四人の力をあわせて
「でも、校長とかの許可は大丈夫なのか?」
「あたしが頼めば大丈夫! 校長先生あたしに甘いから!」
校長は一香にメロメロなのだろうか。
それはそれで複雑な心境ではある。
「なーに、道広? ヤキモチ~?」
「ち、違うっ!」
なんで校長に嫉妬せねばならないのだ。
「将来政治家になるためにはジジイのひとりやふたり転がせられないとねー!」
うん。末恐ろしい。
一香の将来が楽しみであり怖い。
「ふふふ♪ 一香さん、頼もしいです♪」
「扇山家としても、ぜひほしい人材でございますね」
一香と扇山家が組んだら、すごいことになりそうだ。
もしかすると俺は伝説の始まりを目撃しているのでは……?
「お兄ちゃん、葉菜たちもがんばらないと!」
「お、おう……」
俺たちだけ役立たずでは申し訳ない。
せめて肉体労働で鍛えた筋肉を役立てねば。
「労働なら任せろ」
「は、葉菜は……やれることはなんでもしますっ!」
プレッシャーが微妙にかかっているが、俺たちポンコツ波畑兄妹も少しは役に立たねば存在意義がない。
「道広も頼りにしてるよー! その筋肉はそれだけで価値がある!」
「道広くんの筋肉は素晴らしいです♪」
「道広さまの大胸筋と上腕二頭筋は尊いものでございます」
俺(の筋肉)が認められた!
「葉菜ちゃんはかわいい! そのかわいさだけで価値がある!」
「食べちゃいたいぐらいかわいいです♪」
「成長期の少女のかわいらしさほど尊いものはございません」
葉菜も認められた!
「労働メチャクチャがんばります!」
「葉菜も一生懸命がんばりますっ!」
俺たちはチョロい兄妹だった。
まぁ、持たざる者である俺たちは筋肉とかわいさで勝負するしかない。
「道広には食材運びとかの肉体労働がんばってもらうね! 葉菜ちゃんは、えっと、メイド服を着てもらって豚汁をよそってもらうとかすればいいんじゃない!?」
すでに豚汁がメニューに選ばれているようだ。
まぁ、炊き出しにはいいかもしれないな、豚汁。
メイド姿で豚汁というのは、なかなかアンバランスだが。
でも、それはそれでいい。むしろ、そっちのほうがありかもしれない。俺たちらしい。
エレガントな炊き出しなんて似合わない。
「よーし! そうと決まればさっそく準備に入ろうー! まずは食材集め! そして生徒たちへの告知! あとは校長先生への許可もとっておかないとね! 食堂のおばちゃんはあたしの味方だからなんとかなる! 学食を制す者は学園を制す!」
謎の名言が出た。
でも、俺たち成長期のハラペコ学生にとって食べ物の問題は切実だ。
校長と食堂のおばちゃんを味方につけている生徒会長は最強の存在ではなかろうか。
「うふふ♪ 楽しくなってきましたね♪」
「伝統と規律で縛られていた都内の学園からは考えられない自由さとフットワークでございますね」
やはり偏差値高めのお嬢様学園は自由とは無縁なんだな……。
うちのような底辺校だからこそ、適当にやれるというのはあると思う。
ともあれ、俺たち新生徒会は初仕事に向けて動き始めた――。