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揺らぐ…。
正義とは何を意味するのだろうか…。
音無静寂の瞳に映されているのは、大きな鬼の異形に左腕を掴まれた女の子の姿だった。異形の鬼は耳元まで裂けた口を開き、女の子に喰らいつこうとしている。音無静寂は脚に力を込めて駆け出し、一気に距離を縮める。
異形との距離が数メートルとなると、跳躍し空を舞った。肉体を反らし、両の手にある【鋸挽き】に力を込め、大きな鬼の異形へと振り被り、斬り付けた…。
その時だった。
「こんな処に居たのね。ずっと探していたのよ。もう、心配かけないで…。✖✖✖✖。」
と大きな鬼の異形は少女へと優しい声で語り掛けている。音無静寂は瞳を見開く、彼女の記憶にも言葉を話す異形は存在していない。疑問符が頭を過った時…。グチャリ…。と音を立て【鋸挽き】は鬼の異形の首元へと喰らいついていた。
「やっと…。貴女を見つけられたのに…。助けてあげられなくて、ごめんなさい…。」
その言葉が音無静寂の脳裏へと刷り込まれる。そして…。一瞬遅れて女の子の悲鳴が耳に触れた…




