義侠心に富むギャル生徒会長
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「おっはよー! 道広! ちゃんとご飯食べてるー!?」
校門をくぐって昇降口へ移動中、クラスのリーダー的存在であり生徒会長でもある関平一香から勢いよく話しかけられた。
彼女とは小中高と一緒だ。俺の事情もよく知っている。
というか、たまにご飯をおすそ分けしてくれたりしてくれた。
見た目はイマドキ風ギャルなのだが文武両道、義侠心に富んでいるのだ。
そのギャップゆえに生徒たちからの人気が高く、二期連続で生徒会長を務めている。
「あ、ああ。まあ……」
「へー、そう? というか、最近、血色いいよね。栄養足りているというか」
ちなみに一香には扇山家にスキンシップ係として仕えるようになっていることは話していない。
あまりこのことを口外しないように凪咲さんから言われていたのだ。
でも、長年、世話になってきた一香には言うべきだよな……。
「なんかあたしに隠してるー?」
「そんなつもりではないんだが……まぁ、そのうち話す。その、なんとかなっている」
「そうなんだ! よかったー!」
笑みを弾けさせる一香。ここまで親身になって喜んでくれるとは。
やはり一香には話しておくべきだよな。うん。
「ま、時期が来たらでオッケーだから。困ったことがあったらいつでも言ってねー!」
「ああ、ありがとう」
ほんと、俺は人に恵まれたよな。
一香がいなければ、もっと早く追い詰められていただろうし。
琴音さんだけでなく一香も命の恩人だ。やはり、早いところ事情を話さねば。
だが、ここで話すといろいろと噂が広まってしまう。
「えっと、ちょっと待ってくれ。昼休み、時間あるか?」
「ふえっ!? なにそれ告白!?」
「違う違う!」
なんでそうなる。
「いろいろと状況が改善してさ。そのことについて話しておこうかと思って」
「ああ、そうなんだ! わかった!」
「時間をとらせてすまんな」
「ううん、状況が改善したのならなによりだよ! じゃ、昼休みに裏庭で」
笑顔を浮かべてそう言ってくれるのだからありがたい。超絶貧乏な俺はスマホなんて文明の利器は持っていないので、こうやって対面で約束をするしかないのだ。
ほんと、俺はいい友人に恵まれたよな。
俺は先に教室に向かった一香の後ろ姿を見送った。