人の名残り
生きる為には…。
音無静寂が率いる第六部隊に【市街地中心部に群がる怪物を駆逐せよ。】との指令が下された。そう云った指令を空気を吸うかの様に当然と受ける音無静寂が其処には居た。
「さて…。元は人間だったとしても怪物は怪物として処理しなければならない。怪物は欲に呑まれた人間の成れの果てだ。此方は人間として気高く、されど徹底的に蹂躙せねばならない。普段通りで構わないさ。派手に暴れるとしよう。」
音無静寂から士気を鼓舞するかの様な声が響き渡ると…。隊員達は鬨の声を上げて応えたのだった。
市街地迄の道程は車を走らせて2時間程。その最中、第六部隊は、とある光景を目の当たりにした。KARMAウィルスが蔓延してからは日常的になってしまった光景だ。KARMAウィルスは世界が築き上げた規律、法と云った常識を破壊した。詰まり、秩序を守るのは個人のモラルだけになってしまったのだ…。生き抜く為の、形振り構わぬ言動。ソレは結果として、人の道から外れてしまう。その様な光景が溢れる様になった。歴史上、前例が無かった訳では無い…。
【間引き】【姥捨て】【口減らし】
夕日に照らされた街道に…。
人の名残りが並べられていた。




