琴音さんと葉菜からマッサージ
「こんな感じでしょうか?」
琴音さんが両手の指で背中をグイグイ押してきたが、凪咲さんのときのような気持ちよさはない。物足らない。
「お嬢様、もっと力を入れても大丈夫でございます。このような感じで」
凪咲さんが後ろから密着して指導しているのだろう。
琴音さんのとは別の指の感触がしてグリグリされる。
「おふぅ、き、効く……」
「な、なるほど……。このあたりを親指で円を描くように押すのですね? それでは」
お、おおぉ……。
さっきよりも力が強くなって、いい感じだ……。
「おぉお……い、いいです、琴音さん……凝りがほぐれます……」
「そうですか? ふふふっ♪ 喜んでもらえてよかったです♪ ぐりぐり~♪」
「おぐぅ、い、いぃい……」
我ながら情けない声が出てしまう。
しかし、気持ちいいので仕方ない。
人類はマッサージの前には無力なのだ。
「むぅう~! お兄ちゃんっ! だらしない顔してるよぅ~!」
葉菜から責められてしまうが、これは仕方ないのだ……。
「は、葉菜もっ! お兄ちゃんにマッサージしますっ!」
そう宣言すると葉菜もベッドへ上がった。
「いらっしゃい、葉菜ちゃん♪ 一緒に道広くんにマッサージしましょう♪」
「は、はいっ」
琴音さんの前に葉菜が座る格好になったようだ。
というか、俺はいつから女子の乗り物になったんだ。ちょっと嬉しい。
いや、嬉しくない。屈辱だ。俺は誇り高き日本男児だ。でも、もっとカモン!
「お兄ちゃん、覚悟ぉっ! えいえいっ!」
そして、葉菜から力任せに両手の拳(?)でグリグリされる。
「うぐぉおぉっ……!? こ、これはこれで効くっ……!」
葉菜の小さな指でグリグリされてもあまり効果がないだろうから、これでちょうどいい。
「では、わたくしは葉菜ちゃんをマッサージしましょう♪ もみもみ♪」
「きゃうん、琴音さんっ……あっ、あぅ……そ、それっ……き、気持ちいいですっ」
「それでは、わたしはお嬢様の肩をお揉みいたします」
「ああぁ♪ いいですねぇ♪ さすが凪咲さん、すごく上手です♪」
……えっ? なにこの百合の花咲き乱れる状況は……。
ひょっとして、俺、邪魔なのでは?
……というか、こんなヘブン状態でいいのか……?
そう思いつつも俺はすっかりマッサージタイムをエンジョイしてしまうのであった。