凶乳~哲学的な賢者モード~
ほんと、人生ってのはわからないものだな!
まさか深夜の寝室で、お嬢様相手に必死の思いでくすぐりをしかける日が来るとは!
どうだ!? 効果は!?
「……ふふふ♪ ふふっ、あはははははっ♪」
効いた!
笑ったことで葉菜を拘束していた指の力が緩んだ。
「今だ、葉菜っ!」
「……むぐぅっ……! んぷぁっ!」
俺の言葉を受けて葉菜は反対側に勢いよく寝転がり拘束から脱出した。
よし、成功だ! 上手くいった!
心の中で快哉を叫ぶ。
我ながらよくやった。
「ふふふ……♪ くすぐったいですぅ……♪ むにゃむにゃ……♪」
しかし、琴音さんはこれでも起きなかった。
寝言を口にしたものの、すぐにまた穏やかな寝息を立て始める。
「……まあ、ここで目が覚めて色々と誤解されるよりはいいか……」
そうなるのが一番マズい。
しかし、寝る前の言動的に不眠傾向なのかと思っていたが、ここまで熟睡するとは。
しかも、熟睡しつつスキンシップについてはアグレッシブという……。
「……葉菜。今のうちにしっかり距離をとっておけよ……」
「……う、うん…………はぁあ……ふぅぅ……呼吸ができるって素晴らしいよぉ……おっぱい柔らかくて極楽だったけど……一歩間違えば極楽浄土だったよぉ……」
うむ。危ういところだったな。
あのまま極楽状態のままだったら死にかねなかった。
巨乳は凶器。凶乳なのだ。
「……我ながら意味のわからない攻防をしたものだな……」
命がけだったのに、傍から見れば滑稽にしか見えないだろう。
しかし、人生はそんなものかもしれない。
自分にとっては悲劇でも、他者から見れば喜劇にしか映らないものなのかもしれない。
「……ふう。哲学的な気分になってしまった……」
労働に明け暮れていた頃は、そんなことを思う余裕もなかった。
人はある程度余裕がないと思索に耽ることもできない。
「まあ、そういう意味で琴音さんには感謝だな……」
以前の俺は帰ってきたら気絶するように寝て――。
起きたら労働して――。
学校に行っても、だいたい睡眠時間にあてていて……。
そんな馬車馬のように働く日常から解放してもらったのだ。
ほんと、感謝しかない。
「さて、寝るか……おやすみ、葉菜」
「う、うん……おやすみ、おにいちゃん」
仰向け状態の琴音さんの安らかな寝顔を見てから、俺は再び横になる。
少し距離をとったのだが……琴音さんはこちらに向けて寝返りを打ってきて今度は俺の肩に顔を埋めるような体勢になった。
まぁ、これぐらいなら、いいか……。
葉菜が生命の危機に見舞われるよりはマシだ。
俺も哲学的な気持ちになったことで賢者モードになった。
今度こそ俺はそのまま眠りについたのだった。
凪咲「楽しんでいただけたら評価していだけるとお嬢様が喜びます」




