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Melancholic-Heaven  作者: 倉木英知
第1章 音無静寂と相原咲
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一縷の望み…。


 ねぇ。聞いて…。

 太気は生きていたの…。

 生きていたのよ…。

 ほら…。見て…。


 右腕は庭にある木の枝に突き刺さっていた…。木の枝は、その先端が刺さりやすい状態に加工されている。と鑑識の人に聞かされた。


 馬鹿げた冗談なのだと思った…。

 達の悪い嫌がらせなのだとも思った…。


 然し…。一週間後…。

 次は左脚だけが見つかった。


 更に一週間後…。左腕が…。

 更に一週間後…。右脚が…。


 一週間置きに腹部、腰部、胸部と見つかっていった。木の棘や折れた枝先、木に巻いた針金の切口、有刺鉄線。息子だった部位は突き刺さっていたり、貼り付けにされたり、巻き付かれていたりと少しずつ見つかっていった。悪夢の様だった。地獄の様な日々だった。


 そして…。

 残されたのは頭部だけとなった…。


 私は狂ってしまったのだろうか…。ソレでも息子が生きて帰って来るのだと信じて疑わなかった。不意に帰ってきて、普段の笑顔を見せてくれるのだと…。信じて疑わなかった。夜な夜な徘徊をし、息子を探す私がいる…。涙は枯れた。泣こうにも泣けなくなっていた。でも、一縷の望みだけが私を動かしていたのだった…。


 或日…。息子が見つかった。


 私は息子を抱き抱え家族の元へと急ぐ。


 「太気が帰ってきたよ…。」


 でも…。家族からの返答は予想していない言葉だった…。


 「理花…。その子は太気じゃないよ。他所の家の子供なんだ。だから…。」


 「何を言ってるの?ねぇ。聞いて…。太気は生きていたの…。生きていたのよ…。ほら…。見て…。」


 私は抱き抱えている子供を家族に微笑みかけながら見せる。家族は、そんな私を涙ぐむ瞳で見つめていたのだった…。


 翌朝目覚めると、太気の姿は無かった。幻だったのだろうか…。ソレとも夢を視ていたのだろうか…。


 その日から五日後…。

 近所の公園の滑り台の上で…。

 頭部が見つかる事となる。

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