一縷の望み…。
ねぇ。聞いて…。
太気は生きていたの…。
生きていたのよ…。
ほら…。見て…。
右腕は庭にある木の枝に突き刺さっていた…。木の枝は、その先端が刺さりやすい状態に加工されている。と鑑識の人に聞かされた。
馬鹿げた冗談なのだと思った…。
達の悪い嫌がらせなのだとも思った…。
然し…。一週間後…。
次は左脚だけが見つかった。
更に一週間後…。左腕が…。
更に一週間後…。右脚が…。
一週間置きに腹部、腰部、胸部と見つかっていった。木の棘や折れた枝先、木に巻いた針金の切口、有刺鉄線。息子だった部位は突き刺さっていたり、貼り付けにされたり、巻き付かれていたりと少しずつ見つかっていった。悪夢の様だった。地獄の様な日々だった。
そして…。
残されたのは頭部だけとなった…。
私は狂ってしまったのだろうか…。ソレでも息子が生きて帰って来るのだと信じて疑わなかった。不意に帰ってきて、普段の笑顔を見せてくれるのだと…。信じて疑わなかった。夜な夜な徘徊をし、息子を探す私がいる…。涙は枯れた。泣こうにも泣けなくなっていた。でも、一縷の望みだけが私を動かしていたのだった…。
或日…。息子が見つかった。
私は息子を抱き抱え家族の元へと急ぐ。
「太気が帰ってきたよ…。」
でも…。家族からの返答は予想していない言葉だった…。
「理花…。その子は太気じゃないよ。他所の家の子供なんだ。だから…。」
「何を言ってるの?ねぇ。聞いて…。太気は生きていたの…。生きていたのよ…。ほら…。見て…。」
私は抱き抱えている子供を家族に微笑みかけながら見せる。家族は、そんな私を涙ぐむ瞳で見つめていたのだった…。
翌朝目覚めると、太気の姿は無かった。幻だったのだろうか…。ソレとも夢を視ていたのだろうか…。
その日から五日後…。
近所の公園の滑り台の上で…。
頭部が見つかる事となる。




