お菓子を買おう!
そんなわけで。
俺たちは最寄りのスーパーへやってきた。
「なんでも好きなもの買っていいぞ」
「うん♪ ありがとう、お兄ちゃん♪」
俺はカゴの入ったカートを押して葉菜と一緒に店内を進んでいく。
葉菜は牛乳や卵、肉や野菜など次々と食材を入れていった。
「お菓子とかはいいのか?」
「ええっ!? そんな贅沢品、買うなんてダメだよ!」
貧窮暮らしが長いので葉菜の経済思考は、極度の節約志向になっていた。
小学生なのに、ほんと、申し訳ない。お菓子ぐらい食べたいだろうに。
「いや、それぐらい買ってもバチはあたらないだろう」
このままでは葉菜は遠慮して買わないだろう。
なので俺が率先してカートを動かし、お菓子コーナーへ。
「おお、いいもんだな」
こうやって様々な種類のお菓子が並んでいるのを見ると心が踊る。
琴音さんのところで高級なスイーツを食べたりしているが、やはりこういうポテトチップスなどのスナック菓子はまた違う。パッケージを見ているだけでも楽しい。
「わぁっ……」
葉菜も小さく歓声を上げていた。
やはりここへ来て正解だった。
「ほら、好きなもの買っていいぞ」
「で、でも……」
「これぐらい安いもんだろ。極度の節約によって俺たちは心まで貧しくなってたからな。ポテトチップスでも食べて団欒を楽しもう」
たまには兄妹水入らずで過ごすのもいい。
「うー、うん……」
俺に促されて葉菜も最後には頷いた。
「そ、それじゃ、どうしようかなぁ……」
お菓子コーナーの前で悩む葉菜は年相応の小学生っぽく見える。
いつも必要以上に大人びていたからな。
まぁ、琴音さんと接するときはポンコツ化する傾向はあるが……。
「じっくり選んでいいぞ。時間もあるしな」
労働に追われていた昔は、ゆっくりと買い物をする余裕もなかった。
……いいな。こうしてのんびりできるというのは……。
「うーん、うーん……」
葉菜はお菓子の並んでいる棚を行ったり来たりしながら迷っている。
微笑ましい。
「迷ってるなら両方買えばいいんじゃないか」
「えぇっ!? そんなの贅沢だよ! 贅沢は敵だよ!」
……ほんと、つい先日までの俺たちは非情にシビアな生活をしていたな……。
まるで戦時下のようだった。でも、もう、今は――。
「……いいんだ葉菜。もう戦争は終わったんだ」
俺は神妙な面持ちで告げる。
「お、お兄ちゃん……」
「だから、お菓子を買おう。好きなだけ」
「う、うぅぅ……お、お兄ちゃん、本当に葉菜たちに平和が訪れたんだね……」
「ああ、そうだ」
感極まったように涙ぐむ葉菜と、それを感慨深げに眺める俺。
なんなんだ俺たち兄妹は。
お菓子コーナーにやってきた小学生から変な目で見られてしまう。
「……お兄ちゃん、それじゃ、これとこれ買うね」
「……おう」
少し気まずくなった俺たちはさっさと買い物を済ませることにした。
葉菜は結局、ポテトチップスのコンソメ味とガーリック味をカゴに入れる。
「……さて、レジに行くか」
「うん」
ちょっとテンションが変になってしまっていたな。
さっさと退散しよう。
そう思ってカートを動かし始めた俺であったが――そこで不意に声をかけられる。
葉菜「いつも読んでいただいて、ありがとうございますっ!」




