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音無
正義を行使し死刑執行する。
それだけだ。単純だろ?
ふぅ。と音無静寂は溜息を吐き。なるほど。倉木が見込んだだけの事はあるのか…。と言葉を続けた。
音無の視軸の先にはカルテを読み耽る天野桐人がいた。その集中力は凄まじく、瞬き一つすらしてはいない。だが、ソレこそが天野の弱点と云えるのだろう。この瞬間にも敵がいたとしたのなら天野の命は容易く刈り取られてしまう…。
「だから俺が選ばれたのか…。」
と音無は呟いた。音無は夥しい数の髑髏だったモノの残骸の上で胡座を掻き、右膝に右肘を付き、頭を右の掌の上に乗せて天野を見定めている。先程、音無は天野に嘘を吐いていた。音無にとって、この程度の髑髏が夥しい数の群れで立ち塞がっていたとしても何ら意味は無かったのである。
グガガッ…。一匹の髑髏が瀕死の状態で声を上げた…。音無は人差し指を唇に添えると…。
「しーっ。静かに…。」
と云い、髑髏の頭部に狙いを定めると…。一振りの刀が瞬時に顕現し髑髏の頭部に突き刺さったのだった。