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袋ラーメンと特売

「あっ! 道広!」

「えっ!?」


 声の主は買い物カゴを持った一香。

 

「一香!?」

「放課後ぶりー!」


 なんでこんなところに一香が? 

 我が家と一香の家は微妙に生活圏が違う。

 ゆえに買い物をするスーパーがかぶることはないのだが……。


「今日ここのスーパーの特売セールのチラシ入ってたから来たんだ! 葉菜ちゃん、こんにちはー!」

「あっ、一香さん! こんにちは!」


 これまでに何度かオカズを家まで持ってきてもらったことがあるので、一香は葉菜とも面識がある。


「元気ー?」

「あ、はい。元気ですっ! この間もオカズありがとうございました!」

「あはは、いいって、いいって! 話聞いたよ! よかったねー! 状況が改善して!」

「は、はいっ……! でも、一香さんがこれまでオカズを持ってきてくれたから葉菜たちは生き抜いてこれたので……本当に感謝ですっ!」


 葉菜はぺこりと頭を下げる。

 さすが、我が優秀な妹だ。礼儀正しい。


「いやぁ、困ったときはお互いさまだしねー!」


 そうはいっても渡る世間は鬼ばかりだった。

 俺たちの境遇を知って手を差し伸べてくれたのは、周囲では一香ぐらいだったのだ。

 親類は全員、俺たちと関わりあいを避けて逃げた。


「一香、改めてありがとうな。心から感謝する」

「ちょっと、道広までやめてよ、こんなところでー! いいって、いいって!」


 一香は照れたように顔を赤くして首を振る。

 ほんと、俺たちは人に恵まれたよな……。


「あ、あのっ、よかったら葉菜たちの家でお茶でも飲んでいってくださいっ」

「ああ、そうだ。汚い家だが……」


 誘う俺たちだが――。


「ありがと! でも、うちの弟や妹たちにもご飯作ってあげなきゃだしねー。また今度!」


 一香はニカッと笑うとカゴを手にレジへと向かっていった。

 琴音さんが花咲くような笑みとすると、一香は太陽のような笑顔だ。

 まさに頼れる姉御といった感じである。


「お兄ちゃん、一香さんにも恩義を返さないと……」

「ああ、そうだな」


 その一環として彼氏係を受けることになってしまったことを葉菜は知らない。

 まぁ、あえて言うことでもないかな……。


 しかし、ここで一香に会うとは驚いたな……。

 ちなみに一香のカゴの中に入っていたのは大量の袋ラーメンだった。


「そうか。袋ラーメンの特売だったのか。うちも買っていくか」

「うん、そうだねっ!」


 そうして俺たちは袋ラーメンコーナーに向かう。

 いくら貯金が増えたといっても日々の節約は大事である。

 

 特売というのはいいものだ。こんなに胸が躍る文字はない。



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