両の手に刑具を…。首に貝殻を…。
幸福を願う事は…。
罪なのだろうか?
私は贄となった…。
贄と云う漢字の印象は良くないモノなのだけれども…。贄の漢字を解体すると三つの漢字が現れる。幸。丸。貝。そうすると印象が良くなる様にも感じるから不思議なものだ…。
然し…。【幸】とは手枷の形なのだそうだ。手枷の刑罰だけで罪を償うのは僥倖で、重罰を免れるから【幸】になるのだと聞いた事がある。【丸】とは両の手を差し出している形であり、【執】とは両の手に刑具の手枷を嵌めている形となる。そして【貝】は、子安貝の形を象った象形文字で、古代中国では貨幣として貝殻が貨幣が用いられていた事から、財貨や処理の意味を持つのだと云う。
「なるほど…。」
私は独り寂しく呟く。
そうだとしたのなら…。贄として選ばれたのには何らかの意味があるのだろうか…。私は私が認識していない内に罪を犯したとでも云うのだろうか…。私は…。ただ世界が平和になり、幸福になればと願っていただけだ…。
あぁ。
ソレが罪だとしたのなら…。
此の世界を均衡に保つ幸不幸の天秤に背く事になるのだとしたら…。
きっと私は罪人なのだろう。
だから…。
贄に選ばれたのだ…。