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【煩悩退散】琴音さんにマッサージをする【心頭滅却】


「は、はい」


 俺は凪咲さんの指導に従って体重をかけて座る。そのあまりの柔らかさに心頭滅却が崩れそうになるが、ここで煩悩がダダ漏れでは執事失格である。


 喝っ!


 心の中で気合を入れ直し、しっかりとしたフォームでマッサージを開始する。


「……劇的によくなりましたね。その調子です。もっと腰を入れて前傾姿勢になり、体重をかけ親指で押しこむように」

「りょ、了解です」


 凪咲さんに手ほどきされるままマッサージに熱中していく。

 だんだん自分でも上達していくのがわかった。


「……ふむ、素晴らしいです。道広さまは飲みこみが早いですね。とてもお上手です」

「あ、ありがとうございます」


 マッサージを通して凪咲さんとの親密度と信頼度が上がった気がする。


「み、道広くん、わたくしにもお願いしますっ!」

「むぅう~、お兄ちゃん~!」


 しかし、それに反比例するように琴音さんと葉菜の不満が高まっていた。

 女子間のパワーバランスをとるのが難しい。


「じゃ、じゃあ、次は琴音さんで」


 俺は立ち上がると今度は琴音さんの腰に乗る。


「あぁ♪ ようこそ、いらっしゃってくださいました♪」

「ど、どうも……失礼します」


 もうほんと、どういう状況だ。

 いつから俺の人生はハーレムラノベの主人公になってしまったのだ。


「それでは、マッサージを……」


 凪咲さんよりも琴音さんの体はさらに柔らかかった。

 これに乗り続けるのは精神的にも肉体的にも……。


 いかん。

 喝っ! 喝っ! 


 心の中で気合を入れ直し、明鏡止水の境地でマッサージを開始した。


「あぁあ♪ い、いいですっ♪ 道広くん、すごく気持ちいいですぅ♪」


 勘弁してくれ。これはなんの修行だ。


 俺も健全な思春期青少年男子なので、こんな柔らかい感触と琴音さんのそんな声を聞かせられたら揺らいできてしまう。


「お兄ちゃん、不健全だよぅ!」

「ち、違う……これは健全なマッサージじゃ……」


 葉菜から糾弾されつつも、俺は死んだ魚のような目でマッサージを続ける。


 煩悩退散。心頭滅却。煩悩退散。心頭滅却。

 煩悩退散。心頭滅却。煩悩退散。心頭滅却。


 心の中で呪文のように唱えてリズムよくマッサージを繰り返す。


「道広くん、本当に上手ですぅ♪ あぁあ♪」


 煩悩退散……。心頭滅却……。煩悩退散……。心頭滅却……。


「お兄ちゃん! 交代だよっ! 次は葉菜の番っ!」


 葉菜から怒鳴られてしまった。


 ま、まぁ……これ以上は色々な意味でマズい気もするしな。助かった。

 ありがとう健全の守護神である我が優秀な妹。


「み、道広くぅん♪ もっと、もっと、お願いしますぅ……♪」

「……すみません、これ以上は色々と問題があると思うので……」


 一応謝罪して俺は葉菜のほうに移ることにした。


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