迷宮 ラビリンス
混迷した事情や事件。
解決が困難な問題や混乱した状況。
ソレも迷宮と呼ばれるモノ。
純白の眩い光に包まれる。反射的に瞼を閉じると、視界が遮断されていった。音が聴こえる。匂いも感じる。ソレは風の音であり、花の匂いだった。視界が回復していくと眼前の光景に違和感を覚えた。色鮮やかな花が咲き乱れ、美しい景色が広がっている。いるのだが…。ソレ以外が深い漆黒の色をしていた。総てを黒く塗り潰し、総てを黒く呑み込む様な漆黒だ。
なるほど。と音無は呟き…。倉木が話していた仮説は正しいのかも知れないな…。と続けた。
私は何も言う事無く、音無へと視軸をずらした。そんな私に気付いてか気付かずか音無は言葉を続ける。
「彼奴、倉木の咎、ディスクロージャーの能力は万能ではない。世界の総てを解っている訳では無いんだ。徐々に世界の真理を解明出来るらしいのだが…。現段階では、殆どが解明されてはいないみたいでな…。公には知らされてはいない事が多々ある…。俺にはよく話してくれるんだよ。彼奴が考えた世界の仮説をな…。」
例えば。と音無は続けていく。
「強大な異能力に耐えられず、眠りから目覚める事の無い植物状態になる症状。彼奴の仮説に依れば、ソレは被害者が目覚めたく無いからなんだと…。安らかな夢をずっと見ていたいからだってさ。」
そう云って漆黒の闇の向こうへと人差し指を置いた。その先に車椅子に座っている人影の様なモノが見えたのだった。