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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

別の世界ではただの日常です

完全再現

作者: 茅野榛人

 何時からだろうか、これ程までに世の中が混沌とし始めたのは。

 最近の人々は、刃物を振り回し、銃を乱射し、猟奇的な事件を起こす人々であふれかえっている。

 中にはコスプレをしたり、長々とした台詞を喋りながら犯行に及ぶ奴等もいる。

 原因ははっきりしている、犯行に及んだ奴等は全員、アニメやドラマの名キャラクターの真似をしているのである。

 奴等のルールはこれだけではない。

 アニメやドラマに登場する人物の名前と全く同じ名前の人が、そのキャラクターになりきる、もしくは無理矢理見立てて、ドラマやアニメの名シーン等を完全再現しようとする事が非常に多いのである。

 場所は一切問わない、しかし一番酷い場所は、学校である。

 確かに私も昔は有名やキャラクターの真似や仕草をした事はある、しかしここまで拗らせる事は無かった。

 所詮はふりなのだ、なのに最近は、ふりだけでは我慢出来ないのか、実際の道具を持ったり、実際の格好をしたりして、場所も一切気にせず暴れまわる奴等が数えきれないほどいる。

 時には負傷者も、死者も出てしまう。

 一体どうしてこうなってしまったのであろうか。

 アニメやドラマの有名なキャラクターになりきって事件を起こせば、その事件に巻き込まれた人、作者、ファン、そしてその有名なキャラクターにも、多大なる迷惑がかかる事ぐらい、分からないものなのであろうか。

 その有名なキャラクターになりきる事によって、自信が湧いたり、救われたりするのであろうか。

 そんな狂いきった世の中を生きる私なのだが、今非常に頭を悩ませている。

 この先の展開次第では、死ぬ可能性がある為である。

 一体何に頭を悩ませているのか……それは、名字である。

 私は大分前に結婚をして姓が変わり、その最中にこんな世の中になり、その後離婚をして旧姓に戻った。

 これにより、とある有名なアニメの最終話の一つ前の話で殺害されて死亡する有名なキャラクターと、一字一句全て同じ名前になってしまったのである。

 離婚した当時は、まだ事の重大さに気付いていなかった。

 私は最近のアニメやドラマに関する情報に疎かった為、死亡する有名なキャラクターさえも知らなかったのである。

 当然、名前バレしていなければ、そのキャラクターの役回りを受ける事無い。

 だが、豹変してしまった私の友人は、私の名前を知っている。

 事実、友人は私を、その死亡するキャラクターに見立てている。

 勿論友人に限らず、職場の人達も同じである。

 このままでは、私は殺される。

 何とか婚氏続称をして、夫の名字を名乗る必要がある。

 幸い私はまだ協議離婚から一ヵ月半しか経過していない。

 しかし婚氏続称をするには、役所に婚氏続称届(離婚の際に称していた氏を称する届)を提出する必要がある。

 郵送で提出しても良いのだが、役所が家から近い為、役所に提出しに行く。

 本当は家族に頼みたいのだが、もういない……その為自分が一人で提出する必要がある。

 一番恐れなければならないのは、家から役所までの間の道のりで、私の今の名前を知る者と出会う事である。

 その瞬間、そこが現場になり、名シーンの完全再現が始まるのである。

 良し、覚悟は決まった、必要なものを一通り持ち、役所へ行くとしよう。


 何とか完全再現が始まる事無く、提出する事が出来た。

 これで、解放される……何だ? 首元に何か冷たいものが当て……。


「お前の命は……私がいただいた……お母さん! 私やっと出来たよ! ほら! ちゃんと首取ったよ! お母さん! お母さん……んー! やっぱこのシーン好きだわー! さてと……役所の仕事に戻ろうっと!」

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