新生徒会の初仕事
※ ※ ※
翌日の放課後。
「波畑葉菜です! よろしくお願いします!」
生徒会室にやってきた葉菜はペコリとお辞儀をする。
「おー! 素晴らしい! ずっと人手不足に悩まされていた生徒会に次々と戦力が!」
一香は大喜びである。
戦力といっても、高校が違うどころか小学生なんだけどな。
「葉菜ちゃんは外部委員みたいな扱いで! 生徒会が忙しいとき以外はこの部屋で宿題やるなり遊ぶなり自由に過ごしてていいよー!」
「はい! ありがとうございます!」
ここは学童保育か。
でも、夕方に葉菜をひとりで家にいさせるのは避けたかったので、ありがたくはある。
「顧問の先生と校長先生には許可取ったから! あたしたちの自由に活動していいって!」
いいのか。さすが校訓が『適当』だけある。
「あと兼任していた生徒会メンバーも暇なときは手伝ってくれるってー! あたしたちの生徒会はこれまでにない戦力だよ!」
しかし、これだけ戦力が整ったところで、なにをやろうと言うんだ。
生徒会の仕事っていっても、いまいちよくわからない。
「というわけで新生徒会になって初めての会議開始ー! みんなー! なにかやりたいことあるー!? 提案なんでも大歓迎ー!」
ほんと、いきなりだな。
提案か。うーむ。
特に思い浮かぶものはないな……。
「そ、それでは……よろしいでしょうか?」
琴音さんが緊張気味に挙手した。
「はい、どうぞ!」
一香が促す。
「は、はい。ええと……炊き出しをするというのは、どうでしょうか?」
「炊き出し?」
「はい。学園内には以前の道広くんのように困っている方がいるかもしれません。無料の食事を提供することで胃袋を満たすことができればと思うんです」
……素晴らしい。さすが琴音さんだ。
俺はたまたま琴音さんに救われた身だが、まだまだ学内に困窮者はいるかもしれない。
まあ、本来は行政とかNPOとかそういうものがやるべきことな気もするが。
だが、学園でやるからこそ意味があるかもしれない。
行政とかNPOとか謎の団体とかに比べて敷居を低く感じるだろう。政治的なものと切り離せるし。
「おおおー! グッドアイデア! それならあたしの料理の腕も振るえる! 考えてみれば道広には経済的な意味ではもうお弁当作る必要ないしねー! 彼氏係としてはこれからも作るけど! 確かにうちの学園内で困っている人を助けることは生徒会としては大いにやる意味があるよね!」
一香は乗り気だ。
「俺も賛成だ。というか、ほんと、俺たちはふたりに大いに助けられたからな……。食べるものがあることは素晴らしい。俺も恩返しをしないと」
「葉菜も賛成ー! 以前の葉菜たちみたいにお腹ペコペコで困っている人を助けたい!」
俺たち兄妹に続き、
「とても素晴らしい考えだと存じます。扇山の家訓に沿う立派な行いでございますね」
凪咲さんも賛同の意を示した。
全会一致である。
「いいねー! やっぱりみんなで会議をやると盛り上がるー! それに炊き出しなら食堂のおばちゃんと強いコネを持つあたしの力を存分に使えるー!」
うむ。新生徒会の初仕事としては、いいのではないだろうか。