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桜の木の下には死体が埋まっている

作者: 太刀風 紫雨

数字は全角と半角を使ってます

(1部だけ変えるのは無理なようです)




君は桜の樹の下に何が埋まっているか知っているかい?


『何も埋まっていない』?


君は面白みの欠片(かけら)もない人だねぇ


そう!


そうだよ!僕はそっちが聞きたかったのさ!


知っているなら早く言い(たま)え!


ん?『そんなのは嘘だ』?


じゃあ君は桜の樹の下を掘ったことはあるのかい?


『タイムカプセルを埋めるのに小学校で』…?


まさか掘ったことがあるやつがいるとは…


『何もなかった』?当たり前だろう?


『あるみたいな話し方だった』?


それはそこにはないだけで、そこではない所にあるものだ


『何を言っているのかわからない』?


ずっと同じ話をしていたじゃないか



【桜の樹の下には死体が埋まっている】









「おはよう。朔夜(さくや)!」

彼女は水色のシュシュを付けた右手を敬礼のポーズにして元気良く言う

「おはよう…」

そんな彼女に僕は挨拶を返す

「も〜朝からテンション低いよ〜?」

「僕は低血圧なんだ…君が朝からテンション高いだけだろう…」

朝はつらい…

「せっかく可愛い幼馴染が迎えに来てあげたのに〜」

「鏡を見てから言ってくれ…」

朝から僕の幼馴染はうるさい

「どういう意味よ!もう迎えに来てあげないよ!」

「それは…嫌だな…」

「多分遅刻しすぎて留年するよね。朔夜は。」

「…僕の留年を君が阻止してくれ。」

それだけは勘弁してほしい




「今日も無事間に合ったねぇ〜」

「おかげさまでな」

まだHRまでは時間がある

「あっ!ルルたちだ!じゃ、また放課後部活で。」

そう言うと彼女は友達の方に行ってしまった

「お〜」

僕は気の抜けた返事をして教室に向かう

今日も今日とて退屈な一日が始まる















「さぁ諸君!なにか良い話はあるかね⁉」



ここは校舎の薄暗い物置小屋に部室を構えるミステリ研究部…

というのは表向きの話で本部活はオカルト研究部

通称オカ研となっている

今日も世にある奇々(きき)怪々(かいかい)な物語が語られて…



しぃん………



いなかった



「何かないのか⁉」

そう僕が言うと

「だって、オカルトなんてそのへんに転がってないですもん。」

「僕もありきたりなものしか…」

「あんまり見つからないよねぇ〜」

と部員からの無慈悲な言葉

「ゔっ」

ただこれは、ごもっともである。

「うちの部員たちはなんて冷たいんだ…!」

僕が大げさに振る舞っていると後輩の一人、Aが聞いてきた

「じゃあ部長はなにかあるんですか?」

それに対し僕は


「よくぞ聞いてくれた!」


若干引かれている気がするがまぁいいだろ

「どーゆうの?」

「僕が集めてきたオカルトは二つある!」


そう言いながら僕は二本指を立てふんぞり返った


「まず、1つ目は『過去に戻れる桜の木』だ」

部員は静かに聞いている

「この街のかもめ公園のどこかにその不思議な木はあり、自分が戻りたい日にちや場所を強く念じることでそこに戻れるらしい!」

「え〜…うさんくさ。それ、どこ情報なんですか?」

「僕が情報収集用に作ったサイトからだ!」

バンッと画面を見せる

「うさんくさ。」

ズバッと切り捨てられる

「先輩への敬意が足りない!」

これでも毎日書き込みがあるくらいにはバズってる(?)んだぞ!

「本当にあったら良いんですけどねぇ…」

ふぅ。とため息をつくA

「もう一つは何ですか?」

急かすな。

そんなに早く終わらせたいのかBよ

「もう一つは連続高校生失踪事件の話だ。」

「先輩…」

「容疑者はもう死んでいるが、まだ見つかってない人もいる。未解決の事件というわけだ!犯人の家には不可解な暗号も残っていたらしい!これはミステリ研としても…」

不謹慎(ふきんしん)ですよ!!」

机を叩き、Aは勢いよく立ち上がる

「お、落ち着いて⁉」

そう彼女が止めようとするがAは耳を貸さない

「狙われていたのは私達と同じくらいの人だったんですよ!それを謎解きゲームみたいに言って!それに…!それに…!」

Aがこんなに感情をあらわにするのは初めてかもしれない

「Aちゃん…。朔夜、この話はやめよう?死んでる人がいるんだよ。面白がってやることじゃないよ。」

そう彼女は言う

別に僕は面白がっているつもりではないのだが…

反対する者がいるならば無理にやるのも良くないだろう

「…A、すまなかった。面白がってやろうとしたわけではないんだ。」

「…。」

「ただの学生で調べることじゃないよな。この話は無かったことにしてくれ。」

コク…とAが頷く

「2つ目はあれだが、1つ目はどうだ?」

「別に…それなら平気…ですけど…」

「では!来週の土曜!かもめ公園で現地調査を実施する!現地集合だ!」

「わかった…」

「わかりました!」

「了解です!朔夜部長!」








そして土曜日

「過去に戻れる桜はなかったな…」

「そんなすぐに見つけられたらオカルトとか都市伝説じゃないでしょ。」

「次は僕ももっと頑張ります!」

「大丈夫!またがんばろ!」

と部員からの慈悲深い言葉

「うちの部員はなんて優しいんだ…!」

Aは

「この前と違うこと言ってるじゃん…」

と呆れていた

「今日はとりあえず解散だね」

副部長である彼女がそう言う

はぁ〜と僕はため息を付き

「今日は解散にしよう。なにか新情報があったら逐一(ちくいち)教えるように!気をつけて帰れよ!解散!」

「さようなら〜」

「では、また部活で。」

そう言って後輩たちは帰っていく

「私達も帰ろっか。」

「あぁ。」

僕はそう言って歩き出す

「え。待って。そっちじゃないよ?」

いや、

「こっちで良いんだよ」

僕はそのままある場所へ足を向けた









「ねぇ朔夜。帰ろうよ。」

木々がざわめく

「もうちょっと。」

かもめ神社へと続く石の階段を僕は振り返らずに進む

「怖いよ」

辺りは暗くなりつつある

「大丈夫。」

彼女がどんな顔をしているのか分からない




「もう帰ろうよ!!」




彼女が大きな声で抗議する

そこで僕は彼女の方を向く



「この先になにかあるのか。」



僕は静かに問う

「もう少しだけ。」

そう言い彼女の言葉を待たずに歩みを進める











頂上、(あか)い鳥居


「部活で連続高校生失踪事件の話をしたのを覚えているか?」

「うん…。でもその話は…」

「じゃあ『犯人の家には不可解な暗号も残っていたらしい』と言ったのも覚えているな?」

「…変な数列の話でしょ?」

「そうだ。一部の雑誌でしか記載されていなかったがな。」

くぐったとこで足を止める

「犯人は国語の教師だったらしいな。部活やら何やらでターゲットを決めていたのだろう。そして…」

ズボンのポケットに手を入れる

「その暗号がこれだ。」

そう言って僕はピラっと一枚の紙を取り出す

そこには


『21757432♪10532♪81(あおい)553123915522553241』


という数列が並んでいた

「国語の教師なのに数列か…と思ったが意味としては国語の教師らしいとも思ったよ。」

「解いたの…?」

「あぁ。解けたさ。」

僕は頷きながらそう返す

















「まず、この奇妙な数列は平仮名の五十音表だ。右から横にあ行が1、か行が2、さ行が3…と数字を振る。次に母音が「a」のとこが1、「i」のところが2…と数字を入れる。小さい数字はそのままそこにある文字を小さくすれば良い。」


近くにあった木の棒で即席の五十音表を地面に書く


「すると『かもめしんしゃ葵のさくらのきのした』となる。」


これが解ければ大体がわかると思うが…


「音符は『濁点』を指していると考えられる。濁点は別名『濁音符』とも呼ばれているからな。音符の場所に濁点を入れると『かもめじんじゃ葵のさくらのきのした』となる。『かもめ神社』。つまりここだな。」


鳥居にある神社の名前を指さしながら僕は言う

それからまた歩き出す


「最後に『葵』という数列の中に唯一ある漢字だ。これはおそらく…源氏物語の巻数を表しているのだろう。『葵』は9巻目だから…。」


また、歩みを進める


「ここ。」



目の前には桜の木



「『かもめ神社9番目の桜の木』」



暗号の答えだ



僕はリュックに入れていたシャベルを取り出す

土を掘る音が静かな境内に響く

「朔夜」

返事をせず

ただ、掘り続ける

ザクザクザクと


目の前の土色に色がついた

水色のなにか



水色の



布状の



なにか





「なんで…見つけたの…」


僕に問う声はか細く、震えていた


「泣いていたじゃないか。昔隠れんぼで見つけてもらえなかった時。」


僕は振り返る

彼女の右手首にはいつものようにシュシュがはめられている


「もう子供じゃない。」


水色の


「それでも」














「それでも、絶対今度は見つけ出すと約束しただろう?」
















幼い頃そう約束したから

君が寂しくならないように



彼女の体が透けていく


「バレてたよね」


「あぁ」


「なんで普通に話せてたの?普通驚くよね?」


「どっちでも…良いと思ったんだ。君が朝、僕を迎えに来て会話ができて隣で…いつも…みたいにっ…!本当に…!それだけでっ…良かったんだ……!」


それなのにもう、明日からその日常が来ることはない

気づいてしまったから

見つけてしまったから



「ちゃんと朝起きるんだよ?」

心配そうに彼女は僕の顔を見る

「あぁ。」

僕はゴシゴシと涙を拭う

「遅刻しちゃだめだよ?」

止まらない

「俺の…母親か?お前はっ…。」

嗚咽混じりになんとかそう言うと

「もう…!」

クスッと彼女が『笑う』



「朔夜。」

僕は顔をあげる







「見つけてくれてありがとう…!」








彼女の笑顔は眩しかった

もう泣いていない




彼女は、




朝日(あさひ)』は桜にさらわれて消えた。










君は桜の樹の下に何が埋まっているか知っているかい?


『死体が埋まっている』?


君は面白い人だねぇ


そんなはずないじゃないか!


僕はそんな話が聞きたいんじゃないのさ!


知らないなら早く言い給え!


ん?『前と言っていることが違う』?


じゃあ君は桜の樹の下を掘ったことはあるのかい?


あぁ…『タイムカプセルを埋めるのに小学校で』


そんな事を言っていたね…


『あるみたいな話し方だった』? じゃあ埋まっていたのかい?


『何もなかった』!当たり前だろう?


それはそこにはないだけで、そこではない所にあるものだ


『何を言っているのかわからない』?


つまりはこういうことだ。






【桜の樹の下には死体が埋まって()()







【桜の樹の下には死体が埋まっている】から

【桜の樹の下には死体が埋まっていた】に題名を変更することをここに記す



                   太刀風

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― 新着の感想 ―
[良い点] 推理のミステリーと不思議のミステリーの合わせ技ですね。
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