ニコニコ笑顔のプレッシャー
「それでは、わたしはおかわりを持ってまいります」
「よ、よろしくお願いします……」
さすがにバツが悪くなったのか、一香は小さくなりながら頭を下げていた。
凪咲さんが出ていったところで、琴音さんが口を開く。
「一香さん♪ よろしければ生徒会長のお仕事や学園での道広くんのことについてお聞かせください♪」
「えっ!? ええーっと……生徒会っていっても、そんなたいしたことしてないですけど……あと、学園の道広はこのまんま道広というかー……」
「道広くんととても仲がよいように見えますが♪」
ニコニコしながら訊ねてくる琴音さん。
いつもの笑顔よりも圧がある気がする。
笑顔なのに怖い。
「え、ええーっと、そ、それは、なんというかーっ……」
ここで『彼氏係』という単語を出すべきではないことは一香にもわかっているようだ。
でも、そのことは琴音さんに報告しておくべきなのだろうか……。
なんだかこれじゃ二股かけているようで、俺としても気分が微妙ではある。
「おふたりは実はつきあっていらっしゃるのですか?」
笑みは崩さないまま、琴音さんが訊ねてくる。
圧力がさらに強まっている!? なんというプレッシャー!
「えっ!? えええーっと、そ、それはーっ……な、なんというかーっ……」
しどろもどろになる一香。いかん。その反応は逆効果だ。
でも、一香は嘘をつけない性格だからな。
「道広くん?」
「おうふっ!?」
琴音さんの圧のあるニコニコ笑顔が今度はこちらに向けられる。
これは一香がビビるのもわかる。怖い、笑顔なのに怖い。
「よろしければ、おふたりの現在の関係をお話くださいませんか?」
……これは実質強制である。
俺としても恩人である琴音さんの願いとあれば話さざるをえない。
「じ、実は……」
「あたしが頼んで道広には『彼氏係』をやってもらってますー!」
俺が話そうとしたところで一香が勢いよく事実を口走った。
「…………『彼氏係』、ですか?」
琴音さんはキョトンとした表情になって訊き返した。
「そうですあたしが道広に無理を言って『彼氏係』をしてもらっているので道広にはなんの非もありませんー!」
さっきまでポンコツ化していたのに急に吹っ切れたように俺のことを擁護する一香。
って、このままかばわれていていいはずがない。
「でも承諾したのは俺なので俺にも非があるというか!」
って、なんで浮気がバレた彼氏みたいになっているんだ。
しかし、琴音さんになんの報告もしていなかったのはよくなかった。
まぁ、琴音さんは体調を崩していたしな……。




