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激おこ葉菜ちゃん~妹から説教タイム~

※ ※ ※


 なんだかんで一か月ほど過ぎた。

 あれからも琴音さんのところに一香は時々ついていった。


 そのたびに俺は恋人係と彼氏係としてエスカレートしていく争いによって疲弊しつつもヘブン状態であったが……まぁ、昔のハードな肉体労働に比べればマシである。


「……ふう、でも、心労が溜まるな……」


 今日も勤めを終えて帰ってきた俺は、家で休息をとっていた。

 もうなんかふたりの匂いが服とかに付着してしまって甘い香りを発している。


 そこへ――葉菜が緑茶を載せたお盆を持ってきた。


「お兄ちゃん、お茶っ!」


 葉菜はダンッと音を立てて湯呑を置いた。


「お、おう、ありがとう」


 なんだか葉菜、すごく不機嫌そうだな……。

 こんな乱暴に湯呑を置かれるとは。表情も怒っている感じだ。


「……どうした、葉菜? なんかあったか?」

「別にっ!」


 いや、明らかに怒っている。

 なんなんだ?


「溜めこむのはよくないぞ。なんでもお兄ちゃんに言ってみろ」


 そうだ。妹の悩みにはちゃんと乗ってやらないと。

 俺は同じ過ちを繰り返さない。


「…………むぅう~~~……!」


 なぜか葉菜は唸る。

 意味がわからない。


 そんな空気の中、とりあえず俺はお茶を飲んでいたのだが……。

 やがて――葉菜は意を決したように口を開いた。


「……お兄ちゃんっ! 二股はダメだよぅ!」

「うぇえっ!?」


 ふ、二股って。


「い、いや、違っ、違うんだっ。これは二股とかじゃなくて係というか任務というか、大事な仕事なんだ……」

「不健全だよっ! 不潔だよぅ!」


 おおうっ……。

 年頃の少女の瞳にはそう映ってしまうのだろうか。

 妹から糾弾されるのはショックだ。


「……お兄ちゃん、ちゃんと琴音さんと一香さんのどっちのことが本当に好きなのかちゃんと真剣に考えてる? このままじゃ、お兄ちゃんはヒモだよっ! ただのダメ人間だよっ!」

「え、えぇえええ……」


 まさか妹から、そんなことを説教されるとは。

 情けない。兄としての威厳にかかわる。


 というか俺がヒモだなんてそんな、まさか……。

 俺みたいな平均レベルの顔でヒモなんてありえない。

 でも、葉菜からすればそう見えているんだよな。ここは釈明せねば。


「……でもな、葉菜。大人の世界には、あえて関係を中途半端にしておくことが大事なときがあるんだ。いきなりどちらかを強引に選んだら、選ばれたほうも選ばれなかったほうもダメージを受けるだろう? 無事ではすまないんだ」


 俺、妹(しかも小学生)相手に、なに話してるんだろ……。


「むぅう~……お兄ちゃんの女ったらしっ! ホスト!」


 小学生にとってホストは悪口なのだろうか……。

 まさか俺がホスト呼ばわりされる日が来るとは。


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