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ベッドで深夜の攻防戦


 とりあえず寝返りを……。

 俺は琴音さんとは反対側に寝返りを打った。


 ふう……。

 琴音さんから少し離れたことで緊張感が和らいだ。


 琴音さんは常にいい匂いを発しているから困る。

 近くにいるだけで理性と知能が大幅に低下してしまう。

 

 ……よし。

 今のうちにできるだけ琴音さんから遠ざかろう。

 暗いので気づかれないだろう。


 俺は密かに琴音さんから距離をとろうとしたのだが――。

 しかし、琴音さんもこちらに寝返りを打った気配がした。


 そして、今まさに離れようとしていた俺に向かって密着してきた!?

 背中に柔らかな膨らみが! おっぱいが!


 しかも、琴音さんはこちらのお腹に手を回してくる。

 ちょ、ちょちょちょちょ!?


 琴音さん、起きてるのか? 寝てるのか?

 判別できない。まさか訊くわけにもいかない。


 俺が混乱している間にも琴音さんはさらに密着を強めてくる。

 あわわわわ! 背中が、背中がぁあーーーー!


 もはや押しつけられているというより押し潰されるレベルになっている。

 なんということだ。もう頭の中が沸騰しそうだ。しかし、耐えねば!


 でも、だが、しかし……これを耐えるってどうすればいいんだ……。

 俺は色々な意味で硬直しながら考える。


 ……そうだ。こういうときは戦国時代のことを考えよう。


 ……比叡山延暦寺焼き討ち、一向一揆殲滅、鳥取城兵糧攻め……。

 ……うん、情け容赦ないな……。


 日本史のおかげで俺は冷静さを取り戻していった。

 硬直していた体の一部分も急速におさまっていった。ありがとう、日本史。


 なお、背後の琴音さんからは穏やかな寝息が聞こえていた。

 どうやら寝ているらしい。ほんと、困ったお嬢様だ。


 いつでもどこでも俺得状態なのだが、こんな毎日を繰り返していたら俺の心と体が持たなくなる。

 理性が吹っ飛んだら即クビだろう。


「くっ、このまま密着したままでは……」


 俺は思わず声を出してしまった。

 そこで……。


「お、お兄ちゃんっ……葉菜がなんとかするよっ……」


 ひとり孤独に戦い続けている俺に気がついたのだろう。葉菜の声がした。

 さすが葉菜。しかし、どうするつもりだ……?


「……ま、任せて、お兄ちゃんっ……うーん、うーん……」


 葉菜がなにかをがんばっているような声。

 それに伴って琴音さんとの密着感が薄れていく。


 なるほど。葉菜のほうに寝返りを打たせようという作戦か。

 さすが我が優秀な妹だ。頼りになる。


 俺もその動きを支援するべく、こちらのお腹に回されている琴音さんの指をゆっくり開かせ、ゆっくりと向こう側に押しやっていく。


 まずは琴音さんを仰向けにすることに成功。

 背中にあたっていた感触が名残惜しくもあるが、仕方ない。

 すべては健全な世界を死守するためだ。


 あとは、このまま上手く寝返りを打たせれば……!

 俺は細心の注意を払いつつ琴音さんの肩を掴み、向こう側に寝返りを打たせていく。

 

「お兄ちゃんっ、あと少しだよっ……」

「おう……」


 深夜のベッドで兄妹による謎の共同作戦が実行されるとは……。

 人生とはなにが起こるかわからないものだ。


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