俺たちの青春はまだまだ始まったばかりだ!~お嬢様と生徒会長とメイドさんと妹に囲まれて~
というわけで、財力のある琴音さんと政治力のある一香とメイド力(?)のある凪咲さんと労働力(筋肉)のある俺とかわいい力(?)のある葉菜が揃うのは最強の布陣なのだ。
まぁ、葉菜はマスコットキャラという意味で。
「わぁ~、かわい~! お手伝い?」
「は、はいっ!」
「誰の妹さん?」
「な、波畑道広の妹ですっ!」
「えぇえ!? 似てなさすぎぃ!?」
……悪かったな。
でも、ほんと、葉菜はかわいいからな。
俺(というか父)に似なくてよかった。
ともあれ。
俺たちは次々と豚汁を作っては、生徒たちに配っていったのであった――。
………………。
…………。
……。
そして、一時間後――。
「……よし。全員に行き渡ったな。あとは、俺たちのぶんだ」
行列の最後のひとりに配り終わった。
大鍋には、まだ残りがある。
ちょうど俺たちが食べたら空っぽになりそうだ。
「ぴったりでしたね♪」
「少しおかわりぶんがございますが、残ったら道広さまにがんばっていただきましょう」
「お腹ペコペコ~」
みんな、がんばってくれたよな。
俺もずっと豚汁の具材をかき回し続けていたので疲れた。
そこへ、一香がやってくる。
「みんな、お疲れ様ー! 生徒たちから大評判だったよー! あと校長先生たちも豚汁絶賛してたよー! これで次回以降のイベントもすんなり開催できそうー!」
それはよかった。政治的な面は一香に任せておけばいい。
俺にジジイを転がすのは無理だからな……。
「新生徒会の支持率は高スタート発進ってところだねー! 一番最初にこの炊き出しをやったのは大正解ー!」
炊き出しをやる生徒会ってのも、なんなんだって話でもあるが……。
でもま、多くの人に喜んでもらえたのなら万事オッケーである。
なんにしろ多くの人の胃袋を満たすのはいいことだ。
豚汁だけだと物足りなかったかもしれないが、これからまた炊き出しをやる機会もあるだろう。
そのときは別のメニューも試そう。
「それじゃ、片づけしようー! あたしもバリバリ労働する!」
「俺の筋肉の出番だな。任せろ」
「みんなでお片づけしましょう」
「後片づけまで含めて料理でございます」
「うー、疲れたけど葉菜もがんばるよ~」
俺たちは心地よい疲労の中で後片づけを開始した。
やっぱり、いいものだな、みんなと作業するのは。
これからも琴音さんや一香のために働けるのはいいことだ。
以前の生きるためだけの労働と違って、楽しさがある。
「道広くん♪ 今週末はお屋敷でたっぷり恋人係よろしくお願いいたしますね♪」
「道広ー! あたしの彼氏係も忘れないでよー!」
うん。労働だけでなく、そっちもがんばらないとな。
「むー、お兄ちゃんのバカぁ! 女ったらし!」
「青春でございますね」
葉菜が怒り、凪咲さんが一言で締めくくる。
そうだな。これが青春ってやつか。
考えてみれば、労働で塗り潰されていた青春を取り戻しているんだな、俺は。
ずっとひとりで頑張り続けてきて、ようやく俺は自分の居場所を見つけた気がする。
この先どうなっていくかわからないが、ともかく今はみんなと一緒の学園生活を楽しんでいこう。
俺の……いや、俺たちの青春はまだまだ始まったばかりなのだから――。
(第一部)完
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