表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

竜の巣の町

 次の日、アルモニカと依頼選びをしていた。

 紙に書かれた文章はまだ読めるようだった。


「小説のネタに出来そうですわよね、その架空言語」


 と、僕のユニークを消しながら、彼女が唐突に言い出した。


「どうやって?」


「音としてどんな風に聞こえるか書きとって文法をつかめば適当なオリジナル文字に当てはめてオリジナル言語が作れますわ。まあそういった仕事がさっきから探せど探せど見つからないのですが」


「探してたの!?」


「ええまあ、私達だけが出来る仕事があるならそれは大きな利点となりますもの」


 そう言う彼女を尻目に、僕は討伐系の依頼の数々を指さした。


「とりあえず戦い系にしない?言葉を交わす必要が無くて楽だ」


「戦闘狂みたいなセリフですこと」


 その時、気付いた。


「もう一つ戦闘狂みたいな事言うと、味方のユニークを今まで聞きそびれてるの冒険者失格だよね」


「そういえば言ってませんでしたわね。私のユニークは怪力ですわ。ですので魔法を封じられても棒術師になれましてよ!」


 と、小さく素振りされた杖は、鋭く空を切る音を放っていた。

 ロマンのある音だ。


「一回やってみたいよね、魔法封じて勝ち確と思ってる敵に物理で解決……」


「また戦闘狂みたいなセリフですわ!」


「僕もなれなくはないよ棒術師。前衛職になろうと思えばなれる男だからね」


 と、へそくりで買った杖を掲げた。

 アルモニカほど鋭い音は出ないので振り回しはしない。


「初めて会った時から思いましたがずいぶんな自信ですわよね。ひょっとすると私達ならこんな依頼も楽勝かしら?」


 と、アルモニカが手に取ったのは、火龍討伐の依頼だった。

 氷と呪い系の魔法を撃っていればどうとでもなる相手だ。


「いいよ、受けよう」


「決まりですわね、それでは魔法も一旦休憩ですわ……すみません!この依頼を受けたいのですが!」


 と、受付へ駆けていくアルモニカの背中を見送りながら、まだ世界が異界言語だらけになっていない事に少し安堵していた。


 更に次の日、早朝から出発し、昼頃に現地へ着いた。

 街に家を持つアルモニカとは違い、冒険者になってからはギルドの二階で寝泊まりしているので起こしてくれる人がいなくて朝は少し難儀する。


 町の入り口で待っていた町人が、僕らに声をかける。


「Welcome to Dragon's Nest Town」


 ようこそ、私達の町へ、みたいなことを言っている事がなんとなく分かる。

 昔、依頼を受諾された現地の人は、よくこういう出迎え方をするのだと大人達から聞いた事があった。


 待ち合わせ場所の町長の家へやってくると、中へ通された。


「We are in trouble because dragons are kidnapping our livestock...」


 何を言っているかは分からないが、そう語る町長は、胃痛に悩まされている様子だった。


「We need you to help us slay the dragon」


 するとアルモニカが意外そうな声を上げる。


「手伝いだけでいいのですか?私達が倒してしまっても構わないのですよね?」


 アルモニカが何やら威勢の良い返事をした。

 すると町長の表情が元気づけられたように少し明るくなった。


「If you could defeat it, that would be great! But we are more used to dragons than you」


「それもそうですわね。では、危なくなった時はお任せ致しますわ」


 なんだか町長とアルモニカとついでに僕の間に束の間の絆のようなものが築かれた気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ