埼玉ナイズされた学食ラーメン~埼玉県知事を目指す埼玉愛に溢れた生徒会長~
「そういうわけで! 日々がんばるあたしのためにも癒しが必要なんよ! というわけで道広あらためてこれからよろしくー! いっただっきまーす!」
一香はパンッと手を合わせると勢いよくラーメンを食べ始めた。
おばちゃんのサービスによりメンマとネギが増量されておりチャーシューも二枚入っている(おそらくいつもは一枚なのだろう)。
「いただきます」
とにかく、まずはメシを食おう。
俺も軽く手を合わせてラーメンタイムを楽しむことにした。
「やっぱり学食のおばちゃんのラーメンおいしー!」
「……うむ、うまいな。というか、すごいうまいぞ、これ」
まさか学食のラーメンがここまでうまいとは……。
麺もスープも、そして、チャーシューも異常なほどうまい。
これは店を開けるレベルじゃないのか?
「へへっ、おいしーでしょ? このラーメンは学食のおばちゃんたちと生徒会の共同開発だかんね! 地元の食材を使ってるんだ! 地産地消! 以前よりもかなり美味しくなって大人気なんだ!」
超有能だな、一香は。
生徒たちから絶大な人気があるのも頷ける。
「このチャーシューも埼玉のブランド豚だしスープだって埼玉の名店にあたしが頼みこんで監修してもらったし! ネギは深谷ネギ! 埼玉愛なら負けない! 将来は埼玉県知事になる!」
愛校心だけでなく郷土愛(埼玉愛)まであるんだな、一香は。
意外な一面を知ることができた。
というか琴音さんの財力と一香の政治力があわさったら、すごいことになるんじゃないだろうか。
「がんばってくれ。応援してるぞ」
「なんなら生徒会に入って副会長にならない? 労働から解放されて時間あるでしょ?」
いきなりまた強引な。
「俺にはそういうのは無理だ。そもそも政治活動とかは苦手だし」
ザ・一匹狼な俺である。
黙々と肉体労働をしているほうが合っている。
「うーん、意外と向いている気もするけどなぁー。ま、無理強いすることでもないか」
そもそも俺には琴音さんのスキンシップ係という重要な役目がある。
「ま、いいや。ともかく今日は放課後デートしよ! 今日も生徒会ないし!」
「ほ、放課後デート……」
そんなものは俺とは生涯無縁なものだと思っていたのだが……。
「なによ、不満?」
「いや、どういう反応をしていいのかわからないというか……」
そもそもなにをどうすればいいのかすら想像がつかない。
「決まってるでしょ! 特売よ!」
「特売」
「うん! 今日は昨日とは別のスーパーで特売なの! 情報を制す者は戦を制す! なので特売を制す者が地元の勝者になれる!」
よかった。デートいっても俺の理解の及ぶ範囲だった。特売ならオーケーだ。
「しかし二日連続で特売か」
「いいことじゃない! 買い物は人の心を豊かにする!」
「まあ、そうか。そうだな」
今日は琴音さんのところへ行くのは休みだったしな。
そういうわけで、俺は一香との放課後の買い物につきあうことになったのだった。




