ラノベに影響を受ける妹
しかし、妹からの好感度が著しく下がっている状況は辛い。
「いや、誤解しないでくれ。……俺にとって一番大事な存在は葉菜だぞ」
「ふぇえっ!?」
「当たり前だろ。これまでで最も長く一緒の時間を過ごしてきたのは葉菜なんだからな」
家族なのだから、当たり前なのだが。
「むぅぅ~……」
しかし、葉菜はまたしても唸り始めた。
「お兄ちゃん、妹までハーレムに加えるつもり? 不潔っ! 不健全だよぅっ!」
なんでそうなるんだろうか。
「葉菜、落ち着け。変なラノベの読みすぎじゃないのか」
葉菜は学校や市の図書館でここのところラノベを借りて読むことが増えていた(ちゃぶ台で読書している姿を見かけるのだ)。
その影響もあるのかもしれない。
表紙やタイトルからするとラブコメとか読んでいるっぽいし。
「ち、ち、違うもんっ……! それにラノベは変じゃないもんっ!」
珍しく葉名がムキになっている。
まぁ、俺も昔はラノベを少しは読んでたしな。
「もし小説でも書いてるんならいつでも読むぞ」
「か、か、か、書いてないもんっ! それにもし書いてたとしても、お兄ちゃんに見せるわけないもんっ!」
これは怪しい。
俺のお兄ちゃんセンサーがビンビン反応している。葉菜はなにかを隠している。
おそらくラノベに影響を受けて執筆でもしてるんだろう。
「まあ、いいや。自分の人生なんだから、葉菜の進みたい道へ進め。琴音さんのおかげで学費はあるからな」
昔の経済状況では葉菜を大学や専門学校に行かせることは絶対に不可能だった。
やはり、世の中、金がないと選択肢が狭まってしまう。
まぁ、小説家なんかは学校に行けばなれるってもんじゃないだろうけど……。
「ああ、あとメイド修行したいって話だけどいつでもオッケーらしいぞ。でも、学業のほうが大事だから好きなときに来ていいって。俺もこれから執事のなんたるかを学んでいくつもりだ」
「う、うんっ! わかった! 葉菜、まずは立派なメイドさんになる!」
「でも、勉強第一だからな」
「う、うんっ」
そういう俺のほうが勉強ぜんぜんダメなんだけどな……。
確かに葉菜の言う通りこのままではヒモみたいでダメ人間である。
琴音さんと扇山家のために仕事をせねば。
「よし、俺もがんばるぞ。葉菜の兄として立派にならなきゃな!」
「お兄ちゃん……うん、がんばってね!」
葉菜のおかげで、俺も心を入れ替えることができたのだった。
持つべきものは優秀な妹である。
葉菜「面白かったら、評価してくれると嬉しいですっ!」




