必ずしも道がある訳では無い。
いずれそうなると…。
思いを込めて…。
「本人が目覚めたくないのなら、ソレを防衛する為の機能があっても不思議じゃないよな?」
音無は、また人差し指で車椅子の少女の足元を指し示した。
「ほら…。おでましだ…。」
少女の足元の地面から黒く塗り潰したかの様な色の霧が立ち込めた。ユラユラと周囲を蜃気楼の様に漂い始める。
「だから…。俺が同行する様に命じられたんだ…。油断するなよ…。御前が死ぬには、まだ早い…。あっ。そうだ。少しずつ詳細を話しておいてくれとも云われている。御前の成すべき事。この世界の理を…。」
音無の瞳が輝きを失っていく。
御前も言いたい事があるだろうが。そう云って音無は左手の人差し指を唇に添えた。
「しーっ。静かに…。悲鳴はあげるな。彼奴等は心の動揺には過敏に反応するみたいだからな…。」
その言葉で私は我に返る。車椅子の少女の方へ視軸を戻すと、夥しい数の髑髏が蠢いていたのだった。
「こう云った場所に現れる怪物の姿形は対象人物の心の在り方が影響すると云われている…。天野桐人。答えろ。髑髏とは何を意味する?相原咲は何故、目覚めたがらない?その根源を解読し、相原咲を救え…。ソレが御前の成すべき事だ…。」
夥しい数の髑髏は右に左にユラユラと揺れていた。
音無は鞄から紙の束を取り出し、私へと放る。
「今回は俺にだけ渡されていた相原咲の詳細を記したカルテだ。出来る限り早く解読しろ。流石に、あの数は無理がある…。」
そう云うと…。
音無は怪物の方へと駆け出していった。