ひとつのベッドで三人一緒!?
※ ※ ※
食後に休憩したのち、部屋でトランプで遊んだりしてから再び露天風呂に入り(今回の入浴では琴音さんも自重してくれた)――就寝の時間になった。
「さあ、寝ましょうか♪」
パジャマに着替えた俺たちを待っていたのは――なんとひとつのベッド。
というか琴音さんの部屋にあるのは豪奢な天蓋つきベッドなのだが……これは四人ぐらいが横になれる大きさなのだ。
でも、だからといって――。
「ふぇっ? い、一緒に寝るんですかっ!?」
俺の思いを葉菜が代弁してくれる。
そうだ。いくらスキンシップが大好きとはいっても高校生の男女がひとつのベッドで一緒に寝るのは問題があるのでは……。
驚愕する葉菜と固まる俺を見て、琴音さんの表情が徐々に曇っていく。
「……だ、だめでしょうか……?」
というか涙目である。
そんなに俺たちと一緒にひとつのベッドで一緒に寝たいのだろうか……。
当然、思春期の青少年男子である俺が嬉しくないわけがないのだが、これはさすがにどうなんだろうか……。さすがに回避すべきなのでは……。
そこで傍らに控えていた凪咲さんが口を開き、頭を下げてきた。
「お嬢様の願い、ぜひ叶えて差し上げてください」
ほんと、琴音さん第一主義だな……。
メイド長として止めないのか……。
俺たち兄妹としては戸惑うばかりだが……でも、泣きそうな琴音さんと真摯にお願いしてくる凪咲さんを無下にすることなどできない。
「は、葉菜は、大丈夫ですっ……!」
「お、俺も……大丈夫ですっ!」
ここまで望まれているのならそれに応えのが俺たちの役目だ。
それだけのことを俺たちはしてもらっているのだから。
「わあ♪ ありがとうございます♪」
「誠にありがとうございます」
表情を綻ばせる琴音さんと深く頭を下げる凪咲さん。
むしろ、こちらが恐縮するばかりだ。
つい先日までは借金取りに対して頭を下げてたわけだからな……。
ほんと、人生激変しすぎである。
金の恐ろしさをこれでもかと味わわせられていたのに、今ではなに不自由ない暮らしになり大金持ちの琴音さんたちに助けてもらえる。
人生一寸先は闇というが、むしろ一寸先が光だったとは。
「それでは、よろしくお願いしますね♪」
琴音さんはニコニコ笑いながら先にベッドへ入った。
なお、掛け布団は半分めくれあがっている状態だ。
……って、ほんと、これ、ハードルが高いな!
湯上がりの琴音さんはいつも以上に美しい。
黒髪も艶やかだし、シャンプーのいい香りもしている。
現在の状況でも胸がドキドキしているのに同じベッドで寝るだと?
今さらながら、ものすごい難易度だ。
でも……やるしかない。
どんな困難であっても俺は最後までやり遂げる。
俺たち兄妹を救ってくれた琴音さんに報いるために!




