アグレッシブな琴音さん
「……だ、ダメでしょうか?」
再び涙目になって訊ねてくる琴音さん。
いかん、俺は琴音さんの涙には弱いのだ。
しかし……しかし、しかし、しかし!
これはさすがにコトが大きすぎる。
というか、琴音さんが望んでも周りが絶対に認めないだろう。
そう思って凪咲さんのほうに視線を向けたが――。
「お嬢様、とても素晴らしいお考えだと存じます」
普通に賛成していた!
いいのか!? 伝統と格式ある扇山家なのに!
でも、今の当主は琴音さんらしいだから最終的な決定権は琴音さんにあるのか。
俺たちの借金まで琴音さんの一存で返してしまったわけだしな。
相続権者が未成年の場合は後見人(法定代理人)がいないと財産を自由に動かせないって話だったと思うが(俺も両親が蒸発したりして色々あったので、そのあたりの法律は調べた)、琴音さんの意思を最大限に尊重してくれる後見人なのだろう。
確か、おばあさんがいると言ってたと思うから、その人か。
「おばあさまも喜んでくださると思います♪ 早くひ孫の顔を見たいと仰っておりましたから♪ なので、ぜひ……不束者ではございますが、お願いいたしますっ♪」
いやいやいやいやいや……。
本当にお嬢様の考えというのは庶民である俺の想像を遥かに超えている。
しかも、行動力まである。いきなり人生最大の選択を迫られる俺である。
「ちょ、ちょっと、いくらなんでも急すぎるんじゃ……も、もちろん、琴音さんのことは素晴らしい女性だとは思ってますが……」
「なら、ぜひ♪」
「そうです。ここは男らしくご決断くださいませ」
迫るふたり。
お嬢様とメイドの最強タッグによって陥落させられそうだった。
「で、でも、俺たち出会ってまだ一ヶ月も経ってないというか……」
「運命の出会いに日数なんて関係ありません♪」
キラキラした瞳で断言されてしまう。
もうほんと、夢見るお嬢様モードだ。
これでは将来、変な男に騙されないか心配というか、世間的には俺は変な男扱いだろう。
「ぜひぜひ♪ 末永くよろしくお願い申し上げます♪」
「ぜひぜひ。どうか、ご決断ください」
ずいずい迫ってくるふたり。
もう目と鼻の先だ。
「えいっ♪」
そして、琴音さんは正面から俺を捕獲するように抱きついてきた。
――ぽにょん♪
あああああ! こんな正面から柔らかくて弾力のあるものを押しつけられたら!
思考が! 脳が! おっぱいになってしまう!
脳味噌が脳乳になってしまう!(?)
「で、でも! 琴音さんの家柄なら地元の有力者とか企業の御曹司とか選び放題なんじゃないですか?」
「いいえ、そのような方に興味はありません♪ わたくしは道広くんがいいんです♪ 道広くん以外の男性なんて考えられません♪ ですから、お願いします♪」
そして、トドメとばかりに「ぎゅ~~~~~っ♪」をしてくる琴音さん。
労働によって鍛え抜かれた硬い肉体なのに、なんでこんな柔らかい体に負けてしまうのだ。人体の神秘!
もう俺のライフは0だ。
琴音さん「面白い、続きが気になるなど思っていただけましたら、ブックマークや評価をしていただけると嬉しいです♪」