四人で徒歩通学
※ ※ ※
翌朝。玄関前で待っていると――。
俺たちの家の前に黒塗りの高級車が停まった。
今までとは逆。琴音さんと凪咲さんが俺のところへ来てくれたのだ。
なお、ふたりとも昨日のうちに用意したのかうちの学園の制服姿である。
「道広くん♪ 一緒に歩いて登校しましょう♪」
「道広様、本日から改めてよろしくお願いいたします」
以前は借金取りが押しかけていた我が家にお嬢様とメイドさんがやってくるとは……。
変われば変わるものだ。というか、近隣住民からどう見られているんだろうな、俺たち。
「それじゃ、行くか。葉菜、忘れ物はないな?」
「う、うんっ! 葉菜、なんだか緊張してきたよぅ!」
「ふふふ♪ こうしてみなさんと一緒に登校するのはワクワクいたしますね♪」
「いいものでございますね。わたしも久しぶりの学校が楽しみです」
琴音さんの通っていたお嬢様学校じゃ、みんな高級車通学だったんだろうしな……。
今さらながら横に並んで歩くのが畏れ多くなってくる。
あと、凪咲さんはこれまで学校に通っている雰囲気はなかったが、今までどうしていたのだろうか。凪咲さんも色々と謎が多い。
ともあれ、俺たちは四人で歩いていく。
屋敷にいるときとはプレッシャーが違う。
近隣住民や通行人からの視線を感じまくる。
「……ちゅ、注目の的だよぉ~……」
葉菜が居心地悪そうにしているが仕方ない。
ともかく、琴音さんと話そう。
「……えっと、学園では俺と同じクラスなんですよね?」
「はい♪ 無理を聞いていただいて、道広くんと一緒の教室で学ぶことができます♪」
「わたしも同様でございます」
クラスの反応がどうなることやら。
ちょっと、いや、かなり心配である。
庶民の住む村にいきなり高貴なお姫様がやってくるようなものだもんな。
しかも、メイドさんつき。
「万が一お嬢様に無礼を働く者が出ましたら、わたしが実力行使で排除いたします。武術もしっかりと習得しておりますので」
心強いけど物騒ではある。
まぁ、クラスには一香もいるし大丈夫だろう。
「わたくし、みなさんと学食に行くのが楽しみです♪」
琴音さんは期待に胸を膨らませているようでニコニコ顔だ。
お嬢様学園に通っていたときの朝は俺に笑顔を見せてくれてはいたが、どこか憂いを感じられた。今は一点の曇りもない。
……この笑顔を守るために、がんばらないとな。
俺は密かに気を引き締めた。
俺と葉菜を救ってくれた琴音さんのことを絶対に守る。
なんとか学園生活をエンジョイしてもらわねば。
「あ、そうです♪ 道広くん♪ 学校でも『恋人係』はよろしくお願いいたしますね♪」
「えっ? あ、はい……」
でも、一香との間の『彼氏係』もあるんだよな……。
これは、どうすればいいんだろうか。
学園内で堂々と二股をするとか、それはそれでハードルが高すぎる気がするが……。
まぁ、うまくやっていこう……。
ちょっと不安もあるが……ともかく、やるっきゃない。
「お兄ちゃん、ふぁいとだよっ!」
両手の拳を握り締めた葉菜から声援を送られた。
うむ。がんばらねば。お兄ちゃん、がんばる。




