メイド対決!?
※ ※ ※
「というわけで俺をバシバシこき使ってください!」
「葉菜にもメイドさんのお仕事させてくださいっ!」
翌日の夕方。
俺たち兄妹は扇山邸で凪咲さんと琴音さんに揃って申し出た。
今の俺たちは労働意欲が漲っている。
「素晴らしい心がけでございますね」
「……とてもありがたい申し出なのですが、おふたりと一緒に過ごす時間が減ってしまうのは悲しいです……」
琴音さんの悲しげな表情を見ると決意が鈍ってくる。
しかし、このままケーキを食べ続けてただイチャイチャしているだけでは人間的にダメになっていってしまう。
「お嬢様、ここはおふたりの心意気に応えてこそ扇山家の当主として相応しいかと」
「……そうですね。おふたりの意志を大事にするべきですよね……。でも、道広くんはわたくしの恋人係でもあるのです。ですから、ありていに言って今ここにいるのにイチャイチャしないのはありえません」
琴音さん、恥ずかしいことを堂々と言ってるな……。
いつの間にか最強キャラと化している。
「むぅう~」
一方で、葉菜は唸っていた。
「琴音さん、お兄ちゃんを甘やかしちゃダメですよぅ!」
「いえ、これは甘やかすというよりもわたくしが無理を言って甘えているのです。なので非があるとしたら、わたくしのほうです」
「…………むむうぅ~…………」
恩人である琴音さんんからそう言われてしまうと、葉菜も黙るしかないようだ。
どんどん琴音さんが無敵キャラになりつつある気がする。
さすが名門扇山家の当主。つよい。
「お嬢様、わたしに策がございます」
そこで凪咲さんが助け舟(?)を出した
「策とは。なんでしょうか?」
「はい。お嬢様にメイドの格好をしていただくのはどうかと」
「わたくしがメイドの格好を?」
「左様でございます。さすれば道広様の仕事中でも一緒にいることができます」
「まあ♪ それはとても素晴らしいアイディアですね♪」
名案とばかりに琴音さんは両手をパンと合わせる。
名案……? 名案なのか……?
……琴音さんのメイド姿?
…………。
……おおぉおおおお!
すごい似合いそう! 見たい!
「は、葉菜も負けないもんっ。立派なメイドさんになってみせるもん!」
「ふふふっ♪ とても楽しそうですね♪ わたくしも負けませんよっ♪」
なんということだ。
先日は一香と琴音さんが争ったが、今回は葉菜と琴音さんが競いあう状況になるとは。
「お嬢様と葉菜様のメイド姿を同時に見られるとは真に喜ばしいことでございます」
凪咲さんは無表情であるが、声に歓喜の色を滲ませていた。
「それでは、さっそくメイド服と執事服を用意させていただきます」
一礼して凪咲さんが去っていく
いつもよりも足取りが軽やかだ。




