表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/89

夜の勉強会

※ ※ ※


 黒塗りの高級車で自宅へ戻った俺たちは着替えや翌日のための学生服、教科書などを用意して、再び扇山家へ――。


 今度は琴音さんの私室に案内された。


「くつろいでくださいね♪」


 琴音さんの私室はこれまた豪華すぎる洋間で居心地が悪い。

 ソファに並んで座った俺たちは、借りてきた猫のようになってしまう。


 というか、ほんと、ソファも調度品もテレビもひと目見て高額なものだと感じる。

 こんな環境でくつろぐのは難しい。


「宿題などは出ていらっしゃらないですか?」


 カチコチに固まっている俺たちに琴音さんが訊ねてきた。

 それに葉菜が応える。


「あっ、で、出てますっ!」

「それでは勉強会をいたしましょうか♪ わたくしも予習をしようと思っていたので」


 なにかやることがあるほうが気も紛れるな。

 それがいい。まぁ、俺は労働が忙しくて勉強は最低限しかやってないので少し苦痛ではあるが。

 でも、葉菜にはしっかりと勉強をさせてやりたい。



 というわけで、琴音さんの部屋で勉強会が始まった。

 凪咲さんが紅茶を持ってきてくれて、リラックスしながらの勉強タイムである。


「……うーん」


 優秀な我が妹ではあるが、数学は苦手な傾向にある。

 最初のほうはスラスラと問題を解いていたが、筆が止まって唸った。


「わからないところがあったら遠慮なく訊いてくださいね♪」


 琴音さんは笑みを浮かべながら葉菜に促す。


「えっ……ええと……そ、それじゃあ……こ、ここっ……お、お願いしますっ……」


 葉菜はオズオズと教科書の問題文を見せる。

 琴音さんは葉菜に身体を寄せると教科書とノートを覗きこんだ。


「ああ、これは――」


 琴音さんは笑みを深めると、聞いていて惚れ惚れとするようなわかりやすい説明の仕方で解説していった。


「な、なるほどですっ……すごい、わかりやすいですっ……!」


 葉菜は目を丸くする。

 さすが琴音さん。容姿だけでなく頭までよい。


「お役に立ててよかったです♪」


 表情を綻ばせる姿は慈愛に満ちている。

 ただのスキンシップ大好きお嬢様ではないのだ。


 妹の勉強まで面倒を見てもらえるんだから、兄としてこんなにありがたいことはない。

 今の問題は俺でもわかったけど、ここまでわかりやすく説明する自信はない。

 優しくて頭までよいのだから、最高のお嬢様だ。


 そのあとも、葉菜がわからないところをときどき訊ね、琴音さんがそれをわかりやすく解説するということを繰り返し――充実した勉強会の時間は過ぎていったのだった。


 いいものだな、妹が成長していく姿を見るのは。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ