これは、脳震盪・・・だっけ? 顎を強打されると発生するっていう・・・。
ま、マズい・・・う、動けない。
「・・・ふぅ・・・引き分けってところね」
そんな呟きと共に、私の目の前にニャランさんの頭が転がり落ちてくる。
「ひぃ!」
思わず恐怖して顔が引き攣った。
「なにを驚いてんのよ? あんたが斬った首でしょうが・・・ったく」
「ご、ごめんなさい。実際に首が切断されて目の前に落ちてくるのを見たら・・・こ、怖くなって」
と、私は身体を起こした。
夢空間だからだろうか? 脳震盪?と思われる状態になったけれど、すぐさま治った・・・多分、ニャランさんの首が目の前に落ちて来た事によるショック・・・療法?
夢だからこその荒療治だとは思う・・・。
見れば、ニャランさんの身体がボロボロと崩れ始め、ウィアード・フィールドだった周囲は次第に晴れていく。
そうして景色は、ヒーローショーの舞台があるどこかの広場に戻っていった。
周囲には、観客となる子供たちも、ヒーローショーのスタッフもいない。ただの広場となっていて、長閑な空気に戻っていく。
・・・でも、私の服装は変わっていない。
胸も露出したままで、服を直して見てもすぐ脱げる。
「ねぇ? 夜乃雪乙ちゃん」
服が直らないことに悪戦苦闘していると、首も少しずつ崩れ始めたニャランさんに声を掛けられた。
「なんでしょうか?」
どうやっても直りそうにないので、胸を抱えるようにして隠すことにした。
「あなたの・・・変身時の名前って、なんていうの?」
「名乗っていませんでしたか? イデスバリー・ナイトメアです」
私が、改めて名乗ると・・・息を呑むニャランさんを見る。
それは、何かが嚙み合った。というような表情で、少しだけ口元を綻ばせて・・・深いため息を吐いた。
「そうか・・・あなたは『悪夢』だったのね・・・負けるわけだ」
「どういうことですか?」
意味がよく分からない。
「名は体を表す。て、言うでしょう? その名前が、あなたの力を意味しているのよ」
・・・この名前は、あの時に思いついたモノが『悪夢』だけで・・・それは、状況が二転三転して質の悪い夢を見ているような感想を抱いたからだけど。
「・・・この名前は、唐突に私の知る世界が変わったことで『悪夢』を見ているような気がして、それ以外の言葉も思いつかなかったからですよ」
「違うわ。イデスバリー戦士が自身に付ける名前は、前世の執着からよ・・・」
名前は、前世の執着?
「いや、執念?の方が正しいかしらね。少なくとも、過去に幾度となく戦った強者たちは、己の名をよく表した力を振るい、私たちと命がけの戦いを繰り返したからね・・・断言できるわ」
私の名前・・・『イデスバリー・ナイトメア』の『悪夢』という名は、前世の執念が籠っていると?
「あなたの前世が『悪夢』にどんな執念を抱いていたのかは知らないけれど・・・夢。は、あなたの力となることは、間違いない・・・ふふ、引き分けに持ち込まれるのも納得よ」
なら・・・。
「・・・ニャランさんにとって、この結果は『悪夢』になりましたか?」
すると、ニャランさんの緩やかに崩れていた身体がバラッと崩壊して、砂のようになっていく。
「ニャランさん・・・」
「ふ・・・ふふ・・・悪夢ねぇ・・・それなら、最初に見たわよ・・・」
え? 最初に見た?
ニャランさんの身体に合わせて崩壊が加速する頭・・・その顔に、朗らかな笑みが浮かぶ・・・と、呟いた。
「メシマンズー・ナイトメアを振り払うために、毒の半分以上を浪費したのが・・・敗因かしらねぇ・・・」
んぐはッ!!
最後の最後で、私の精神は致命傷を負った・・・。
次回は、歓迎。を予定しています。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。




