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GoTo学食


 翌日の昼休み。

 裏庭で――。


「さぁて、今日から彼氏係よっろしくー!」

「お、おう……」


 一香と合流した途端、いきなりハイテンションでお願いされる俺である。

 しかし、彼氏係と言われてもなにをどうすればいいのかわからない。


「まずは! 腕を組む!」

「えっ」

「えってなによ! あたしと腕組むの嫌!?」

「いや、そんなことはないが……でも、いいのか?」


 そんな状況でほかの生徒たちに目撃されたら彼氏係というより本当に彼氏だと思う者も出てくるだろう。そもそもクラスメイトにはどう説明するのだろうか。


「いいに決まってるでしょ! というかあたしは別に周りからどう見られようとも気にしないし! なんなら『係』をとって本物の彼氏になる?」


 なんでそんなに積極的なんだ!


「というか俺のこと買いかぶりすぎだと思うぞ。俺なんてただの冴えない男だ」

「労働によって鍛え抜かれた肉体があるじゃん! 部活で鍛えている男子の筋肉とは違う生活する上で実用的な筋肉!」

「おまえは筋肉マニアなのか?」

「割と!」


 なんということだ。一香の思わぬ性癖を知ってしまった。


 ……というか、琴音さん、俺のことを抱きしめてもあまり抱き心地よくないんじゃないかという気がするが。……まあ、琴音さんは抱きしめられれば割となんでもよさそうだな。


「まあ今のは半分冗談! 筋肉だけじゃなくて道広は顔も心もいいし!」

「どちらも自信がないぞ」


 顔は平均点ぐらいだし、心はどちらかというと根暗だ。


「もっと自信持つ!」

「そう言われてもなぁ……」

「あんたは割と顔もいい! あたしが請け負う!」


 なぜか自信満々に胸を反らせながら断言する一香。


「というわけで! 学食へゴー!」

「ま、マジで行くのか」

「マジ! 四の五の言わずにレッツゴー!」


 一香は強引にこちらの左腕に自らの右腕を絡ませてくる。

 まるで捕獲されてしまったかのようだ。

 そのまま俺を引きずるように学食のほうへ向かった。


「……わ、わかった。ちゃんと俺も歩くから引きずるな!」


 意外と腕力が強い。

 さすが五人きょうだいの長女といったところだろうか。生活で鍛えられた力だ。

 あるいは一香のリーダーシップや統率力も家庭の中で育まれたものなのかもしれない。


 とにもかくも――俺は一香と腕を組むという形で学食に突入した。

 当然、周囲からすぐに注目を集めることになる。


「えぇっ、生徒会長っ!?」

「なんだあの横の奴は!?」

「あの貧乏人がなんで生徒会長と!?」

「ありえないんだけど!」


 貧乏人で悪かったな。学食にいた連中がいきなり騒ぎ始めた。

 まぁ、騒ぎにならないはずがないよな……。想定されていたことだ。


 しかし、肝が据わっている一香はビクともしない。

 むしろ、ニッコリと輝くような笑みを浮かべる。

 そして――。


「ほら、注文しよ! 道広!」


 あえて周囲にハッキリと聞こえる声で俺の下の名前を呼んだ!

 さらにザワつきが拡大する。


「なっ!? 下の名前だとっ!?」

「まさかつきあってるのか!?」

「う、嘘だろっ!? あの貧乏人が!」

「ありえないわよ!」


 男女問わず驚愕の声が上がる。

 というか、貧乏人を強調しないでほしい。

 もっとも、今の俺の貯蓄額はすごいことになっているのだが……。


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