炊き出しイベント開始!
※ ※ ※
そして、炊き出しイベント当日――。
「……というわけで! 今日は炊き出しの日だぁーーーーー! みんなぁーーーーーーっ! 盛り上がってるーーーーーーーーー!?」
一香が校庭の朝礼台に乗ってマイクで生徒たちに呼びかける。
「「うおぉおおおおおーーーーーーーーーー!」」
「「きゃあぁああーーーーーーーーーーーー!」」
校庭に集まった生徒たちは歓声を上げていた。
まるでお祭り騒ぎだ。俺の知っている炊き出しと違う。
「多くのみなさんに集まっていただきましたね♪」
「食材を多めに集めておいて正解でございました」
「……うぅ……すごい人数だよぉ……」
特設テントに控えているメイド姿の三人が、それぞれ感想を口にする。
三人の前には大鍋がいくつも並んでいる状態だ。
なお、今回のイベントはもともとの生徒会メンバーたちも手伝ってくれている。
具体的には告知協力、会場設営、調理補助などなど……。あとは、当日の行列整理も。
一香の集めていた人材だけあって、みんないい人ばかりだ。
新参の俺たちに対しても「これで部活に専念できるぜ! 一香のことをよろしくな!」とか『うちの生徒会には正規の役員が必要だと思ってたのよ! みんなが役員になってくれてよかったわ! 一香ちゃんの力になってあげてね!』とか声をかけてくれた。
みんな一香のことが好きなんだと伝わってきた。
そのみんなから生徒会を託されたんだ。
絶対に、この生徒会で最高の仕事をしなければならないと気を引き締めた。
「それじゃ、みんなーーー! いよいよ炊き出し開始だぁーーーーっ! 十分な量があるから慌てず騒がず並んでねーーー!」
「「「おーーーーーーーーっ!」」」
一香の呼びかけに応えて、みんなが大鍋のある特設テントに並んでいく。
なお、豚汁受渡し用のテントから少し離れたところに食事スペース用のテントが四つほど設営されている。混雑緩和のことをちゃんと考えている配置だ。
そのあたりは旧生徒会の文化祭や運動会での運営経験のアドバイスが生かされている。
テントも学園の備品だ。
「来たぞ。落ち着いて滞りなく配っていくんだ。葉菜は割り箸を頼む」
「う、うんっ!」
大鍋は、かなり巨大だ。葉菜の背丈では危ない。
ここは上手く役割分担をして、自分たちのベストを尽くす。
「豚汁はわたしたちに任せてください♪」
「家事はメイドの本領。お手のものでございます」
学食から借りてきたトレイに葉菜が割箸を置き、凪咲さんが豚汁をよそって載せ、最後に琴音さんが生徒に手渡す。
無駄のない見事な流れ作業だ。
なお、俺は次の豚汁を保温しつつ、頃合いを見て大鍋を移動する。
これはかなりの重さなので、俺の筋肉の出番となる。
次々と生徒たちは豚汁を受け取っていった。
「おお! うまそうだぜ! ただで食うメシ最高ぉー!」
「……これで食費が助かる……」
本当に困窮している者以外も混ざっているかもしれないが、とにかく多くの人に食べ物が届けばいい。
こういうお祭りのようなイベントにしてしまえば、炊き出しに並ぶことに対して後ろめたい気持ちにならないだろう。
困窮していた頃の俺と葉菜も炊き出しに並んだことはあったが、複雑な心境になったしな……。
そういう意味で、一香のマイクパフォーマンスは場を明るくすることに役立っている。
そして、俺たちがこうして豚汁を配ることで新生徒会の顔見せにもなる。
イベントをしつつアピールもできるという一石二鳥というわけだ。