メイド姿の琴音さんと葉菜
「……お待たせいたしました。こちらへお着替えください」
ほかのメイドさんたちを引き連れて凪咲さんは戻ってきた。
それぞれの手にメイド服と執事服を持っている。
俺たちの着替え用の候補だろう。
「それでは着替えましょう♪ ふふふ♪ ドキドキしますね♪」
「は、はいっ」
「りょ、了解ですっ……」
なんか仕事をするというよりもコスプレに近い気もするが、まずは形から入ることも大事だろう。
というわけで――俺たち三人はメイドさんたちに手伝ってもらって、それぞれメイド姿と執事姿になった。
「……執事服って、なかなか窮屈だな……」
これまで肉体労働ばかりしてきた俺は、当然、こういうキッチリした服装は初めてだ。
「よくお似合いでございますよ」
凪咲さんから褒められる。
「ありがとうございます」
しかし、まぁ、しっくりこない。
でも、慣れねば。
さて、琴音さんと葉菜は……?
俺はメイドさんたちに囲まれている琴音さんと葉菜のほうを見た。
メイドさんたちが離れていき――ふたりが現れる。
「おおおっ!」
つい感嘆の声を上げてしまった。
琴音さんと葉菜のメイド姿は、すさまじくかわいかったのだ。
これが萌えというものか。
ワビ・サビ・モエ。
ジャパニーズカルチャーすごい。
「道広くん、わたくしたちのメイド姿いかがでしょうか?」
「お、お兄ちゃん! どう? 葉菜、似合ってるっ?」
少し恥ずかしそうに頬を赤らめながら、琴音さんと葉菜が訊ねてきた。
「日本ノ文化ハ素晴ラシイト思イマス」
なぜかカタコトで応えてしまう。
「お兄ちゃん……」
葉菜から残念なものを見る目で見られてしまう。
「あー、えっと……すごく似合っててかわいい! ふたりともかわいい! めちゃくちゃかわいい! かわいいいったらかわいい! かわいい、かわいすぎる!」
頭の悪い俺はそう連呼するしかなかった。
「ふふふっ♪ 照れてしまいますね♪」
「お兄ちゃんっ! 語彙が貧困すぎるよぅっ!」
とはいうものの、嬉しそうだ。ふたりの頬がますます赤くなる。
というか褒めている俺のほうもなんだか恥ずかしいな、これは。
「青春でございますね」
そんな中、凪咲さんだけが冷静だった。
うん、まぁ、ちょっと青春なのかもしれない。
ともあれ――。
「それでは、皆様にお仕事を振らせていただきます」
さっそく凪咲さんが俺たちに指示を出してくれることになった。
さて、どんな内容だろうか?




