表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/89

ただいま妹

※※※


 放課後。

 弁当箱を一香に返した俺は、まずは自宅へ帰ってきた。

 鍵を開けて中に入る。


「ただいま。葉菜、帰ったぞー」

「お兄ちゃん、お帰りー♪」

「ああ、ただいま」


 葉菜が満面の笑みで迎えてくれた。


 つい先日までは毎日のように借金取りが家に押しかけていたのだ。

 そう考えると、こうして家に帰ってこられるようになったのは感慨深い。


「えへへ♪ こうやって普通にお兄ちゃんのことを出迎えられるようになって嬉しいよぉ♪ 居留守使わないでいいし怒鳴ってくる人も来ないし」

「ああ。平穏な暮らしって本当にいいな……」


 しみじみと思う。

 ほんと、世界はこんなにも静かだったんだな……。


「あのとき琴音さんに出会わなかったら葉菜、死んでたし、本当に、地獄で仏だよ……」

「ああ。すべて琴音さんのおかげだな……」


 結局、俺の稼ぎじゃ焼け石に水だったしな……。

 そして、葉菜自身がそこまで思い詰めていたことに思い至らなかった俺は兄失格である。

 まあ、労働だらけで葉菜のことを気にかけていられなかったというのもあるが。


「えっと、それじゃ、少し休んだら琴音さんのところへ行こう」

「う、うんっ。いまだに緊張するよぉ……」


 俺たちは三日に一度、夕飯を扇山家でいただくことになっていた。

 琴音さんの希望によるものだ。


 豪華なメシを食べられるのはいいのだが、俺たちのような貧乏人があの豪邸に入るのは気が引ける。まあ、琴音さんと凪咲さんと四人で食事をとるだけといえばそうなのだが。


「あんなにおいしいものがたくさん食べられるなんて、葉菜、夢の中でも思わなかったよ。いまだに夢じゃなかいかなって思うぐらいだもん」


 俺も同感だ。

 本当にこれは現実なのかと疑うレベルである。


 朝、起きるたびに不安になる。ぜんぶ夢なんじゃないかと。

 だが、通帳を見てホッとするのだ。


 初めて扇山家から入金されたあと通帳に記帳したときは信じられない額を見て卒倒しそうになったものだ。


 ともあれ。着替えをすませ、葉菜が宿題をやるのを見てやり(といっても優秀な妹なので教えることはほぼない)、琴音さんのところへ向かう時間となった。


「よし、行くか」

「う、うんっ!」


 俺たちが持っている服で最もマシなものを着て、扇山家へ向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] なんだろう、ドキドキするわ。 まるで俺が扇山家に行くかのようだ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ