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生徒会長と昼休みの裏庭で

※※※


 さて、昼休みである。


「おっ待たせー!」


 裏庭に一香がやってくる。

 

「すまん、時間をとらせて。……えっと、その、さっそくだけど……俺の家の借金だけど……とある富豪が代わりに返済してくれた。それで、俺、そこの家に雇われることになって……それで十分な金を得られるようになった」


 一応、扇山家のことを伏せて伝える。


「えぇえっ! そんなことってあるの!?」

「あ、ああ。俺もいまだに信じられないんだけど……」

「でも、すごい額だったんでしょ!?」

「あ、ああ……でも、一気に完済できた」

「えぇえ! 本当!? そんなことありうるの!?」


 そう思うのが常識的な反応だろう。

 だが、実際に一気に解決できたのだ。


「って、なんでその人、道広のことを助けてくれるの? そもそもその富豪って何者?」

「あ、ああ。……実は葉菜が川で自殺しようとしてたところをたまたま助けてくれたんだ。で、その富豪ってのは……ええと……お、扇山家だ」


 ここまで来たら言ってしまったほうが話が早いだろう。

 隠し通すと話が厄介になる。


「扇山家って、あの扇山家!?」

「あ、ああ」


 ほんと、底辺中の底辺である俺が扇山家に支援してもらえるとは夢にも思わなかった。


「大丈夫なの? 道広、臓器とか取り出されてから殺されちゃったりするんじゃない!?」


 それは恐ろしいな……。

 でも、まさか、それはないだろう。……ないよな?


 ちょっと自信がなくなってくる。

 でも、琴音さんが俺に対してそんなことをするはずがない。


 ただ、扇山家自体は俺のことをどう思っているのか。

 そこのところは実のところよくわからない。


 ……まぁ、屋敷に出入りすることを許されているから、許容されているということだろうけど。

 でも、琴音さんが元気になったのだとしたら俺なんか用無しなのでは?


「うーむ……」


 今さらながら、いろいろと不安になってきた……。

 しかし、俺としては、どうしようもないのだが……。


「それと道広、雇われるって、それ、どんな感じなの?」

「えっ、それは…………」


 これの具体的内容を口にするのは別の意味で抵抗がある。

 

「どんな内容?」


 一香はグイッと顔を近づけてくる。

 有無を言わさぬ迫力だ。


「え、ええと……それは…………す、スキンシップ係だ」

「…………はっ?」


 一香はキョトンとした表情になる。


「……もう一回言ってみて」

「スキンシップ係」

「……ごめん。もう一回」

「スキンシップ係!」

「…………」


 一香は固まった。

 ややあって、おそるおそるといった感じで訊ねてくる。


「……スキンシップ係でいいんだよね? 本当? 冗談でなくて?」


 そう思うのは、もっともである。

 しかし、それが事実なのだから仕方ない。


「ああ。それであっている。スキンシップ係で間違いない」

「なによそれ」


 そう言われるのは、もっともである。

 なんだそれ。

 逆の立場なら、俺でもそう突っこんでいただろう。


「……まぁ、なんというか……そのままの意味だ。スキンシップ係とはスキンシップをとるのが仕事だ」

「……ま、まさか、扇山家のおじさんたちとあんなことやそんなことを!?」

「違う!」


 考えてみれば、そう考えるほうが自然なのか?

 ……うぐぇ。

 なかなかハードでディープな想像をしてしまった……。


「じゃ、じゃあ、そのスキンシップって誰ととるの?」

「それは……琴音さんとだ」

「えぇえぇえぇえーーー!?」


 まあ、驚くのも無理はない。

 琴音さんは絶世の美女だからな。

 その美貌は近隣では噂になっているのだ。


「おかしい! ありえない! 絶対になにか裏がある!」


 一香がそう言うのも無理はない。

 やっぱりそれが常識的な反応だ。


「でも、扇山家からはちゃんと振りこみがあるんだ。それで俺は借金を返済できたしこうしておにぎりを食べることができる」


 最近は米を買うことすら困難になっていたからな……。


「うーん……俄かには信じられないけど……もしなにか身の危険を感じたらいつでもあたしに相談してよね?」


「あ、ああ。ありがとう。というか、これまでもいろいろと食糧支援をしてくれて感謝する。本当にありがとう。おかげで俺と葉菜は生き伸びることができた」


「ううん! 困ったときはお互いさまだよ! ……うちが裕福だったらもっと道広のこと助けられたんだけどさ!」


 ちなみに関平家は五人妹弟だ。

 一香が妙に面倒見がいいのは、そのあたりも関係しているのかもしれない。


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