高校から一緒の友達が中々グイグイ攻めてくる
夜の八時。
私、高山柚葉は、高校からの友達である大橋菜乃のアパートに着き、階段を上がって二〇二号室のインターホンを鳴らす。
ピンポーンと音が響いてすぐ、扉が開いて待ってましたとばかりの笑みを浮かべた菜乃が顔を出し、
「やっほー、柚葉。入って」
手招きをされて招かれたので、迷う事なく家に入って荷物を置きながら会話をする。
「相変わらず、綺麗にしてるね」
「でしょ?柚葉とは違って、私は綺麗好きだからね」
「私の家だって綺麗だし」
「本当にー?」
たまたまいつも掃除をしてないだけで、綺麗にしようと思えば菜乃の家より綺麗に出来るしと真面目に思いながら、私は食べかけのお菓子が転がっているふかふかのソファーに座りくつろぐ。
「それで、今日は何するの?また映画?それともゲーム?」
「おっ、正解。私やりたいゲームがあるの」
「何のゲーム?」
私の質問に菜乃はニヤリと笑うとこちらにやって来て、ソファーのお菓子を移動させながら何かを取ると、
「ポッキーゲームだよ」
そう言って私を押し倒して馬乗りになり、ポッキーを一本私に見せてくる。
「本気?」
「本気だよ?」
暇な時結構一緒に遊ぶ仲の菜乃は時々距離が近い。高校で始めて知り合った時からそうで最初は慣れなかったけど、今はある程度慣れているので、
「良いよ。やろ」
私は笑って頷き、菜乃が咥えて差し出してきたポッキーを私も咥えてお互いに食べ出し、唇と唇が当たる寸前で私は首を動かしてポッキーを綺麗に折る。
「やっぱり、ポッキーって美味しいよね」
「ずるい!……もうちょっとだったのに」
キスをする事なくポッキーゲームを終わらせると、菜乃は口を尖らせて何かを呟き、
「ん?何か言った?」
ギリギリ聞こえなかったので聞き返すと、首を横に振って答える。
「別になんでもないよ。それよりも柚葉、私もう一個やりたいことがあるの」
「今度は何?」
「ふっふっふっ」
ケロッと元気が戻りわざとらしい笑い声をあげながら私から離れた菜乃は、冷蔵庫に向かい何かを取り出したかと思うと戻ってきて、
「一緒にお酒飲も!」
缶チューハイ片手にそんな初めての誘いをしてきて、最近誕生日だった菜乃とは違い私は誕生日が早くてちょくちょく一人で飲む事があるので、
「良いよ」
やっと二人でお酒を飲めるなと嬉しく思いながら頷いて、菜乃と二人で晩酌の準備を仲良く始めた。
◆
夜の八時二十五分。
菜乃の家にある冷凍食品や作り置きしていた料理を温めて軽く盛り付け、お酒も準備し、
「「乾杯!」」
菜乃は元気良く私はいつも通りに缶をぶつけて乾杯し、二人で夜ご飯を食べ始める。
「なんか嬉しいな。始めてお酒を一緒に飲むのが柚葉で」
「それは良かった。私も初めてが菜乃で嬉しいよ」
「そうなの?柚葉、誕生日結構前だったけど、今日まで誰かとお酒飲んだ事ないの?」
驚いた様に聞いてくる菜乃だけど、お酒を飲んでいる事とか好きな事を教えているのは、菜乃だけ。
それをそう言えば言ってなかったなと思って話すと、
「へぇー。私だけ特別って事?ならなら、そんな特別な私にあーんしてよ」
お酒と相まってかどこか調子に乗り出し、これ以上調子に乗らすと面倒くさそうなので私は雑にあーんをする。
「ほら、あーん」
「んっ……美味しい!柚葉も、あーん」
料理を飲み込んだ菜乃が嬉しそうに笑いながら、今度は私に一口差し出してくれてドキッとしながらもパクっと食べる。
「菜乃の料理、美味しいね」
「でしょ?私はなんでも出来る、優良物件だからね」
「凄い凄い」
いつもより明らかに上機嫌な菜乃に私もどこか楽しくなって笑みを浮べ、最近あった事とか、菜乃の好きなアニメやゲームの話。下ネタなんかを長々とお互いに話していると、気が付けば料理がなくなりお酒だけに。
「ねぇ、柚葉ってさ、もしかしてお酒めっちゃ強い?」
「どうだろう?でも、弱くはないと思うよ?」
普通の缶チューハイ三本目を飲んでいる菜乃と、もう五本飲んでしまった私だけど酔っているのは菜乃の方。あまり強いとか弱いを気にしたことはないけど、今はほろ酔いぐらいで凄く心地良い。
そんな私を見て菜乃は机に顔を乗せ、横向きで不貞腐れたように、
「こんなはずじゃなかったのに……」
何かをまた呟く。
「あっ!」
でも、いきなり顔を上げたかと思うと立ち上がって歩き出す。けど、その足はふらついていて、私も付き添おうと近付くと、
「あっ、ヤバい」
「菜乃!」
躓いて転びそうになりなんとか抱きとめ、大丈夫かと菜乃の顔を覗くと驚いた顔から飛びっきり嬉しそうな顔に変わり、
「うわー、転ぶー」
茶番にも程がある棒読みの言葉を放ちながら、私に抱きついて顔をすりすりしてきて、私は顔を両手で掴み引き離す。
「ちょっと、菜乃。やめて」
「えー、ケチ。でもまあいいや。それより柚葉、良いのがあるから来て」
私から名残惜しそうに離れて立ち上がるとまた歩き始め、私も付き添い付いて行くとキッチンにある棚からウイスキーを取り出して、
「あげる!」
子供の様に無邪気に笑いながら私に差し出してきた。それに私は、
「あ、ありがと」
またドキッとしながらも受け取り、氷とコップを持って菜乃が転ばないように戻る。
「それにしても、これどうしたの?」
「えっーとね、予備かな」
「予備でこれ買ったの?良かったね、飲まなくて。菜乃、絶対にこれ飲んだら会話できないぐらい酔うよ」
「そうそう。だから、柚葉にあげる」
とにかく楽しそうで嬉しそうな菜乃になんだか胸が高鳴りながらも、ウイスキーをロックで飲み始め美味しいなと思いながら明日どうするかを話し、暇だから泊まるよと答えると、
「やったー!柚葉は私の家に泊まってくれて嬉しいランキング一位だからね!」
何やらよく分からないことを言い出し缶チューハイを飲み切る。そして……
「ちょっ!菜乃、だめ!」
いきなり私が飲んでいたウイスキーを掻っ攫い一口飲んで、
「あんまり美味しくない!どうして!」
テンションがおかしくなり始め子供の様に喋り出す。それに私は心の中でため息を吐きながらも、取り敢えず水を用意しようとコップに入っているウイスキーを全部飲み、菜乃がもう飲まないように瓶を持って立ち上がる。
「どこ行くの?一人にしないでよ」
すると菜乃が私の服を掴んできて、あれだけ機嫌が良かったのに今にも泣きそうな声で甘えてきて、私は心臓が跳ねるのを感じながらも、
「水を取って来るだけだから、安心して待ってて。ほら、良い子だから」
自分で何をしているんだろうと思いながらも菜乃の頭を撫でて頷いたの確認し、冷蔵庫から冷たい水を取って戻る。
そして菜乃に飲ますと、
「えへへ、柚葉は優しいね」
若干いつもの菜乃に戻り取り敢えず面倒な事は回避できたかなと、時々子供で時々大人な菜乃とまた会話をし、時間が流れていく。
そうしてウイスキーを飲み切ってしまい私もだいぶ酔いが回った頃、静かになっていた菜乃が私の服を両手でぎゅっと掴んできて、
「柚葉ってさ、好きな人いる?」
真面目な顔でそんな事を聞いてくる。
「……いない訳じゃ、ないかな」
それに私は正直に嘘を付くことなく答えると、菜乃は一瞬黙り込んだ後口を開く。
「そうなんだ……私も好きな人がいるの。好きで好きでたまらなく大好きな人が。でもその人さ、全然振り向いてくれないの。酷いって思わない?」
寂しそうで苦しそうな顔の菜乃に私も視線を逸して、いないってはっきり答えれば良かったなと思いながら、
「酷いね、その人」
きっと私ではないその人を羨ましく思って、どこか妬んで共感すると、菜乃は私から手を離して残念そうに愚痴っぽく言葉を言う。
「ね!ずっーと、私その人しか見てなかったのに!ずっーと、振り向いてくれるよう努力したのに!いっつも良い所で終わっちゃうの……今だって」
ボソッと最後に溢した菜乃の言葉に私は驚いて菜乃の顔を覗くと、目の端に涙を浮かべていて私の手を握ってくると、
「ねぇ、柚葉!二番でも三番でも良いからさ、私と付き合ってよ。私、柚葉の為ならなんでもするから。体だけ使っても良いし、全然浮気してもいいから、私が寂しい時に……傍にいて欲しい。お金が欲しいならあげる、うざいなら叩いても殴っても良い……んっ♡」
聞きたくない告白だったから、私は迷う事なく菜乃とキスをして告白を止める。
「「んんっ♡……んはっ♡……んむっ♡……んんっ♡……ぷはぁ♡♡」」
そしてファーストキスなのに唇だけじゃ物足りなくって舌も入れてキスをした後、
「菜乃。私、菜乃が一番好きだよ。だから、その告白はやり直し」
笑って菜乃に言うと、本当に嬉しそうな笑みを浮べて涙を溢しながらもう一度今度はとっておきの告白をされる。
「世界で一番好きだよ、柚葉。私と、付き合って」
「うん、喜んで……んっ♡」
◆
意識が覚醒して暗闇から目を覚ます。そして私に抱きついている裸の菜乃に頭が一瞬混乱するけど、昨日の事を思い出して、
「チュ♡」
可愛い顔に我慢出来ず頬にキスをすると、菜乃が嬉しそうに目を開けて、
「もっとしよ、柚葉……んっ♡」
私の体を足で縛り、お互いに息が続くギリギリまでキスをしてきた。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
さてさて、久しぶりに短編を書きましたが、長編とはまた違って面白いですね。今回も中々に良いと自負しております。
というか事で、これからも色々な百合を書けるよう頑張りたいと思うのでよろしくお願いします。
また、この作品以外にも、作者は長編だったり違う短編だったりを書いているので、気が向いた方がいればぜひ!
面白い、続きが読みたい、そう思った方はぜひブックマーク!それと、
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よろしくお願いします。