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Melancholic-Heaven  作者: 倉木英知
第1章 音無静寂と相原咲
24/35

でも…。ソレは…。


 異形の方も…。

 元は人間だったんですよね?


 「大丈夫か?」

 と眼の前の人は、そう云った。ショートカットの綺麗な女性だった。でも私の心は先程の光景にザワザワとしている。あの大きな鬼の異形は、もしかしたら私を…。


 「怪我は無いか?」

 「はい。大丈夫です。」

 「君はどうして…。木に縛り付けられてるんだ?何があった?」

 眼の前の人は心配そうに私を見ている。

 「…。」

 私は言葉に詰まった。何を伝えれば良いのかが解らなかったからだ。

 「ユックリで良い…。君に何があったのか…。話してくれないか?」

 その女性の瞳には慈愛が満ちていたかの様に感じられた。だから私は、ありのまま伝える事にした。私が両親・・に贄として教祖に捧げられた事。そして…。その教祖は私を神の贄として、この木に縛り付けた事。


 総てを…。


 「もしかしたら…。あの鬼の様な異形の方は、そんな私を救けようとしてくれていたのだと思います。優しい声だったんです…。」


 私がそう云うと…。

 眼の前の女性は少しだけ哀しそうな表情になった。そして…。言葉を並べる。


 「異形となった人間は欲に呑まれているんだ…。激しい感情に心を支配され、肉体をも変化させてしまっているんだよ…。だから…。」


 「でも…。異形の方も元は人間だったのですよね?人間にも善行を積む人間もいれば悪行を重ねる人間もいる…。だとしたら異形の方達も…。異形だから悪だと一括りにしても良いのでしょうか?」


 「ソレは…。」

 眼の前の女性は返答に困っている。


 「すいません。救けてもらったのに…。」


 「いや。気にしなくて良いよ…。」


 大きな鬼の異形へと瞳を向ける。

 耳元まで裂けた口を開いては閉め、閉めては開く。ソレは…。何かを伝えようとしているかに見えた…。大きな鬼の異形は瞳を見開く、その視線の先は私達を見てはいなかった…。

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